【対談】『つくるの先をつくる』日進工具社長 後藤弘治氏×『感性と技術で世界を虜にする』独立時計師 浅岡 肇氏

 

 「浅岡は面白いことをやってるね。」と言われたい 

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8月11日に発売の浅岡氏が設計した2022新作「カランドリエType1」は
発売後わずか10分で完売! 243,000円

 

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ゴミとチリを徹底排除するため細心の注意を払う

 浅岡 神経を使うといえば、僕はBIGのコレットチャックを使用していますが、チリを噛んだら絶対にNGなので、いかにチリを噛まさないでチャッキングするか、ここはもう厳かな儀式のようなプロセスです。 

 後藤 儀式・・・・(笑) 
 浅岡 まずパーツクリーナーでシューっと。あらかじめパーツクリーナーでコレットの内側もシューっと洗浄し、エアを吹く際は中空糸膜フィルター付きのエアガンを使います。ありとあらゆる方向から絶対にチリを入れない。ミクロンオーダーの加工を安定的に行うにはそのくらい神経を使います。またケアレスミスは本当に怖い。主軸をぶつけてしまうなど想像するだけで恐ろしい。この失敗を回避するため、原則として全てのワークに対して同じ治具を使い、原点情報や段取りの共通化を図っています。ツール、ATCも全部同じで、この工具番号にはこの工具と決まっています。例外もありません。ひょっとしたら今日もどこかの加工現場で主軸をぶつけるという事態が起きているかもしれませんが、僕は絶対に回避したい(笑) 

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「この工具番号にはこの工具と決まってる」と浅岡氏

 後藤 僕も若い頃は工場内で散々失敗をしたことがあります。砥石を何枚割ったことか(笑)こういう失敗を避けるために、世の中の流れよりも一足早く工場内の自動化に着手しました。弊社の生産工場が安定的な高品質と高生産性を維持できるのは、日々、改善に取り組んできたからであり、現場の社員の想像力と実行力が工夫を凝らした製造機械の自社開発につながりました。浅岡さんは現在、どんな発想で時計を製作していますか。 
 浅岡 腕時計のように微細なものを正確に動かすためには、設計も加工も複雑です。従来の機械式時計は、悪い言い方をすれば場当たり的に部品を置いていったような設計です。また、マニア受けを狙ってか、必要以上に複雑に作ろうという風潮があります。僕の場合は、いかに構造をシンプルにして同じように動かすことができるか、に挑戦しています。ここはもう知恵の問題になります。一般的にはなかなか理解されにくいとは思いますが、僕はそれでいい。「浅岡は面白いことをやっているね。」と時計業界の人たちに驚いて頂きたいのです。 

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