「Grinding Technology Japan2021」で出展された注目メーカーをレポート

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 「Grinding Technology Japan2021」(主催=日本工業出版、フジサンケイビジネスアイ)が、3月2日~4日までの3日間、徹底したコロナ対策のもと、幕張メッセ展示ホール4で開催された。現在注目されている5Gをはじめとする社会インフラの構築には機器や装置が必要であり、これらの技術を支える研削加工の専門展示会ともあって、来場者は真剣に設備を検討している様子が印象的だった。気になる展示マシンをレポートする。

(あいうえお順:オークマ、ジェイテクト、スチューダーテック、ナガセインテグレックス、豊幸、牧野フライス精機、三井精機工業)
 

コンパクトでも重研削可能な「GP26W」
●オークマ

210322topオークマ オークマが展示していたのは、CNC円筒研削盤「JP26W」。コンパクトながら重切削が可能なマシンだ。砥石台トラバース構造を採用することでコンパクトボディを実現している。自動化への対応を視野に入れ、前面ドアの上部開口は、様々なローダパターンへの対応を可能にしており、フレキシブル性が光るマシンだ。また、動圧軸受け構造により、重研削と高精度加工を両立し、加工時間が短縮できることも優位性のひとつ。砥石軸が金属接触しないため、この性能は半永久的に維持することができるという。

注目の的だった「GR7i-400」
●ジェイテクト

210322ジェイテクト 圧倒的なマシンの迫力で来場者を魅了した同社の「GR7i-400」。環境規制に対応するEVの需要を受け、これら部品向けフィルムコンデンサーに注目が集まっているが、このフィルムは薄ければ薄いほど良いとされている。つまり高精度なロールなくしてこの部品は作れないのだ。ちょっとしたキズでもあろうものなら、サランラップがピーッと裂けてしまうことを想像してほしい。それほど難しい加工を高精度に行うには大変な技術を要するのだが、現在、この加工に対応できる熟練者を保有する企業は国内でも数社しか存在しないという現実がある。同社では現在、この難加工の需要が加速し、需要が上がっていることを受け、これに対応するマシンを今回、初展示し、大きな注目を浴びていた。

研削に技術を用いた芸術的センスをもたらす
●スチューダーテック

210322スチューダーテック 精度、品質、そして情熱をモットーとしている同社。Fritz Studer AGから世界中に出荷された研削盤は24,000台以上という。ハードウェア、ソフトウェア、システムの統合、そしてサービスの総合ソリューションだけでなく、研削加工のノウハウを全工程で提供し、工程集約に貢献している。今回、こうした姿勢と共通しているスイスの有名なアーティストであるAta Bozaci氏とコラボし、ものづくりに対する姿勢を表現していた。ちなみに写真にあるパンフレットに描かれている目は、〝鋭い眼差しの下に精度が作られている〟ことを表現している。

豊富な見どころで来場者を魅了! 
●ナガセインテグレックス

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Sgi 520α

 ナガセインテグレックスのブースでは、加工サンプルも豊富なうえ、動画を交えて来場者を魅了していた。今回の目玉は超精密成形平面研削盤「SGi 520α」。徹底的な合理化により、従来機の44%の省スペース化を実現している。同社独自の非接触油静圧案内と高出力リニアモータ駆動の組み合わせで、サブミクロンの形状制度、ナノオーダの加工品位を実現した,マシンだ。ひねりや姿勢変化がなく、高い動剛性を実現し、同社も「かつてないイノベーションを生み出す超精密マシン」と自信を示している。

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加工支援アプリ

 研削業界初の「加工支援アプリ」も注目度は高かった。特にこのアプリで注目したい仕組みは、〝考える〟というボタンがあるのだが、これは最終的に加工したいワーク、サイズや材料に加え加工精度を入力すると推奨システムを提示し適切な加工に導いてくれるものなのだ。近年、熟練した職人が不足している加工現場において、非熟練化の強い味方といえよう。

