「変化の厳しい時代に即応する体制強化へ」 三井精機工業 加藤社長に聞く

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 約92年前、ブロックゲージの国産化、高圧圧縮機の製造をスタートし、国産初のジグボーラを開発した三井精機工業(社長=加藤欣一氏)。戦後はオート三輪をはじめとした小型トラックの製造も手掛け、ここで培われた技術を用いて自動車部品用に加工精度と量産性に優れた専用機やトランスファーマシンなどを次々に開発し、市場に提供してきた。同社の高精度加工に対する積極的な姿勢と、新技術へのチャレンジ精神は、脈々と受け継がれ、現在に至る。同社では、工作機械部門とコンプレッサ部門の2つの柱を持っており、産業の発展と地球環境保全、その両立を目指すことは、これからの企業の課題であると捉えている。その象徴が、本社のある川島工場(埼玉県比企郡)であり、各種製品はこの豊かな自然環境の中でつくられている。

 現在、新型コロナウイルスの影響で世界全体が厳しい局面に立たされている中、加藤社長は、「今こそ変化の厳しい時代に即応する体制を強化する時期。」と話す。コロナの時代において、同社の未来像などを尋ねた。

会社と社員が一体となり互いにレベルアップを目指す

200928top2 ―昨年6月、社長に就任されてから1年以上が経過しましたが、心境の変化はありましたか。
 加藤 18年に比べると19年は景気もやや下り坂で、苦戦は予想してはいたものの、新型コロナウイルスが猛威を振るうとは全く予想ができませんでした。言い方は悪いのですが、なるようにしかならない、と居直っているところもあります。役員が長かったこともあり、長い間、会社全体のことは常に考えてきたので、社長に就任したからといって大きな心境の変化というのはありません。
 ―加藤社長は三井精機一筋の生え抜き社長ですので、従業員の方とも長い付き合いだと思います。就任時には社内に向けて、どんなメッセージを送りましたか。
 加藤 社内では、私が若いうちから一緒に業務をこなしている人も多く、〝怪我も病気もなく安全で生き生きと誇りを持って働ける会社にしましょう。〟とメッセージを送りました。また、会社は人の集まりですから、大切な人材の育成についても注力していくことを示しました。従業員が会社に愛着を持ち、従業員と会社が一体となって、互いにレベルアップしていくことエンゲージメントといいますが、これをイメージし、広い視野を持って、〝柔軟に対応していきたい〟と考えています。
 ―若い頃から貴社で仕事をこなしてきましたが、印象に残っている出来事はありますか。
 加藤
 自分たちがつくった機械がお客様のところで使われて、お客様の会社もどんどん成長していく過程の中で、機械を節目に入れていただけることは、ものづくりに携わる人間としては非常に嬉しい出来事です。私が若い頃、機械を据え付けに行ったお客様の中には、40年という長いお付き合いの会社もあります。当然、そのときの私は平社員でしたし、要求に応えることができなくて頭を下げて帰った記憶もあります。いつの時代も、「三井の機械を使って、いい仕事ができた。儲かったよ!」といっていただけることは、ありがたいことであり、非常に嬉しい出来事です。

レベルの高いお客様の要求に応えることが最高の機械をつくることになる

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精機棟外観

 ―貴社のユニークなところはコンプレッサと工作機械という全く違う製品の2つを同時にこの本社のある川島工場で生産している点です。
 加藤
 同じ工場の中で2つの事業の技術者がお互いに刺激をしあって、ものをつくっていくことがわれわれの強みです。まずは品質第一。これもお客様の目線での品質第一。〝お客様がどういう目線で品質を捉えているか〟ということを非常に重要視しています。
 ―顧客目線を大切にし、それをビジネスに反映するためには何が重要だとお考えでしょうか。
 加藤
 企業を支えてくれるのは人材です。この人材を育てて、変化の激しい時代に即応していく組織・企業でありたいと願っています。弊社の工作機械部門は長い伝統と歴史があり、素晴らしいお客様をたくさん持っています。これは、国内外問わず、ハイレベルな加工をされているお客様が多いことを意味します。ですから、機械に対する要求レベルが非常に高く、そのお客様の要求に応えていくこと自体がわれわれの機械の強みにもなるのです。お客様の要求に応えるべくカスタマイズもしますし、従来実行したことのない開発も行います。そのためには、これらのニーズに応えられる人材が必要であり、従業員の成長を促すことは会社の成長につながるため、人材育成は重要だと考えています。

