化粧品業界に一石を投じた安田工業「Labonos」
去る1月12日(水)~14日(金)までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「第12回化粧品開発展」(主催=RX Japan)に安田工業新規事業開発課が出展し、「Labonos」が展示された。このマシンは、3Dプリンタと同等以上の使いやすさに加え、精度の高い切削加工を行う3Dプリンタとマシニングセンタの良いとこ取りをしたマシンだが、同社では、煌びやかな化粧品業界の展示会にマシン本体を展示するという画期的な展開を見せ、容器メーカーや化粧品メーカーの商品企画やデザイン部門に一石を投じることに成功した。
現在、製造業のデジタル化が進んでいる。「Labonos」が生み出したものは、そのまま製品として使用できる便利さが特長だ。誰もが簡単に製品をつくることができるシステムを搭載しているので、従来の切削加工機を扱うための専門知識も不要であるうえ、意匠性の高い複雑形状でも、このマシン一つで製品を作ることができる。
製造工程の見直しで競争力強化を提案
この展示会では、化粧品を入れるための〝容器〟作りを行うプロたちが興味を示しており、取材中でもひっきりなしにYASDAブースに来場者が足を止めていた。視線の先は、展示されていた加工サンプルだ。
「最近は耐熱性のある樹脂を使って試作の型を製作しているところも増えました。デザインを重視される業界に注目され、静かなる盛況を感じています」というのは、安田工業 技術本部開発部に所属する田中さん。
化粧品業界といえば、化粧品そのものよりも容器のほうにコストがかかり、それ以上に広告宣伝費に莫大な資金がかかっているというイメージがある。実際に自動車メーカーや電機メーカーと比較しても、売上原価率が低く、販売促進のための広告宣伝費の比率が高い。CMでも分かるとおり、化粧品メーカーは美しい有名女優の起用により、(私もあんな風に綺麗になりたい)という女心を刺激しながら、シェアを拡大していく側面がある。テレビ、雑誌、街なかなど至る所に広告を打ち、商品の認知度を高めて顧客を獲得しているので、化粧品の価格はどうしても高価になってしまう。したがって、化粧品メーカーがより多くの利益を確保するためには、〝製造工程〟の見直しも必要になるわけだ。
化粧品を使用するユーザーといえば圧倒的に女性が多いため、好みは人それぞれだが、化粧品の容器にはなるべく多くの女性が好むようなデザインが望まれる。肌の手入れやメイクを習慣にしている人であれば、化粧品は自身のモチベーションを上げるためのアイテムにもなる。筆者は実際に某有名メーカーのリップが猫の形をした可愛らしいものだったので、その外観に一目惚れして少々お高めだったが購入した経験がある。こうした購入者は世界中に多く存在すると考えられるので、化粧品の容器は売上を左右する重要なものだということが分かる。
田中さんも、「化粧品の容器は商品価値が変わる重要なファクターです。美容が進んでいる韓国は、容器のデザインに非常に拘りが見られ、中国も同じく拘りがあります。お洒落でコストを下げた容器が日本でも作れることが今後重要になってくるでしょう」と話す。