〈平成30年 年頭所感〉日本工作機械工業会/日本機械工具工業会/日本工作機器工業会/日本精密機械工業会

「今年も活発な受注に期待」
日本工作機械工業会 会長 飯村幸生

 2018年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 我が国工作機械業界の受注は、地政学的リスクが世界各地で高まっているものの、2017年初来、内外需ともに総じて順調に推移致しました。内需では半導体産業や自動車産業の投資が好調に推移し、幅広い需要産業で高付加価値機械の需要が盛り上がりました。 

 外需では中国で電気機械を始め一般機械や自動車等の投資に拡がりがみられたほか、欧州、北米も堅調に推移しました。この結果、2017年の受注総額は、暦年修正見通し「1兆5,500億円程度」を上回り、2007年に記録した過去最高額1兆5,900億円をも10年ぶりに超えたものと見込まれます。

 本年も基調的には、活発な受注が期待されます。関係業界の皆様にも円滑な部品供給を始めとするご支援をお願い致します。他方、国際政治・社会情勢等、工作機械業界の力の及ばない外部的要因によるリスクも内在しています。好調ながら脆弱な市場環境が予見されます。「治に居て乱を忘れず」、常にいかなる事態にも対応できる力を蓄えねばなりません。

 このような受注環境にあって、世界の工作機械産業は大きな技術的変革期を迎えております。様々な繋がりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指す我が国の “Connected Industries” を始め、ドイツの “Industrie 4.0”(第4次産業革命)、アメリカの “Industrial Internet”、中国の “中国製造2025”、等、IoTを活用してスマート・マニュファクチャリングの実現を図る取組みが世界各国で競われています。三次元積層造形装置(3Dプリンタ)の技術も実用化の段階に入って来ました。自動車の電動化の進展や、航空機産業の成長に伴う難削材需要の増加によって、需要構造面でも大きな変化が展望されます。

 日本の工作機械業界は、世界のものづくりをリードすべく、製品の高付加価値化やユーザーニーズの多様化に的確に対応した取組みを進めて行かねばなりません。日工会では、産学官が連携して世界最高水準の工作機械技術の創造を目指す「加工システム研究開発機構」を中心に研究開発や国際標準化に関する戦略的活動を展開して参ります。

 本年は、我が国工作機械業界最大のイベントであるJIMTOFの開催年です。今回のJIMTOF・Tokyo 2018では、11月冒頭に東京ビッグサイト全館を使用して、Connected Industriesの構想を念頭に、「つなぐ」をキーワードとして最先端の工作機械技術・製品を世界に発信して参ります。合わせて全国から学生を招待する「工作機械トップセミナー」や企画展示を通じ、社会一般の工作機械産業への認知度向上を図って参ります。

 関係各位には当工業会の事業に対する一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
本年が皆様にとって更なる飛躍の年となることを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

「切削工具と二次電池の両方に使用されるレアメタルの動向を注視」
日本機械工具工業会 会長 牛島 望

 新年明けましておめでとうございます。謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年は、政治や安全保障については多事で慌ただしい1年でしたが、世界経済は比較的に順調であったことから、ビジネスは工作機械をはじめ、全般的に拡大基調の良い年であったと思います。先の読めない時代ですが、本年も世界経済が堅調であることを願うばかりです。

 私ども、日本機械工具工業会は、ハイス工具の日本工具工業会と、超硬工具協会が2015年6月に統合し発足しました。両工業会とも、1948年に設立され、歴史も伝統もあり、それぞれの流儀で運営してきました。そのため、両工業会の会員の融和について、当初は若干の不安もありましたが、統合から2年半が経過し、コンプライアンスを徹底しつつ、融和が進んでいるのではないかと思います。

 本年は、ハイスの原型とされるマシェット鋼が1868年に英国で発明されてから丁度150年に当たります。従来は水による急冷で焼きを入れていた工具鋼製のバイトを、大気中で融点に近い温度から焼きを入れ始めることで、バイトの硬度が上がり、切削性能が格段に向上することを偶然発見したことがきっかけだったようです。その後、1900年にタングステンやクロムを大量に添加した鋼の熱処理方法を発見、高速度で加工しても刃先が軟化せず、切れ味を保つ切削用鋼ということで、高速度工具鋼(ハイス)と名付けられたようです。モリブデン、コバルト等のレアメタルを添加物として加えることや粉末化、コーテイング処理することで性能が向上し、金属加工に不可欠の材料として現在に至っています。

 更に、超硬が95年前の1923年に開発されました。ドイツの電球メーカーのエンジニアが、特殊鋼製のダイスでタングステンのフィラメントを伸線していたところ、ダイスの 表面に炭化タングステンが析出してダイスが硬くなり、耐摩耗性が向上したことでダイス 寿命が伸びることを偶然発見したことがきっかけだったようです。トライボロジーの一例と言えるかもしれません。超硬も耐摩工具のダイスだけでなく、バイトやフライス、ドリル等の切削工具が主用途となり、今日に至っています。

 両材料の使い分けですが、当初、超硬は主にバイト等ロー付け工具と刃先交換チップに
使われていました。エンドミルやドリル等はハイスより超硬のシェアが圧倒的に高くなってきましたが、ホブ、ブローチ等の歯切り工具と高精度ネジ切り加工のタップについては今後も超硬よりも靭性が優れ、欠損し難いハイスが使われると考えられます。また、超硬の延長線上に、タングステンの代わりにチタンを主原料とするサーメットや、更に硬度を高めた多結晶焼結ダイヤモンド(PCD)や窒化ホウ素といった材料も使われています。チタン化合物等で表面処理を行うコーテイングもハイス、超硬ともに一般に施されるようになっています。

