完走率57%! これが海洋冒険家 白石康次郎氏とともに海を駆け抜けた「DMG MORI Global One(グローバル・ワン)号」だ!

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DMG MORI SAILING TEAMのスキッパー白石康次郎選手

 DMG MORI SAILING TEAMのスキッパー白石康次郎選手が2020年11月8日より約3か月にわたり開催された単独・無寄港・無補給の過酷な世界一周ヨットレース「Vendée Globe 2020-2021(ヴァンデ・グローブ)」においてアジア勢初の完走を果たし、大きな注目を浴びたのは記憶に新しい。白石選手とともにこの過酷なレースを走り抜いたのは、最新鋭の船「DMG MORI Global One(グローバル・ワン)号」だ。現在、ヨットやセーリング文化を楽しんで貰う目的で横浜、芦屋、常滑の各マリーナを周る「JAPAN TOUR 2021」を開催中(2021年7月28日~11月21日まで)だが、全長約23m、高さ約30m、そしてフォイル(水中翼)のついた最新鋭のレーシングヨットが日本で見られるのはこの期間だけ! 最新鋭の船を見学するとともに、白石選手に機運を高める秘訣などを尋ねた。


ヨットレースは「自然」と「人」と「テクノロジー」+「運」の融合

211105シャチにもみえる
海の王者シャチをイメージしたデザインが目を惹く。赤いのがフォイル(水中翼)

 現在、DMG MORI SAILING TEAMは、(1)白石選手とVendée Globe2024-2025で8位以内入賞を目指す、(2)日本にもっとヨット、セーリング文化を広める、(3)若手スキッパー、エンジニアの育成、の3つの活動方針に沿い、フランスを拠点に活動。「Vendée Globe2024-2025」への挑戦を目指して2022年より予選レースへの参戦を予定しており、精力的に活動を行っている。

211105ヨット前部
前からみたヨット。通常はこの大きさの船だと10人で動かすが、1人ぼっちなので約90本のロープを絡めて巻く方法がとられる。

 最新鋭のヨットを見学させてもらうとフォイル(水中翼)がついていた。白石選手の説明によると、この船はフランス製で建築デザイナーの高山正樹氏(Etre Design社長)が担当し、海外からの評判も高い。シャチにも見える白黒のモダンなデザインは遠目からも目を惹く。やはり、海洋生態系の頂点に君臨しているシャチをイメージしてデザインされたものだと聞いた。

 スピードを上げるためにフォイルで船を浮かして海面を走る―――。たった1人で挑む世界一過酷な命がけのレースでは、たとえ船がひっくり返っても誰も助けてはくれない。そのための工夫として、4トンの船には4トンのキール(錘)がついている。キールは海を走る船の横滑りを減少させる役割がある。この技術があって、船が万が一、転覆しても起き上がれるようになっているのだ。もちろんこのキールもフォイル同様、様々な形状があるようで、一概にどんなデザインが優れているのかとは言えないらしい。

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スピードを求めると重心を下げる設計となるため、天井が低い。速度が上がれば波の影響を受けやすくなるのでこうした構造になる。

 白石選手はこの点について、「われわれはたった1人で自然を相手に戦っています。向かい風も追い風も横風も波の高さも千差万別なので、予測不能な自然に合わせてつくることができません。船自体を安定して走らせることがそもそも非常に難しく、飛行機や潜水艦と違い、空気と海面の真ん中を走るヨットだけはスーパーコンピュータでも予測不能なのです。ヴァンデ・グローブに挑戦する船は40艇ほどありますが、ひとつとして同じ形がないのはこうした理由からで、独自性があって何が正解か分からないから面白い。コースだって自由だし、世界一周する、というだけで海のどこを走ってもいい。」と、テクノロジーと自然、そして人間の融合を実感し、楽しみながら世界一過酷なレースに挑んでいる。

 DMG MORI Global One号は知恵の結集でもあるが、空気と海面の間を走る船の下にはひょっとしたら巨大なマッコウクジラが泳いでいていつ浮上してきてもおかしくない。いくらスーパーコンピュータが出現しようともいつ自然が牙を剥くのか分からない。白石選手が操縦するDMG MORI Global One号は、最新技術を搭載しながらも、どんな設計が正しいかまだ分からない未知の世界を走っている勇敢な船なのである。

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