板金エキスパートを目指せ! アマダスクールが「第30回優秀板金製品技能フェア」の入賞作品を表彰 ~厚生労働大臣省はワールド山内、経済産業大臣賞はシンエイメタルテックが受賞~
職業訓練法人アマダスクール(理事長=末岡愼弘氏:神奈川県伊勢原市)は「第30回優秀板金製品技能フェア」5部門の入賞作品を選定し、3月3日(土)にアマダ・246ホールで表彰式を開いた。
選考は日本塑性加工学会会員、シートメタル工業会役員と審査委員の他、アマダ・ソリューションセンターの来場者の投票で行われ、その結果、応募総数268点の中から技能賞以上の優秀作品79点が選ばれた。また、今回節目の30回を迎えるにあたり、新たに「神奈川県知事賞」、「日本塑性加工学会会長賞」、「海外最優秀作品賞の3つの賞が加わった。
同フェアは、国内外の製造業において板金加工技術・技能の向上と交流を図り、業界全体の発展につながることを目的に1989年から毎年開催している。現在は5つの部門で毎年5月から国内外の板金加工作品を募り、作品はアマダ・ソリューションセンターで全て展示され、厳正な審査を経て毎年3月に表彰式を行っている。
過去最多の268点が出展
主催者を代表して末岡理事長があいさつをした。末岡理事長は、「板金加工技術、技能の向上を図ることを目的に始まったこのフェアも30回目の節目を迎えることができた。この30年間に皆様からご出展いただいた作品総数は今回を含め累計で5053件に達した。このうち海外からは1221点あった。今回の出展数も過去最多の268点となり、海外からは全体の39%にあたる104点の出展をいただいた。」と述べたあと関係者に感謝の意を表した。また、30回目の節目にあたり、今回から3つの賞を加えたと説明した。それによると、「15年以上に亘り講演していただいている神奈川県から神奈川県知事賞を、第3回から協賛いただいている日本塑性加工学会から日本塑性加工学会会長賞を、さらに海外からの出展作品技術が40%近くに増加したことを背景に、アマダホールディングスより海外最優秀作品賞を贈らせていただくことになった。」とした。また、第30回を記念して副賞の楯のデザインを一新して、“優秀板金技能フェアオリジナル楯”とし、さらに、これまでの優れた作品の写真を収録した記念誌を今年の6月に刊行すると述べた。また、昨今の板金業界については、「経営者の皆様から、少子化の影響を受け、人材の確保が非常に難しく、技能者の育成や技術の継承などが悩みの種となっていると聞いている。今後はデジタル技術の進化により、加工技術の自動化、AI化などがさらに進んでも人間が長年培った技能・技術やノウハウを全てこれに置き換えるということはなかなか難しいことだと思う。高度な技能を持つエキスパート人材を育成し、併せて最新のデジタル技術も活用していくという姿勢が重要だろう。当フェアが板金エキスパートを目指す若い皆様にとってひとつの目標となり、また、励みとなって技能・技術向上の一助となれば主催者としてこれ以上の歓びはない。」と、次世代へ向けて声援を送った。
来賓を代表して、瀧原章夫 厚生労働省 能力評価担当参事官が、「第30回と永きに亘り大変素晴らしいフェアを続けてこられた関係者の皆様に改めて敬意を表するとともに受賞された皆様には心からお祝いを申し上げる。こうした技能、技術は非常に大切なものであり、今後の展開に感心がある。最近はAIが出てきて、人間が果たしていく役割はなにかということを考える。例えば作品をつくるときに優れたものをつくることは機械の発想としてあるが、ここにこだわりたい、面白い、というところはおそらくAIにはないだろうと思っている。今あるものをより高めていくのもイノベーションではあるが、少し次元の違った世界に入って発展させるのもイノベーションだ。コンテストは自分のこだわりや好みを思い切り発揮できる場所なので、技術・技能の向上とともに、気持ちをもって面白さを追求して欲しい」旨のあいさつをした。 続いて、岡本繁樹 経済産業省製造産業局素形材産業室長が、「政府が出した統計で、過去からの国内企業の経常利益を表したグラフがある。それは4つのグラフがあり、1つは大企業の製造業または非製造業、それから中小企業の製造業または非製造業。そのうち3つは右肩上がりで上がっているが、うち1つは残りの3つに比べると鈍い上がり方をしている。ここに該当するのは中小企業の製造業であった。こうした状況を改善するために素形材産業室は取り組んでいるが、この改善策については端的に言うと売上高を伸ばすかもしくは不必要な経費を減らすか、その両方ができればなお良しというところだが、企業が持っている高い技術を技術目線ではなく、価値目線で表現することにより新たな販路開拓をすることができないかと考えている。この技能フェアでは、金属の板から様々なものを生み出しており、この取り組みはまさに自分たちの技術を価値として表現できる最たるものである。このように価値で表現する取り組みが今後もますます浸透するようにと考えている。」旨を述べた。交流会で見た若い力! 学生作品の部 金賞受賞 三重県立津高等技術学校の作品に注目!
