碌々産業海藤社長に聞く ~世界市場のニッチ分野に貢献! 新製品『COSMOS』とは~ 

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海藤社長の後ろにはマシニングアーティスト認定者たちの名前がズラリと飾られてある

 

 微細加工機をあやつるオペレータを『Machining Artist(マシニングアーティスト)』と呼び、普及活動を行っている碌々産業(社長=海藤 満 氏)。同社は昨年、経済産業省が主催する2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」として認定され注目を集めた。

 

 めまぐるしく変化する産業構造の中において、世界の製造業から求められるニーズに応えて日々独自性の高い製品を生み出している。また、このほど市場投入された『COSMOS(コスモス)』は、マシニングアーティストの感性が生かせる「加工→洗浄→機上測定→追い込み加工」のトータルシステムであり、形状精度を追求するソリューションとして厳しい時代を生き抜く製造現場に新風を吹き込んだ。

 海藤社長を訪ね、お話を伺うとともに、『COSMOS』の技術的特長について取材した。

 


グローバルニッチトップ企業の誇り

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静岡工場には「MA-Labo」が設置。マシニングアーティストの感性を引き出す仕掛けが豊富だ。

 ―2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」の受賞、おめでとうございます。ニッチ分野において競争力のある企業として選出された感想をお聞かせ下さい。
 海藤 長い歴史の中で工作機械は大量生産でつくられるようになりました。これは巨大な資本力があればできることを意味しています。われわれのような中堅企業が大企業と同じことをしても負けます。例えば、スペックが一緒でもボールねじを大量に仕入れるほうが単価は安くなる。量販では負けてしまうので、われわれはニッチなところに行くしかありません。特定のニーズを持つ小さい市場を追求していけばいくほど、マーケットはどんどん小さくなるのでグローバル化をしなくてはならず、そこでグローバルニッチトップ戦略が生まれてくるのですが、国が認めて下さったことで、私たちの実行してきたことは間違えではなかった、と自信につながりました。今回、さらなる高精度・高品質なものづくりを可能にしつつ、経済効果を高めたいという製造現場のニーズに対し、生産性の向上を安定して実現する付加価値の高い微細加工機の開発を実直に行ってきたことがオフシャルに認められ、とても誇りに思っています。

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この形状の先端は禍〝ピン角〟ピンピンにとんがって作ってある。製作途中は「一切、欠けを認めない!」という海藤社長こだわりの加工サンプルだ。

 ―現在、デジタル経済も進化し、新たなビジネスも登場していますが日本は少子高齢化に伴い労働人口の減少など企業を取り巻く環境も変化しています。わが国の製造業の発展には技術の独自性が必要だと思います。
 海藤 日本の産業構造は自動車メーカーなど最終製品を手がける大手メーカーをトップとしたピラミッド構造となっていますが、中小企業が日本の競争力の源泉になっていることに皆、気付き始めたのではないでしょうか。大手メーカーのほとんどは、中小企業のスペシャリストたちがつくった様々な部品を1つの製品にセットして組み立て、ブランドを付けて売っていくというやり方です。しかし最近は、台湾系、中国系の企業が同じようなことを始めており、競争に負け始めています。日本のものづくりが衰退しているように見えるかもしれませんが、実はそうではなく、規模は小さくても独自の技術を持った方たちが日本のものづくりを支えていると強く感じています。

200117top4 ―トップブランドメーカーは量産で苦慮していますが、例えばスマホの中身はほぼ日本製です。
 海藤 スマホはパカッと開けるとデバイスはほぼ日本製です。なぜ日本が強いかというと、微細加工が得意だからなのです。日本人特有の性質もあると思いますが、とことん突き詰めて考え抜いた挙げ句、小さくて細かく、薄くて軽いものをつくることができた。日本が国際社会で勝ち抜くためには、手先が器用で微細加工の得意な日本人がその得意分野を強化していくことが競争力強化につながると考えています。
 ―海外では求められたスペックを達成できれば、それでヨシとし、それ以上は突き詰めずに量産体制に入るイメージです。
 海藤 海外だとスペックをクリアした段階で開発は終わりますが、日本の微細加工を行っているところは、〝ここはもうちょっとキラキラさせたい〟など、さらなる向上心が芽生えてくるんですね。おそらく経営者側からみたら、少々余計なことなのかもしれませんが(笑)。ところが、そういうことを自由闊達に追求させている企業がもの凄い競争力を持っているのです。物事を追求し、さらに高見を目指して飽くなき追求ができる人はまさにアーティスト。マシニングアーティストたちが加工技術で得た知見を様々なところに応用できれば、新たなニーズが生まれてくると思っています。

マシニングアーティストは第3期目のエントリーに突入!
 

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高精度・高品位レンズ金型

 ―海藤社長はデジタルデータを駆使するオペレータに尊敬の想いを込めてマシニングアーティストと呼び、普及活動を行っております。現在の活動状況はいかがですか。
 海藤 前期の第1期が35名、第2期も35名、おかげさまで70名の方に認定をさせていただき、現在、第3期目のエントリーを開始して非常に盛り上がっているところです。
 ―認定された方もモチベーションアップに繋がると思います。業界の認知度も高まり、広がりをみせています。
 海藤
 マシニングアーティストとして認定されたオペレータのいる企業では、外部から認定されたことをきっかけに、人材育成として教育プログラムの中に組み込もうという動きもあり、嬉しい限りです。こうしたマシニングアーティストが脚光を浴びることは、業界の発展にもつながります。若者が入ってこない業界は年月とともにどんどん高年齢化してしまい、最後は人材がいなくなって業界は消滅してしまいます。業界を活性化するためにも若い人たちを引きつけるための様々な仕組づくりが必要ですが、1社だけではできません。オペレータの権威を向上させることは日本のものづくりにとっても重要なことだと考えています。
 ―ありがとうございました。

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