中年の「っす」

 まあさ、赤坂界隈って、メディア関係者がわんさかいるイメージがあるんだけど、その筋気取りの偉そうな男性が悪目立ちしている。大声で偉そうに「〇〇(←誰もが知ってるタレント)がよぉ~」、「D通の〇〇さんてマジやべぇの!」とか、さらりと大声で芸能関係者であることを周囲に匂わせ、言葉遣いが乱暴なのも特長のひとつだけれど、このようなステレオタイプの輩の全てがその筋の関係者か、といえばそんなことは全くなく、実際、ご活躍されている方の多くは表向き、公の場では礼儀正しい・・・と思われる(笑)

 ところで、いかにもギョーカイ人を気取る男の悪目立ちをしている言葉使いでダントツ気になるのは、「――っすよ」ってアレよ、アレ。若いならともかく、「っすよ」を連発する中年男のこれがもう―――気になってしょうがないのよね。

 先日、外出していたところ、ちょいと久々に赤坂界隈に寄り道をしてランチを食べたわけ。わたしのテーブルの横には、「――っすよ!」、「マジすか!」を連発するチャラそうな中年男2人。

 まぁ、そのうちの1人が大声で喋る喋る。しかも、会社名や名前をモロ出ししている。こんな公の場で、ものすごく偉そうに相手の素性を口にしても平気な中年男が、本当にまともな仕事をしているのか気になって仕方がない。仕事関係者のことは、通常であれば、噂話をしているのがバレたら怖いので誰が聞いているかワカラナイ公の場では話さないよう気を遣うだろう。しかも、案外、世間ってのは狭いもんだしね。

 「なんっすかね、あれなんっすよー、あの話、マジヤバイっすよー、テレビジョンがさあー、すぐに結果を出すオーラが出てるじゃないっすかー(←結果を出すオーラってどんなオーラだよ!)、そうっすかー、個人事業ってたいしたことないじゃないっすかー(←ひどい!)。でも独立したいんすよー、世の中いい会社ないしー、〇〇さんの企画ってなんかイケてないっすよねー、よくやってけると感心してるんっすよ―、プロダクトは介入じゃないっすか〜(←意味不明)、マジっすかー、俺の友達ハンパないんっすよー、ヤバいっすよマジ、デキル男なんっすよー、D通の〇〇さんと仲が良いみたいっすよー、すげーんっすマジ! 」って、っす、っす、っす、っす、すすすすすすすすすす―――。

 あああああうるさいっ! 
 それにアンタ、もういい熟男だろう、そんな言葉遣いをしちゃダメよ! と思わず説教をしたくなる。言わないけどね(笑)

 2人組のひとりはお友達なのか、ずっと聞き役に徹しており、ときおり相づちを打っては、もくもくと食事を口に運んでいた。

 勝手な憶測だけれど、どうやらメディアをあやつるIT関連関係者らしい。要は、自分を取り巻く知人たちは活躍している凄い人たちばかりだ、だから俺も優秀なのだ――といいたいのだろう。

 ところが、だ。
 大声で喋る中年男の口からは、なぜか、すごい人たちと一緒に仕事をした、という内容には至らない。どうも怪しい(笑)

 ふーーーーーん。
 他人のカッコイイと思われる点を利用して、自分と同一化させ、そんな俺もカッコイイと勘違いしている幼稚な思考を嗅ぎつけたわよ。

 そもそも他人様を牽引するような仕事をしている大人の男性は、誰が聞いているか分からない公の場で、仕事の話にかこつけた噂話はしないもんだ。それよりなにより、デキル男は、こんな言葉はまず使わないんだよ―――と、心の中で毒づいた。

 続いてこんな言葉が耳に入ってきた。

 「いやね、わかってくれないんっすよ、まあ、どうせそんな会社だからたいしたことないし、落とされてよかったっんすけどねー―あ――独立してぇ――!! で、そちらも忙しそうっすけど、片腕いないんすか?」だと。

 ああ、おじさんは就職活動中だったわけね。
 いやね、わたしがいうのもなんだけど、独立するのは大変だし、その前に中年男が「っす」を連発すると、小物感、というか、はっきりいうと、使いっ走り感が拭えなくなるからやめたほうがいいわよ。それよりなにより、公の場でありながら、大声を張り上げて社名が特定できるような人様の噂話をするのはよくありません。大人のマナーだと思うけれどね。

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