「メカトロ」で見た各社のイチオシ製品はこれだ! 

ニュースダイジェスト社(社長=黒田嘉幸氏)が主催する「メカトロテックジャパン2011」が9月29日(木)~10月2日(日)の4日間、名古屋のポートメッセなごやで開催され、盛況のうちに幕を閉じた。国内のFA専門店としては今年最大規模の展示会に多くの来場者が訪れた。
各社の最新技術が一堂に集結した中で、目立ったのは複合機等で工程集約を狙うものや、省エネに貢献する製品であった。
各社選りすぐりの製品を紹介する。

(イワタツール/宇都宮製作所/オーエスジー/大阪機工/ジェイテクト/住友電気工業/ソディック/ダイジェット/大昭和精機/日進工具/日立ツール/不二越/牧野フライス製作所/三井精機/三菱マテリアル/森精機/安田工業)

「焼き入れ鋼に20D以上の貫通穴を実現」イワタツール

イワタツールが注目を集めていたのは、HRC40~70の高硬材対応の新製品「トグロン ハードシリーズ」。焼入れ鋼に20D以上の穴貫通を実現する。真円度・円筒度・面粗度が非常に優れ、H7以上の精度も可能。金型のイジェクタ―ピンなどの穴加工も、下穴無しで一発加工をする。工程削減により、納期の短縮も可能になる。20Dまでの規格品に加え、それ以上の深穴用ドリルも製作可能だ。
なお、今回、「世界最高速の穴開け加工」を実演。切削速度100m/min、送り速度3200mm/minで、驚異の1穴0.25秒を実現し、来場者の度肝を抜いた。
高硬度用深穴加工と超高速穴あけ加工にイワタツールの切削工具が貢献する。

「高精度コンセプト搭載の再研磨マシン」宇都宮製作所

宇都宮製作所のブースでは、小型で低価格でありながらクオリティの高い工具の再研磨を可能にするNC工具研削盤「TGR-016」に来場者は足を止めていた。この製品は、ドリルでは刃先形状をセンサーで測定し、ネガランド加工をするソフトを標準装備している。オプションソフトでエンドミル、リーマ等に対応。対話型のデータ入力可能な加工ソフト(ITPS)を標準装備し、旋回軸および回転軸には精度、伝達効率に優れるローラードライブを採用している。同時にNC工具研削盤「XGR-DD」も展示していたが、この製品はスピンドルをセンターに配置したことで、抜群のバランス性を保つ。旋回軸および回転軸にはダイレクトドライブモーターを搭載し、精度向上に貢献している。円弧状の大きなドアは、作業性・保守性を高めている。

「経営課題に直結したツールを提案!」オーエスジー

右は削り出したi Phoneケース

「OSGの最新ソリューションはこれだ!」をテーマにして経営課題に直結したツールを提案していたオーエスジーは、新製品であるインデキサブル工具の“Phoenixシリーズ”正面フライスカッタ「PAO-PAS」を展開していた。「Phoenix PAO」はネガ刃型とポジ逃げ角により高剛性かつシャープな切れ味を兼ね備えた形状で、経済的な裏表8コーナ(計16コーナ仕様)、最大切込み3.5mm、副切れ刃形状により面粗さ向上、副切れ刃2mm。各インサートの数字を合わせてセッティングすることによりバラつきを抑えることが可能である。一方、「Phoenix PAS」の特長はポジブレーカにより高剛性かつ切削抵抗軽減を実現し、裏表4コーナ(計8コーナ)仕様、最大切りこみ6.5㎜、荒から仕上げ加工まで広範囲に適応する。また、今回、会場内に牧野フライス製作所の立形マシニングセンタ「V33i」を持ちこみ、iPhone4ケースを削り出した。硬くて工具消耗の激しいCFRPをバリバリ削り、削ったiPhone ケースは来場者に抽選で配布した。

「切削性能をアップした加工の本格派」 OKK

OKKは、切削性能を向上させたVM/Rシリーズ立形マシニングセンタ「VM53R」を登場させた。一般部品加工からチタンなどの難削材部品の加工まで対応する。
本体を適正肉厚にし、さらに各部ダイヤゴナルリブ(三角リブ構造)を適正配置することで、剛性と吸振性の向上を実現し、本体剛性を高めている。広い加工エリアも特長で、X軸移動量1050mm、Y軸移動量530mm、Z軸移動量510㎜と幅広いストロークを確保している。オプションでロングテーブル仕様を準備し、幅広な加工ワークに対応可能である。また、主軸トルクを最大限に活かすため、主軸軸受に大径ベアリングを採用することで、高い主軸剛性を確保。主軸モータ電力消費量を同じ主軸トルクのビルトインモータに比べ45%低減させ、ECOパワーを両立させている。

