ヤマザキマザックが大型工作機械の生産工場「いなべ製作所」第一期工事完了 ~組立工場稼動開始! 国内生産能力2割アップ!~

 ヤマザキマザック(社長=山崎智久氏)は、航空機産業や建設機械、エネルギー産業などにおいて大型工作機械のニーズが増加していることを受け、三重県いなべ市に大型5面加工機および5軸加工機を生産する「いなべ製作所」の第一期建設工事を完了し、このほど稼動を開始した。

 国内6番目の生産拠点となるいなべ製作所の竣工に伴い、大型工作機械の生産は岐阜県内にある美濃加茂製作所から、いなべ製作所に移管された。また、いなべ製作所の稼動により、国内の生産能力は金額ベースで2割向上する。同社では、「昨今、工作機械市場は活況を呈しており、今後、さらなる増産をはかり国内外の旺盛な需要に対応する。」としている。いなべ製作所を取材した。

ハイテクを駆使した最先端の大型工作機械生産工場

 いなべ製作所は、航空機、建設機械、半導体を加工するための機械を生産するための工場。製造品質を向上させるために温度コントロールを施している恒温工場となっており、最新空調と照明設備で省エネ化を図っている。また、物流等を最適化するため、IoTを活用し、他の工場と連携し、効率的な生産を図っている。生産機種は主力の大型5軸加工機・5面加工機と中小型立形マシニングセンタ。月産100台の生産能力を誇る。

説明する松田いなべ製作所長
説明する松田いなべ製作所長
 松田 毅 執行役員いなべ製作所製作所長(以下松田いなべ製作所長)はいなべ製作所について、「非常に背の高い工場です。ヤマザキマザックグループ最大の天井高さは19m。(美濃加茂製作所の機械・組立工場における天井高さは16m)。今まで美濃加茂工場で生産していた大型機をたくさん作れるように、床下は1mの鉄筋コンクリート基礎を施し、強固な基礎となっています。これにより組立時の調整や精度検査、連続運転、加工などの機械振動によるズレ防止や機械精度維持を実現しました。」と説明した。

安定的に温度をコントロールしている。
安定的に温度をコントロールしている。
 精密大型5面・5軸加工機を組み上げるため、外気温の影響による工場内温度変化を遮断し、製造品質を向上させる無窓・恒温工場となっており、工場フロアから10mまでの高さを±1℃の精密かつ安定的に温度コントロールしている。センサを取り付け管理し、生産技術がビッグデータとして問題を監視するという徹底ぶり。しかも、広い工場エネルギー消費を最小化するため最新空調設備を施している省エネ工場でもある。新たに採用した置換空調システムによりランニングコストを30%削減した。

 松田いなべ製作所長は、「ゆったりとした空気を送り込みながら床面から10mまでの組立スペースをしっかり安定的に空調し、少ないエネルギーで効率良く快適な製造環境を提供しています。」とのことで、高い生産性と製品品質向上を実現していた。また、工場、事務棟、食堂など、すべての施設にLED照明を採用したことにより、エネルギー使用量を抑制し、ランニングコストを65%削減している。



他工場と進捗を同期させ、効率的に生産。スマートファクトリー化を実現している。
他工場と進捗を同期させ、効率的に生産。スマートファクトリー化を実現している。
 また、この工場は、IoT技術を活用して工場内すべての生産活動をネットワーク化し、生産活動の可視化や製造ビッグデータ収集と分析を行っている。注目したい点は、工場運営全体の最適化を目指した『MAZAK iSMART Factory™』でスマートファクトリー化を実現させていること。いなべ製作所から15㎞離れた加工設備のある精工製作所(桑名市)とネットワークを接続し、進捗を同期させ、効率的に生産できるようになっている。稼働状況の表示・データ収集には『Snooth Monitor AX』を導入し、これにより監視及び分析作業が可能になった。

 最新テクノロジーを駆使することで、工場内の異常を未然に防ぐこともできるいなべ製作所。時間ロスの発生が大幅に減少するので、高品質を誇るマシンが安定的に高能率で生産できる強みがあった。

デモとテストカットエリアは大型工作機械の導入を考えているユーザーを強力にサポート! 細かい心配りも!

 

ここでは大型機ならではのダイナミックな実演やテストカットができる。
ここでは大型機ならではのダイナミックな実演やテストカットができる。
 大型機械の展示といえば、広いスペースが必要であり、デモンストレーションやテストカットには高い基礎構造が必要だったが、いなべ製作所では、従来、このように展示が難しかった大型工作機械での実演やテストカットエリアを設けている。これにより、大型機ならではのダイナミックな能力を100%引き出した切削性能および複合加工機の高精度加工デモをしっかり見ることができる。また、国内外からの受注支援のためのテストカットや問題改善のための加工検証に素早く対応するとしている。最新加工サイクル機能や工具による加工能力向上のための研究・加工情報の蓄積もできるというから、“未来志向”の顧客にとってはありがたい情報も仕入れることができる場所となる。よく見ると、一部のエリアには目隠しがしてあり、他の来場者からは見えないよう配慮がなされていた。

加工立ち会いエリアには目隠しの配慮が!
加工立ち会いエリアには目隠しの配慮が!
 いなべ製作所はマシンを生産するだけでなく、ユーザーが加工における新たなヒントを探るための場所としても力を発揮する。また、来場者はもちろん、ここで働く方々も楽しく働けるよう趣向を凝らした工場だった。
 
関連記事はこちら↓
http://seizougenba.com/node/9978
moldino_banner

 

JIMTOF2024