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特殊な機構を持つZスクリュー

 ―貴社のコンプレッサは、時代のニーズに合わせて進化しています。
 加藤
 コンプレッサも車でいえばエンジン部分にあたる〝Zスクリュー〟という独特な構造を持つコンプレッサを開発しています。これは1本のスクリューローターと左右対称に設置された2つのゲートロータのシンプル構造のために回転軸に対する負荷バランスが良く、ベアリングに余計な負担がかからないという機構的にも理に適った構造をしており、高効率で寿命も長いのですが、一般的に、つくりにくい構造です。しかし、われわれは自分たちで工作機械をつくっていますから、このつくりにくい重要部品を自社製高精度工作機械で加工することができます。こうして高効率かつ高い安定性を誇る圧縮機を提供できることも、われわれの強みでもあります。同時に販売網とサービス工場のネットワークもユニークで強いものを持っています。
 ―ネットワークやサービスにも強いのは安心です。
 加藤
 われわれは全国に100店以上のサービス工場持っていますが、そこと連携をしながら非常にきめ細かいサービスを展開しています。現在、コンプレッサにおいては国内が強いのですが、海外比率はまだ10%ほどですので、まだまだ伸びしろがあると見ています。今後は海外展開を広めていきたいですね。
 ―貴社は海外のコンプレッサメーカーに圧縮機構だけを販売しています。
 加藤
 エンジンだけを海外の自動車メーカーに売るようなイメージでしょうか。現在、圧縮機の心臓部であるエアエンドの性能品質を徹底的に高めています。これをもっと世界中に広げ、世界一のエアエンドメーカーを目指しています。高精度な自社の機械を使った加工で、高付加価値を生み出していますから、この製造能力は弊社最大の強みです。

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大型MCライン

 ―一方の工作機械は輸出に制約があります。
 加藤
 古くは、かなり世界的に販売していたのですが、様々な制約があって現在、アメリカと東アジア、一部のヨーロッパ中心です。今後はアジアに注目したいですね。アジアは、現在、より高度な仕事をこなし始めているので、今後さらに経済発展をするでしょう。将来像としては、海外展開を増やしたいのですが、あくまでも製造拠点は国内です。
 ―工作機械部門においてアジアで注目している地域はありますか。
 加藤
 アメリカには航空機関連にて強固な販売網を持っていますが、一方のアジア地域においては、韓国、台湾、中国はわれわれを良く理解してくださる販売店があります。今後はタイ、シンガポール、ベトナム、インド等が伸びてくると見ています。これらには強固な販売網がないので、ここは育てていきたいと考えています。

フロントローディングで開発型の会社にシフト ~愛される三井精機は人材があってこそ~

200928top6 ―新型コロナウイルス感染拡大の影響が多くの企業に暗い影を落としています。
 加藤
 現在、地球に隕石がぶつかって、噴煙が巻き上がり太陽が隠れている状態と似ているかもしれません。大昔、この状態で地球の気候が一変して恐竜は絶滅しました。今はまだ太陽は見えない状態ですが、必ず埃は落ちて太陽は出るはずです。先ほど、〝柔軟に対応していきたい〟と申し上げましたが、地球上で生き残ったのは、柔軟に対応した哺乳類です。この厳しい時代をなんとしても生き残らなければなりません。
 ―コロナ禍において貴社の変化もあったと思います。
 加藤
 ITの進化に伴い、デジタルトランスフォーメーションの概念で、業務や組織の効率化を図っています。間接の仕事を効率化、よりお客様に近い所で仕事をする人材を捻出して行きます。企画や開発、営業、生産改善の陣容を厚くして行く方針です。
各地の拠点もスリム化しその分拠点数を増やし、お客様の近くでご要望にお応えする体制を整えて参ります。会社の規模は落とさずに、フロントローディングを実行し、開発型の会社にシフトしています。より、お客様の近くにいて、お客様にとっても利便性が高い仕事ができるようにしていきたいと思っています。
 ―三井精機ファンにメッセージをお願いいたします。
 加藤
 弊社は社員の構成上、大きな変革期を迎えています。現在60歳以上の再雇用による嘱託で働いている方が全体の15%ほどです。また、35才以下の若い人たちが35%と多く、この若い人材が、5年10年と経っていくと中堅ベテランになります。このように、若い人材が育ち、経験を積んできたときには、もっともっとすごい会社になるだろうと期待をしています。そのためにはやはり、人材育成が鍵を握ります。現在、60歳以上の方たちに集まって頂き、人材を育てる教育プログラムを組んで、教育を始めています。多くのベテランに昔の失敗談も話してもらい、若い人に教育をしてもらう。それを5年、10年、15年と区切って、内容を変えていく。この取り組みが5年後に実り、非常に優秀な技術者が育っていく。手塩にかけた人材がまた、お客さまのところに行って、お客さまのニーズを聞いて、それに応える機械をつくっていく若さ溢れる会社です。お客様目線の性能、品質の機械をこれからも提供して参ります。これがお客様に対するメッセージです。

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