技術革新の一翼を担う岡本工作機械製作所 渡邊常務に聞く
研削素人でもすぐに使える研削盤で省人化をサポート
「労働人口の減少などを背景にこれからの時代は研削盤の使い方が変わっていくと考えています」と渡邊常務。同社がメカトロテックでもうひとつ、来場者の関心を引いたのは、〝AIソフト〟だった。これについては、技術開発本部商品企画部の西上和宏チーム長から説明があった。このAIソフトとは、『PSG-CA-iQ』シリーズに標準仕様されている文字レス対話ソフト『iQソフト』を指す。画面上のアイコンをみながらタッチ入力で簡単操作を実現するものだ。
「平面研削盤で初めて自動データ作成機能を搭載しました。総取り代と精研削取り代を入力したあとに砥石粒度を入力するだけで、最適な研削条件とドレス条件を自動作成します。通常、精度要求によって砥石を選ぶのですが、ノウハウが必要な仕事なので、経験の浅い方だと、どの砥石が最適なのか分からない。今回はその砥石選定をある程度自動化できるソフトが追加されました。現在、製造現場では熟練の高齢化による退職、また、労働人口の減少も課題とされていますから、こうした後継者不足の面をサポートすべく、研削加工のビッグデータを制御装置の中に入れ、画面上のアイコンをみながらタッチ入力で簡単操作によって研削のスキルレス化に貢献出来ればと思います。」(西上チーム長)
また、今後更なるソフト開発を行っていき、様々な機能が追加される予定もあるとの事。IoT化によって研削に必要な周辺機器なども注文できるようにすることを今後考えているとのことで、さらなるシステム強化が期待できそうだ。
ハイテク機能満載の工場内 ウルトラ恒温室を設置
さて、安中工場内には最近、恒温恒湿環境、温度22℃(±0.2℃)、7日間(168時間)連続で10分毎に測定を実施する〝ウルトラ恒温室〟が設置された。室内には『UPG63CA-iQ』が存在感を示している。ここでどのようなテスト加工を行っているか―――というと、ワークの写真は残念ながらNGだが、スマートフォンのレンズ金型だ。近年、ご承知のとおり、スマホのカメラも非常に性能が良くなっているが、こうした高性能カメラのための超精密金型をつくる環境には、しっかりとした恒温室が必要不可欠。大量生産されるスマホカメラの性能にばらつきがあると目も当てられない。こうしたハイテク機器の生産を下支えしているのは、こうした〝ものをつくるもと〟の企業である。
工場内を歩いていると、大きなモニタが2つ設置してあった。このモニタのひとつは、サービス担当者に対して教育の一環として、機械の据え付けや検査などを撮影し、動画を通して勉強するためのものだ。
もうひとつは、タイ、シンガポール、安中それぞれの工場がリアルタイムで繋がっており、納期確認や困りごとの相談など打ち合わせをするためのもの。この仕組みは、コロナウイルス感染拡大の影響で直接の面談が困難になったことでできた新しい取り組みだと聞いた。
写真では分かりにくいが、カメラ写りが非常に良く、モニタが移動できるようになっているので、顧客のテスト加工にも活用できるそうだ。また、この安中工場は、電力の使用量も常にモニタリングしており、前年比と比較して減少しているかチェックしている。機械だけでなく、工場の省エネにも注力する徹底ぶりを垣間見た。
IoT化が進む社会に大きく貢献しているOKAMOTO。ロボットやAI、自動車用パワーデバイス、大型液晶パネル用マザーガラス、電子機器の大容量化など現代の技術革新に必要なマシンを提供しているが、これらの好調な受注を受け、来年は中国に新工場の建設に着手し、2025年4月に完了予定だという。また部品納期短縮やアフターサービスの強化のため、安中工場資材棟における物流の自動化にも着手。ますます絶好調なOKAMOTOから目が離せない!