 切削工具の主用途は、金属加工です。自動車や航空機、建機の関連部品、電子部品、筐体等の製造現場で使われていますが、自動車関連部品が最大の需要先になり、特にエンジンのシリンダーブロックやヘッド、トランスミッション部品等の鋳鍛造素材の切削加工にたくさんの工具が使用されています。最近は、車両の軽量化ニーズが大きくなっており、アルミ等軽量部材の使用量が増えていることもあり、PCD工具の使用が増える傾向にあります。

 また、電気自動車(EV)化の影響は避けられません。エンジンとトランスミッションが無くなると、自動車関連の切削加工が50%以上減ります。しかし、給電のインフラや時間の問題に加え、二次電池の重量やレアメタル確保等の制約から一挙にバッテリーだけのEVに切り替わることは考えにくい状況であることも確かです。当工業会としては、切削工具の主原料のタングステンに加え、切削工具と二次電池の両方に使用されるコバルト等のレアメタルの動向を注視する必要があると考えています。

 最後になりますが、昨年は、秋口から品質検査の問題で社会に動揺が走りました。納期に追われ、出来高増と能率向上を求められる現場が検査成績を捏造して客先に提出等を行っていたという事実は、驚きでした。しかし、現場が納期と出来高増に追われながらも高い品質を求められるのはいずこも然りであり、この問題は、どこの企業でも起こりえる事として予断・油断無く、経営者が陣頭に立って社内の状況や体制を再検証していく必要があると痛感しました。

 本年も宜しくお願い申し上げます。

「私たちのビジネスチャンスは広がっている」
日本工作機器工業会 会長 寺町彰博

 あけましておめでとうございます。
 年頭に際し、所見を述べさせていただきます。

 昨年の世界経済は、欧米をはじめとする先進国は引続き好調に推移し、中国においては政府による経済対策の効果が見られ、総じて拡大基調で推移しました。一方で、ポピュリズムや保護主義の流れ、及びシリア情勢の悪化や北朝鮮の核開発問題などの地政学リスクの高まりにより、先行きに対する不透明感が高まりました。

 日本に目を向けますと、海外経済の回復などを背景として輸出や生産が好調に推移する中、経済は緩やかに回復しました。さらに、世界的な好景気と好調な企業業績を背景に、日経平均株価がバブル経済崩壊後の戻り高値を更新し、約26年ぶりの高水準となるなど、今後の持続的な成長へと弾みがついた1年となりました。

 世界経済の先行きに対する不透明感が高まる中、AI、IoTなどの高度情報技術による繋がりやロボットを活用した仕組みが進展し、私たちのビジネスチャンスは広がっています。一方で、それらのテクノロジーを武器に新市場を創り出すIT企業が世界の株式時価総額の上位を占め、その一角が既存の小売業を席巻し、業態自体に急激な変化を迫るなど、私たちを取り巻く環境は凄まじいスピードで変化しています。しかしながら、日本の製品やサービスは品質や信頼が高い分、それらを世に出すまでの時間がかかり過ぎるため、ややもすると、変化を起こすどころか、その波に乗り遅れる可能性すらあるかもしれません。

 したがって日本の製造業に求められることは、変化に怯むことなく、私たちの「強み」である高付加価値な製品力に新しい技術や仕組みを積極的に取り入れることにより、ダイナミックなイノベーションを大胆なスピードをもって成し遂げることと考えます。これらを実現できれば、必ずや私たちはグローバル競争の中で打ち勝ち、世界の製造業を引き続き牽引していくことができるものと考えております。

 従いまして、当工業会といたしましても、会員の皆様と強い信念を共有するとともに、これまで以上に連携を深め、日本の製造業の発展に寄与できますよう、積極的な活動を展開してまいる所存です。

 最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

「“超精密へのあくなき挑戦”を旗印に日本の技術力を示し続けいく」
日本精密機械工業会 会長 稲葉弘幸

 平成30年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
 旧年中は当工業会の活動に格別のご支援、ご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。

 さて、当工業会は昨年「創立60周年」を迎えました。「超精密へのあくなき挑戦」を共通のテーマに掲げ、切削・非切削型加工機や周辺装置、工具メーカー、ソフトウエア・サービス会社など様々な企業にご参加頂き、現在では正会員42社、賛助会員62社、個人会員2名様と、106の企業、個人様にご参加頂いております。

 1957年に小型工作機械協会設立の声明書を発表、「会員相互の親睦」を重んじ、情報交換はもちろん、仕事を協力し合うことも多々あり、会員同士の密な連携は屈指であると自負しております。この密な関係は当工業会の伝統であり、最大の魅力であると思います。
これからは経営者同士だけでなく、社員同士にも広げていきたいと考えております。

 技術委員会では提案力の向上を図りながら、お互いを知るためとして若手技術者を対象とした「プレゼン;わが社の誇りと新商品紹介」と題した研修会を、販売委員会では新人社員を対象とした「マナー研修会」を実施しております。また、日本国内で「モノづくり」をしている集団として、「日本製」を更にアピールする思いから「JAPAN MADE」認証制度を設立しております。
 
 主要部品の70%以上を日本製とする機械を高品質製品と認定し、海外販売の促進を狙っております。更に、今年の11月に開催されるJIMTOF2018でも、「日本人の匠技・モノづくりコンテスト」を企画しております。是非、今回のコンテストにも奮ってご参加頂きたいと思います。

 今後も「超精密へのあくなき挑戦」を旗印に、工業立国である日本の技術力を示し続けていく所存です。

 「アットホームで会員相互の親密度の高い工業会」として、「日本のモノづくり」に貢献出来るよう努めてまいりますので、引き続きお引き立ての程よろしくお願い申し上げます。
最後に、関係各位のご支援、ご協力をお願い申し上げますと共に、皆様にとって最良の年になりますよう祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。

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