【小物高精度加工は次の時代へ】 三菱マテリアル&シチズンマシナリー LFV(低周波振動切削)技術が切りくずトラブルをシャットアウト!
近年、新しい加工技術として注目を集めているシチズンマシナリーによるLFV(低周波振動切削)技術。この技術は2014 年にVC03に搭載し市販化され 、さらには自動盤市場でのベストセラー機である『L20シリーズ』に本格搭載されたことにより、一気に市場が拓け、2021年度までで販売実績は世界累計4,000台を達成した。一方、三菱マテリアル・加工事業カンパニーは、従来の加工方法は基より、いち早くLFV技術を用いたマシンに対応する最適な切削工具の開発を進めてきたことで、工作機械のポテンシャルを最大限に引き出す『LFV 対応工具シリーズ』を市場に提供している。
〝新時代の加工技術″をテーマに、両社の取り組みについてシチズンマシナリーにて取材を行った。
LFV技術の優位性
LFV(低周波振動切削)技術は、シチズンマシナリー独自の制御技術によりサーボ軸(X軸の1軸もしくはX-Z軸の同時2軸) を切削方向に振動させ、その振動が主軸回転と同期しながら切削を行う加工方法である。特長は、振動の端数分だけ各回転で振動の位相をずらし、切削中に空振り時間を発生させることで切りくずを細かく分断しながら断続的に排出できることだ。多彩な加工形状や被削材に対応できるため、インコネルやステンレス、銅などの切りくず処理が難しい材料や難削材加工でもワークや切削工具への切りくず絡みなどの様々なリスクを低減させる最新の切削技術である。
この技術を2013年より市場投入したシチズンマシナリー。3年後の2016年には同社ベストセラーモデルの『L20シリーズ』への搭載を開始したことで一気に市場が拓けた。
さて、LFV技術の大きなメリットは切りくず分断性だが、シチズンマシナリー 営業本部ソリューション推進部営業技術課 課長の御園春彦さんは、「切りくずが分断されると稼働中の機械停止、切りくず絡みによる加工不良、加工監視の負荷が削減されます。」と話し、「一般的にはオペレータ1人が複数台の自動盤を担当しているので、トラブルが発生すればそれだけ損失に繋がります。逆に言えばその時間が削減できれば他の仕事ができます。」とのメリットを強調する。
ユーザーにとって嫌な出来事のひとつに切削工具の破損がある。切りくず分断性が良いと切りくず絡みがないため、突発的な破損の抑制ができる。「切削工具費の削減に効果が出ています。」と御園さん。また、加工には熱変位がつきものだが、「振動切削は微細な断続切削のような動きなので、工具が被削材から離れた際に加工負荷が下がり、切削油も隙間に入り込み冷却効果が得られます。そのため加工条件が合えば切削工具の寿命延長に繋がります。」と説明した。