 ほかにも実機はなかったのだが、長年同社が培ったナノマシン設計ノウハウによる様々なシミュレーション技術により設計された最高傑作と言われている超精密サブナノ研削盤「NSL―200」で加工されていたSiCレンズ金型の超精密研削加工のサンプルや、チャッキング不要の6面体の上下面を①素早く、②ゆがみを抜きながら、③精度良く加工する超精密測定圧定量制御両頭研削盤「NSF―440WS」での加工サンプルが展示され、来場者を魅了していた。

匠の技を伝える実力の名機復刻!
●豊幸

210322豊幸 コンパクトな佇まいでありながら圧倒的な存在感を放っていたのは、豊幸のブース。展示されていたのは油圧汎用円筒研削盤「GOP10・30 HERITAGE」だ。名機と呼ばれたTOYODA研削盤を復刻させていた。このマシンは、職人が腕を振るう玄人好みのマシン。今回、多品種少量生産の時代に合わせて新登場! 安定した加工精度で長期にわたる信頼性を確保しているから嬉しい。安定加工のキモを握るのは、進化し続ける静圧軸受け技術によるHybrid軸受。マシンを使用しているユーザーの声をもとに、新機能を搭載し、仕様を充実させていた。

信頼のおける切削工具の生産をよりスピーディに!
●牧野フライス精機

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TAD

 同社では、工具の円筒素材に段付けする「TAD」、形状を作ったあと溝と刃を入れ、切削工具の完成品をつくる「SG10」、そして出来上がった工具を測定する装置「procam」を展示し、切削工具をつくる一連の流れを分かりやすく展開していた。

 同社の「TAD」は砥石軸のパワーが強烈に強く、高剛性本体により一発でワーク外形φ12mmからφ6へワンパスで段研できるのが特長。負荷がかかる重研削にも対応できるマシンなのだ。立形なので長いワークでも重力の影響を受けづらくたわみづらいので、加工精度がより有利になる。しかも高精度に連続して加工ができるという。溝や刃を入れるマシン「SG10」は、アーム等の駆動部品の軽量化により動作を高速化していることが特長。自動ワーク交換装置「LVBローダ」は最大520本まで並べることができるので、長時間、切削工具をつくることができる。砥石交換装置も最大3セットが設置でき、工程集約を実現するマシンでありながらコンパクト設計も魅力だ。

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SG10

 今回、最も注目すべき点は、工具研削盤にカメラを内蔵して、自動測定、自動補正の提案をしていたこと。デモでは小径工具(0.3㎜オイルホール付き)を検出して自動で位相合わせをして溝を入れ、切った溝の心厚さを測定していた。連続で加工をするとどうしても砥石の摩耗によって心厚が大きくなってしまうのだが、このマシンは、測定した結果をもとに自動で補正をかけてくれるので、〝良品が大量に生産〟できる心強いシステムを構築していた。工具製造技術における本気の工程短縮をみることができた。

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精密微細加工に威力をもたらす「PJ303X」
●三井精機工業

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PJ303X

 今回は、昨年11月にオンラインで開催されたJIMTOFでも好評だった新製品、プレシジョンセンター「PJ303X」を展示していた。ピカピカのレンズ金型など精密微細加工に威力を発揮する時流に乗ったマシンだ。同社の精度へのこだわりといえば、熟練者による〝きさげ〟が有名。同社のマシンが極めて高い平面度、真直度、直角度を出すことができるのも頷ける。

 この「PJ303X」の特長は、最新の主軸熱変位補正機能を標準装備。特殊熱変位キャンセル機構による主軸・ヘッドの熱変位の大幅な抑制ができること。徹底的に熱変異を考慮しており、左右対称門形コラム構造も熱対策のひとつである。

 さらに注目して欲しい点は、主軸ヘッドを重心位置に近づけていること。また、作業者の使い勝手にも考慮し、操作盤も近づけることができる。扉は回転式2段扉で正面操作扉の開口幅が広くなり確認作業の視認性が良くなった。直線軸高速リニアモータ、回転軸DDモータを採用している。


 

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