「ワンチャックで工程短縮」ジェイテクト

ジェイテクトは、ワンチャックが魅力の工程集約型の複合研削盤「TG4」を展示。このマシンの特長は精度と生産性を支える機械構成だ。砥石台旋回部DDモータの採用で、砥石台ユニットの高精度位置決めと高速回転を実現、さらに旋回送り部バックラッシレスを実現し旋回精度を向上させ、旋回速度の高速化により生産性向上に貢献している。また、ギヤを介して駆動することがない旋回部は非接触のためメンテナンスフリー。さらに同社がこだわる砥石軸には、精度を支える作りこみ技術が盛り込まれている。研削盤の心臓部である砥石軸には、金属接触がなく、高剛性で吸振高価の大きいハイブリッドタイプの“TOYODA STAT BEARING®”を装備している。ワンチャックで工作物反転作業も新出し作業も不要なので、このマシン1台で工程集約は間違いなし!

「ナノサイズの多結晶ダイヤモンドを結合材なしで焼結した新素材」住友電工

住友電気工業は、ナノサイズの多結晶ダイヤモンドを結合材なしで焼結した新素材で、単結晶ダイヤモンドを超える硬さを誇るバインダレスPCD「スミダイヤバインダレス工具」を展示していた。圧倒的な耐摩耗性と耐欠損性を実現し、超硬合金、セラミックス、ガラスなどの硬脆材料加工や高強度アルミニウム、樹脂の加工に最適な工具である。バインダレスCBN「スミボロンバインダレス極小径工具」も同時に展示していたが、こちらのタイプは焼入鋼、ハイスなど高硬度鋼の加工やセラミックス、ガラスなどの硬脆材料加工に最適な工具である。1μm以下の微粒CBNを結合材無で焼結した新素材で出来ており、高硬度鋼の高速加工で優れた加工面品位と耐摩耗性を実現、CBNの1.5倍の硬度で硬脆材料の加工にも対応している。住友電工の「微細工具シリーズ」から目が離せない!

「ワンランク上の直彫り加工を実現」ソディック

ソディックのイチオシ製品は、精密金型から高精度部品加工までワンランク上の直彫り加工に優れた高速ミーリングのスタンダードマシン「HS430L」。
高速ミーリング加工の優位性といえば、高硬度材を対象と下微細領域での直彫り加工で高速・高精度・高品質な仕上げ面と、切り屑排出が効率的で、切削による発熱が工具に集中しにくいので工具摩耗が抑制される点だ。そのほかにも熱歪みが小さいことや切削液を大量にしないオイルミスト加工が効果的で環境への負荷低減に有効であることも魅力である。
新開発の40,000min₋¹高速主軸HKS-E25/Hを搭載していることにも注目したい。新開発オイルミスト潤滑方式を採用し、主軸の高剛性化、超寿命化を実現している。また、焼きバメによる工具保持ホルダと2面拘束の相乗効果で高速回転時の振れまわり精度の低下を防ぎ、高い保持力を維持することで高品位仕上げ加工を実現している。

「モジュラーヘッドの先駆者がラインナップを拡充!」ダイジェット工業


モジュラーヘッドの先駆者であるダイジェット工業がラインナップを拡充して、加工現場にさらなる高速・高能率加工を実現する。現在同社の売れ筋商品といえば「QMミル」。
この製品の優れた点は、多刃仕様のため高送りが可能なところだ。一般鋼の加工においてテーブル送り10mの加工にも対応している。
φ10で2枚刃、φ32で8枚刃までをラインナップ。チップは高送り用、高送り用強化形、型削り用の3タイプでクーラント付き。ソリッド工具並みの高速・高能率加工を実現する。
また、ヘッド交換式工具「モジュラーヘッドシリーズ」もシリーズを拡張した。新たに次の4種類のヘッドが登場している。①高速・高能率加工が可能な小径多刃「QMミルMPM形」、②高精度・高能率仕上げ加工用、オール超硬ラジアスタイプ「SヘッドSMSA形」、③金型ベース底面仕上げ加工における加工面粗さおよび加工段差1μm以下が可能な「刃先交換式フィニッシュワンMFO形」、④表面取り・裏面取り加工用「面取りカッタMCM形」。

