Fritz Studer AG「日本は重要な拠点」 ~スチューダーテック 宮田セールスマネージャーに聞く~ 

 最精度円筒研削分野の標準機械と個別のシステムソリューションを製造しているスイスのFritz Studer AG。1912年の創業以来、精密円筒研削盤の開発と製造に注力してきた。永きに亘る歴史に培われた開発力と世界規模の営業網が強みだ。

 日本ではスチューダーテック(東京都大田区大森北4-10-8)が販売・技術サービスの拠点となっており、現在、さらなる日本市場の拡大に向けて注力している。国内責任者である宮田 高 セールスマネージャーにお話しを伺った。

100年以上、精密円筒研削盤一筋

 Fritz Studer AGは社名にあるとおり、フリッツ・スチューダー氏によって1912年に誕生した。スイスといえば真っ先にイメージするのは「時計産業」。創業者が機械をつくったキッカケも「時計部品をつくるためだった」と宮田氏。

 ところが、その部品をつくるための機械が世の中にあるものの中では満足のいくものがなく、「だったら自分で機械をつくってしまおう!」と立ち上がったのが創業の始まりだったという。

 宮田氏は、STSUDERについて「これだけの歴史がありながら砥石を使う機械、それも“丸モノ”の研削盤をつくり続けている専業メーカーである点が特長的です。広げることをせず、円筒研削盤一筋に歴史を刻んできたのですから、そのノウハウは豊富です」と話す。

 永い歴史に培われた開発力にも注目したい。同社は、1936年に世界初の油圧制御の円筒研削機を誕生させ、1977年には世界初のCNC制御の円筒研削機を開発、その実力を世に知らしめた。その後、長年に亘り高精度を維持するための剛性を高めるために、鋳物ではない花崗岩を主原料としたGranitan(グラニタン)を機械ベッドに標準採用したのは同社が初だと聞いた。

 同社は、1994年、Schleifringへの統合後、2004年にはSchleifringグループ全体の新しいデザインを登場させた。2013年には、KÖRBER SCHLEIFRINGと米国のUnited Grinding Technologiesが合併してUNITED GRINDING Group グループが誕生、同社もそのグループ会社のひとつである。

 「とにかく他社がやらないことをやるという会社です」と宮田氏。

 それを象徴的する出来事について宮田氏は次のように話した。

 「今では機械も白を基調にした明るい色が多くなりましたが、大昔の機械はグレーやグリーンが多かった。そこで、われわれは腰下が赤で上が白という斬新な色遣いを展開しはじめました。当時、新設計のマシンをEMOショーでお披露目したときは、業界内で大騒ぎになったそうですよ。白は汚れが目立つなど賛否両論様々な意見が飛び交ったようですが、白い方が汚れは目立つので、掃除をして綺麗に保つことができるというメリットのほうが大きい。白を基調としたマシンを展開したのもSTUDERが最初。革新的であり創造性豊かな会社であるといえます」。

日本のお客様に安心して機械を使って頂きたい

多忙を極めたMECT2017の会場内で。
多忙を極めたMECT2017の会場内で。
 日本における販売について宮田氏は、「われわれは日本が重要な市場であるという認識があります。大昔は、“ドイツで売れる機械があればそれは世界で売れる”という意識がありましたが、今は違います。お客様のニーズも多種多様かつ要求も厳しくなり、“リクエストにどれだけ応えられるか”という方向に変わってきています」。

 日本市場の拡大に注力している宮田氏だが、少々苦戦していることもあるようだ。

 海外と日本の大きな違いは“償却”の有無であろう。宮田氏は「日本は自動車業界で償却最大7年。7年で償却というのはもともと専用機から始まった計算の仕方です。7年でモトをとって、製品が変わればそのラインは廃却して新製品は次のラインを仕込むという設備の入れ替えの仕方をするようですが、われわれのマシンは、20年、30年とお使い頂けるマシンを製造しています。日本のお客様の中には、このような7年償却の理由から高価な輸入機は難しい、と仰っていた方もいました」と、胸のうちを話してくれた。

 その一方で、STUDERのマシンは世界中で売れている。自動車、建機、航空機、エネルギー関係。特に現在勢いが良いのが中国で、アメリカも絶好調。設備投資に対する考え方が非常にアグレッシブだという。

MECT2017ではメタルボンド砥石のドレッシング用に組み込まれるWireDressⓇを展示し、好評を博した。
MECT2017ではメタルボンド砥石のドレッシング用に組み込まれるWireDressⓇを展示し、好評を博した。
 ところで、STUDERのメリットはなんといっても顧客の機械が多少古くなっても“最新技術の拡張装備ができる”ことだろう。製品コンセプトも“顧客の希望に添って設計されている”という。さらに、モジュール式コンセプトには“最新ではない機械も追加、組み替え、拡張装備を確実に行えるように考案されている”という強みがあるのだ。

 つまり、最大のメリットは、“製造現場における投資を抑える”ことにある。しかも各地の担当者は機械を導入する前も後も常に相談に乗ってくれるという。「要望が増しても課題解決の実行に注力します」と力強い宮田氏。

STUDERの複合内面円筒研削盤

S121
S121
 日本における営業活動で嬉しかったことを尋ねてみたところ、「購入していただいたお客様から数ヶ月経った頃に連絡が来ました。トラブルが起きたのかもしれない・・・と不安を抱えながら訪ねたところ、ものすごく気に入って下さって、2台目を発注してくれたのです。1台目は補助金をキッカケとして購入したのですが、2台目については、補助金は関係ないと仰って下さった。設備にお客様のノウハウが融合して、従来とは違った加工の幅が広がったことについて大層喜んで頂き、本当に嬉しかった」とのこと。

「厳しい加工現場で、特に圧倒的なスピードと精度の安定を認めて下さった」(宮田氏)

 さて、ここで同社の注目したい製品として、個別研削から大量生産まで、小さなモノから大きな部品まで全てのアプリケーションに対応できる複合内面円筒研削盤「S121」がある。この製品は旋回砥石台に最大4つの砥石軸が搭載可能で、チャックコンポーネントの内面、端面、外面研削に威力を発揮する。機械関係、駆動部品、航空機部品、ツーリング等に多く使用され、信用を得ているマシンだ。

 革新的なStuderGuide® ガイドウェイシステム+リニア駆動による高精度軸駆動、旋回可能なドレッシング装置等を含め、同社の最先端技術がふんだんに盛り込まれている。また、確実なプログラミングと効率的な機械の活用を可能にしているStuderWINソフトウェアも特長のひとつ。なお、 CNCコントローラーはPC内蔵型である。

 STUDERは、どんなに時間が流れようと時代に合わせて対応する力を強化し続け、そしてマシンの寿命が尽きるまで顧客のニーズに対応できるようにと豊富な人材を育成し、世界中に散らばっている顧客のために待機しているのが魅力だ。

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