第二部の交流会では受賞作品がズラリとならぶ実証加工プラザで行われた。今回、製造現場ドットコムが注目したのは、学生作品の部で金賞を受賞した三重県立津高等技術学校の「帆船『エルピス・パンドーラ』」。若い力の結集ともいえる作品だ。この作品は、加工精度(mm):0.5、加工時間(min):7000、材質:SUS304、厚板(mm):1.2、寸法(mm):200(W)×780(D)×520(H)となっている。同校のメタルクラフト科担当金属成形科担当である鶴岡大和先生に苦労した点について尋ねてみたところ、「胴体部分です。最初は壁をはってやろうと思っていたのだが、これがなかなか思ったようにできない。ハンマーの跡が付いてしまう。いかに立体的につくるかということで、細かく骨を分けた。3DのCAD自体が学校にないので、2次元から見て、1つ、つくって目で判断する。もうそれは職人のようにカンの世界でした。つくって、う~ん、となればつくり直し等の手を加えた。1つつくり直すと他も全てつくり直しになってしまうので、注意深く慎重に作業をしていきました。」と振り返り、「生徒が帰る時間になっても帰らず、間に合わせるために苦労しました。」と笑った。
受賞した学生3人に、「将来どういう仕事に就きたいか?」と質問したところ、「プレスブレーキを使って自分で商品をつくって世に出したい。いずれ年を取っていけば、自分で設計したものを世に送り出していければいいなと思っています。」、「プレスブレーキをやっていきたい。学校でもやっているんですが、プレスブレーキで精度良く製品が出来たときの歓びがあるんで、それを極めて、いい技術者になりたいです。」、「レーザーなど学校で学んだ機械をつかって試作品やまだ世の中にないものをつくっていきたいです。」と、製造業界にとって非常に心強い返答をいただいた。未来の宝ここにアリ!第30回優秀板金製品技能フェア 主な受賞作品
●厚生労働大臣省
「ISEKI」 (株)ワールド山内
●経済産業大臣賞
「ウォームギア」 シンエイメタルテック(株)
●神奈川県知事賞
「ギアロック」 ナサ工業(株)
●中央職業能力開発協会会長賞
「エキゾーストシステム」 光陽電機(株)
●日刊工業新聞社賞
「Stitched tube Ring」 ナサ工業(株)
●日本塑性加工学会会長賞
「俺の曲げ」 (株)西野精器製作所
●海外最優秀賞作品賞
「撹拌機陽機構部品」淇鋒企業股份有限公司
●組立品の部・金賞
「板金編み込みキューブ」 (株)河村産業所
●造形品の部・金賞
「ステンレス薔薇花束」 (株)ナダヨシ
●学生作品の部・金賞
「帆船『エルピス・パンドーラ』 三重県立津高等技術学校