碌々産業海藤社長に聞く ~世界市場のニッチ分野に貢献! 新製品『COSMOS』とは~
『COSMOS』はマシニングアーティストたちの感性を刺激する〝追い込みシステム〟
碌々産業は、昨年11月に開催された「JIMTOF2020 Online」にて、微細加工向けの追い込み加工システム『COSMOS』を出展し、注目を集めた。
『COSMOS』のプロジェクトリーダーの海外営業部所属の岩田孝之次長(以下岩田次長)に製品開発の経緯を尋ねると、「COSMOSは〝加工〟、〝洗浄〟、〝測定〟、〝追い込み補正〟、の4つの要素を組み合わせてトータル的に形状精度を追求するソリューションです。私たちは以前から〝四位一体〟(碌々産業の四位一体=①最適な微細加工機、②最適な工具、③最適なソフト、④最適な加工環境)の重要性をお話させていただいています。微細加工機に留まらず関連する要素を含めたトータル提案にて実加工精度±1μm以下の追求を行っていますが、やはり多少誤差が出てくるのです。」と1μmの追求の難しさを滲ませた。
微細加工に限らず、切削加工は、加工機が正確にプログラムに追従したとしても、加工する形状や被削材の性質、特に硬度に影響を受けやすくなる。これらの影響を受けて図面の形状通りの加工ができない―――という加工現場の悩みは多い。
「しかも、加工を評価するために加工機からワークを外して三次元測定器等に移すと、特に高精度微細加工では、寸法公差が外れても、再段取り、追加工を行うことは困難です。弊社のユーザーさんたちもこれについては悩みの種でした。形状測定のために三次元測定器に移したあとにもう一度機械に戻してミクロン単位の位置を再現させて1~2μmの追い込み加工は到底不可能。そうなると40時間、50時間の加工が無駄になってしまうのです。そこで、どうにかこの問題を解決できないかと、ずっと考えていました。」と岩田次長。こうした経緯もあって、高精度微細加工の無駄を省き、美しい面品位と工程短縮が叶うトータルシステム『COSMOS』が誕生したという。
岩田次長は、「最近は機上測定器も世の中に出始めて普及を始めていますが、だいたいが大物加工用で、微細加工と相性が悪いという側面もありましたが、様々なメーカーさんとコラボレーションさせていただくことで解決の糸口を見つけることができました。現在、ものを正確に測れるのはタッチプローブですが、ワークが切屑まみれになったり、油で汚れていたりすると正確な測定ができないので、洗浄しなきゃいけない。そこで、自動洗浄装置を新しく開発をして、プログラムで動くよう工夫をしました。私たちはマシニングアーティストの普及活動を行っておりますが、加工の世界で腕をふるうオペレータたちの感性が生かせるシステムにしたかったのです。」とCOSMOS誕生までの思い入れを話してくれた。
同社では、高精度な微細加工を実現するために、先述の通り〝四位一体〟を掲げているが、これらに加え、大切な要素にオペレータ、つまり人を加えている。機械を自由自在に操る人の大切さを説いており、それがマシニングアーティストの普及活動にもつながるのだが、オペレータの意志が忠実に機械に反映されることで究極の実加工精度が実現できるという。
河村長治顧問は、「われわれは常に〝そこまでやらなくてもいいんじゃないの?〟というほど、機械の精度に留まらず、微細加工における関連性まで意識を集中させており、とことん追求する姿勢があります。われわれが長年追求したことは決して無駄ではなかった。今後もお客様のニーズに対し、技術で挑んでいきます。」と力を込めた。
なお、同社では、リアルタイムで機体を監視し、微細加工に最適な状態を保つために、データに基づいて予防保全や早期トラブルの解決ができるサービス(AI Machine Dr.)も提供しており、加工現場にとっても非常に心強いきめの細かな体制も充実している。今年も碌々産業の〝仕掛け〟に目が離せない!