「簡単で安全! 焼バメ作業もスピーディーに!」大昭和精機

品質へのこだわりを見せる大昭和精機が展示していた新製品は、高周波電磁誘導方式焼きバメ装置「パワークランプ」。
過熱5秒、冷却30秒と素早く焼きバメ作業ができる製品である。13kwの高出力(200V)で超硬もハイス工具も使用可能、把握部のみ約5秒の過熱でツールの寿命もアップする。冷却時間も約30秒で着脱時間も短縮、1つのコイルでφ3~32をカバーしつつもコイル交換の手間が不要というメリットがある。コイル上部には磁界の漏れを防止するシールドディスクが取りつき、切削工具の過熱を防止し、シールドディスクは工具径にあったサイズに取り換えて使用できるようになっている。また、焼きバメ後の急激な冷却は、ホルダの精度烈火や寿命低下の原因となるため、同社ではパワークランプは急冷ではなく、適度に冷却する方式を採用している。しかもその冷却時間は約30秒と非常に短時間。なお、水に直接浸すことがないため、水を拭き取るなどの余計な作業が不要である。
同社の従来の焼きバメ作業を一新する画期的な高周波装置に注目だ。

「最強の不等リードエンドミル」日進工具

日進工具は無限コーティングプレミアムシリーズから、「パワーラジアスエンドミル」が新登場。来場者の人気を集めていた。SUS/Ti合金などの難削材の高能率加工に威力を発揮する。今回、パワーアップした不等リードと大きな不等分割を採用し、ビビリを抑制し、安定した加工を実現する。また、同社独自のスパイラル形状コーナーRの採用により、従来形状に比べ切れ味がアップしている。荒加工時でもコーナーR部のチッピングを抑制する高剛性形状が高能率加工に貢献する。皮膜は無限コーティングプレミアムを採用し、耐熱性と刃先強度を高め、加工中の切削熱をカバーしている。同社では、この工具に開発部隊が非常に時間をかけたと聞いた。さんざんユーザーにテストをした結果、一番良かったものを採用している。

展示会が開催された名古屋は日本で大きな生産性を誇る地域でもある。
今回、4月に名古屋営業所所長に就任した服部剛氏がブースに立っていた。“加工の悩みならまかせろ!”的なたくましさが滲み出ている。
服部名古屋支店長は、「工具メーカーの目からですが、売れる製品は技術があってこそ。技術と一緒に工具を売るためには、お客様のより細かいニーズを聞く耳が必要になります。われわれにお客様の加工現場の悩みを聴かせてください。加工にあった改善策を最善な形で提案いたします」と、意気込みを見せた。
時間をかけてユーザーの声をふんだんに取り入れた日進工具の「パワーラジアスエンドミル」は加工現場の期待を裏切らない製品だ。

「トータルコスト削減に貢献する方法を提示」日立ツール

日立ツールは高い生産効率を求めるユーザーにトータルコストを削減する方法を示している。同社では以前から工具費用を半分にしても実質的に顧客の加工費がほとんど変わらないことに着目し、最新工具の性能を活かして加工時間を半減することが顧客の利益拡大につながるとしている。今回は好評を博している“エポックディープエボリューションシリーズ”がさらに進化していた。
エポックディープエボリューションの特長は、耐欠損性を上げた刃形形状である。また、進化した複合首形状は、従来のRとテーパの複合形状をさらに進化させており、耐折損性とたわみ抑制を両立している。同じ荷重でもたわみ抑制効果が大きいとさらに高精度な加工が実現する。また、コーティングにも注目である。「PNコーティング」の特長は、Al含有量の最適化で工具簿材との密着性に優れた耐熱コーティング材料。AlCr系コーティング皮膜へのSi添加により、高硬度(3000HV)で良好な耐摩耗性を示す(TiAlN:2800HV)。とくにプラスチック金型などの工具への溶着が起こりやすい材料の切削に対して、抜群の切削寿命を誇り、耐熱性の向上により、ウェット切削およびドライ切削のどちらでも長寿命化が可能だ。なお、従来からあった耐熱コーティングTHを進化させ、積層構造を採用し、耐熱性と密着強度の両方を確保している。

「穴開け性能が抜群座ぐり用ドリル」不二越

不二越は高能率加工と高精度加工の定番アクアドリル「アクアドリルEX」を展開。新刃先形状とアクアEXコートの採用で高速・高能率加工を実現する。小型マシニングセンタでも高い加工安定性を発揮する。低炭素鋼から焼入材まで幅広いニーズに応えてくれる。
アクアドリルWXの優れた性能は、水滴溝形状で切り屑分断性能を向上するディープポケットに、曲線刃形で耐欠損性を保持、良好な切り屑を排出を平滑な溝面が大きくカバーする。掲載されているのは、傾斜面の座ぐりやタップの止まり穴などを1本で加工する「アクアドリルEXフラット」。高い剛性と切り屑排出性能のよい溝形状が特長。“アクアEXコート”が耐熱性と耐摩耗性をさらに向上させる。

