「歴史的名機が集結」 清水伸二 日本工業大学 工業技術博物館館長に聞く

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 明治から昭和にかけて産業の発展に寄与した工作機械を動態保存・展示している日本工業大学 工業技術博物館(館長=清水伸二氏 同大学客員教授、 上智大学名誉教授、MAMTEC代表)。展示されている機械や機器類は大小合わせて400点以上に及び、そのうち収蔵機器178点が国の登録有形文化財だ。工作機械は、あらゆる機械をつくり出す基になっていることから〝マザーマシン(母なる機械)〟ともいわれているが、同博物館には、わが国の産業の発展に貢献したマシン270台以上が機種別・製造年代順に展示されており、うち約7 割が運転可能な状態で保存されている。かつての町工場も復元してあることから、ものづくりの重要性を学びながら楽しむことができる貴重な博物館となっている。

 工作機械業界の第一人者として活躍している清水館長にお話しを伺うとともに、工業博物館をレポートする。

工作機械技術の見える化 

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「歴史を知ることで工作機械の理解をより深めることができる」と清水館長

 ―日本工業大学工業技術博物館2020年度特別展「平成時代30年間の日本の工作機械メーカの製品・技術を振り返る」は平成の30年間にわたる日本の工作機械技術を見える化しましたが、この狙いは。

 清水 技術開発目的・目標として、現在、高精度化、高速化や複合化、工程集約・短縮化などのキーワードが掲げられておりますが、これらの技術を遡ると昭和の時代から既に注目されていたものもあるなど、時代の流れに沿って技術目的・目標がどの様に進化・変遷してきたかなど、様々なことが理解できます。今回、工作機械メーカ22社にパネル出展をして頂いておりますが、自分たちが培ってきた技術をまとめることは、それらを各社の技術資産として残すという点でも大きな意義があります。

 ―各社の若手新人、そして学生などにも非常に役立つ内容です。

 清水 例えば複合化のためにどのような要素技術を開発してきたのか、その手段やアプローチ方法も様々なものがありますし、各社の取組み状況が一堂に見える化されていますので理解をより深めることができます。最近も工作機械メーカが新人教育の一環で17人ほどのグループで来館されましたが、とても勉強になったとの感想をたくさん寄せていただきました。    

 ―技術者を育成する意味においても技術の変遷を知ることは重要だと思います。

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学びの環境作りにも注力すると話す

 清水 様々な産業に貢献してきた歴史的に貴重な工作機械の展示だけでは無く、歴史的に貴重な工作機械関連の図書・資料も整理し、公開したいと考え、現在、鋭意準備を進めています。博物館に図書館機能を付けたイメージです。さらに、工作機械の基礎を学びやすくするため、工作機械とは何か? といった、工作機械の本質、その仕組みの原理・原則などの視点からも勉強できるような学びの環境作りも行なっていきたいと思っています。過去が理解できると現在も理解しやすくなります。また、その逆の効果もあります。過去と現在が結びついて、技術進歩の凄みを感じることができれば、若者には、「次は自分たちの番だ」という自覚も芽生えるでしょう。また、その時代の新技術について、〝誰が具現化したのか〟ということを目の当たりにすれば、〝自分たちも後世に業績を残せる仕事をしたい〟という夢を与えることもできます。また、業界には生き字引と呼ばれる方もたくさんいらっしゃいますから、そういう方たちの生の声を記録に残すということも非常に大切だと思い、講演をして頂いたり、博物館ニュースにご寄稿頂いたりして、できる限り記録に残す取組みもしております。ただ、昨年より新型コロナウイルス感染拡大の影響で、様々な方にお会いしてお話しを拝聴するチャンスが激減しているのが残念です。

 ―工作機械専門図書館はなかなか無いと思います。

 清水 日本の工作機械メーカの社史などもしっかり集めて、各企業の歩んできた歴史を知ることができれば、他社のことを学ぶきっかけにもなります。良い意味で競争をしつつ、そして、尊敬し合うことにより、互いが切磋琢磨しながら工作機械業界が発展できるよう、色々と貢献できたらと考えております。
 ―ありがとうございました。

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