「加工現場の煩わしいことを払拭した製品群」牧野フライス製作所

牧野フライス製作所のブースは、先日発表したばかりの放電加工情報の変換ソフトウェア「k-ha! EPX」に注目が集まっていた。このシステムを導入すると、従来になかった放電加工機への手入力をなくし、入力ミスの根絶と作業の効率化を計ることができる。さらに加工指示書の育成を支援し、作業の可視化を計ることもできる。
機能概要は、①CAD/CAMデータからのワーク、電極形状の読み込み(IGES/STL)、②放電加工情報の設定・表示・ワーク情報・加工情報(位置、揺動など)、③EPXファイルの入出力、④加工指示書の作成。
なお、“EPXファイル”の詳細については、日本金型工業会EPX-WGのホームページを参照すること(http://cast.jdmia.or.jp/epxwg/index.html)。

「最小の設置スペースで最大ワークを実現」三井精機工業

5軸MCを知り尽くした同社は5軸立形マシニングセンタ「Vertex750-5X」を展示。Vertex(バーテックス)は頂点・頂上を意味する。このマシンは単にXYZ直線3軸に回転・傾斜の2軸を加えるだけの単純な5軸MCではないのだ。5軸機として最も使用頻度の多い割り出し加工のために使い易さと性能を徹底追求している。時代が要求する加工面が複数存在する多品種少量部品に飛躍的な効果を発揮する。5軸化によって広がるのは切削加工範囲だが、最適な方向からの工具アプローチが可能になったことで従来放電加工機でしか加工ができなかった金型の一部が切削で加工可能になった。また、注目の航空宇宙関連の部品は発電関連の部品に見られるインペラー、ブリスク、タービンブレードなどは複雑な形状だ。しかもチタン合金やニッケル系合金などの難削材が多く、3軸や4軸制御の場合、刃物と加工物が干渉して加工が困難である。複雑形状部品を高能率に加工するには同時5軸制御が唯一の加工方法である。航空宇宙部品加工で培われた三井精機の技術がこの「Vertex」にも活かされている。

「鋼・鋳鉄の高性能ドリルシリーズ」三菱マテリアル

三菱マテリアルのイチオシ製品は、鋼・鋳鉄加工用超硬ソリッドドリル「MQS」。
φ3.0㎜からφ20.0㎜まで0.1㎜飛びラインナップ。穴深さに合わせてL/D=3,
5タイプを規格化している。この製品の特長は三菱独自のクーラント穴形状。新技術TRIクーリングテクノロジー®採用で吐出するクーラント流速が増し、発生する切削熱を速やかに除去してくれる(注:φ6を超えるサイズに採用)。クーラント流速を比較(回転速度4700min₋¹にて解析)したところ、従来ドリル比率で2倍以上のクーラント吐出量を実現している。冷却効果にも優れ超寿命である。また、ドリル専用の独自の結晶制御技術による超多層PVDコーティング材種により従来比2倍以上の工具寿命を実現した。

「超音波加工とミーリング加工が可能な同時5軸」森精機

森精機製作所は提携先である独国ギルデマイスター社との最先端加工機、画期的なマシン、超音波加工機の「ULTRASONIC 20 linear」を展示していた。
超音波加工機「ULTRASONIC 20 linear」は、超音波加工とミーリング加工が可能な、同時5軸加工機。工具の回転運動に軸方向の超音波振動を与えることにより、切削抵抗を減少する。セラミックスや超硬金属など、硬質で脆い素材の欠けを防ぎ、加工品質を向上させる。医療、光学機器分野など先端材料の高精度加工に最適である。

「圧倒するスピードとクオリティ」安田工業

安田工業は、“医療機器部品”、“IT関連部品”、“小型精密金型”などの加工分野に威力を発揮する「YMC430」を展示。最新鋭のハイエンドマシンだ。全制御軸(X・Y・Z)の高速リニアモーター駆動に加え、高剛性シメントリカルフレーム構造、長時間の稼働においても、安定した高精度加工を可能とする独自の熱変形対策など、他の追随をゆるさない“TASDAらしい”極めて高い精度を確保している。あらゆる用途で非常に優れた運動性能を発揮する。特筆すべきは、従来機に比べ、加工時間を大幅短縮したことだ。リニアモーター駆動の「YMC430」はボールスクリューで駆動する従来機に比べ、同一のプログラムでも大幅な加工時間の短縮を実現している。また、同社のマシニングセンタシリーズが誇るシメントリカルH型形状コラムは高剛性フレーム構造。「YMC430」では、コラムの断面をH型とする斬新な方法を採用し、ダブルコラムに近い形状とした。これにより、曲げ・捩り剛性が向上するとともに、主軸からテーブル間の力線短縮を実現している。

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