ナガセインテグレックス 長瀬社長に聞く 「開発スピードが加速」

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 1950年創業のナガセインテグレックス(以下NAGASE、社長=長瀬幸泰氏)の強みは、長年蓄積された超精密要素技術にある。顧客が有している加工技術にNAGASEの超精密要素技術がつまったマシンを融合させ、応用することが、顧客の〝差別化〟につながるとして、顧客が持つ専門的な技術や知識に基づき、加工システムの開発や提案を行っている。

 昨年11月に開催された「JIMTOF2022」では、7機種を出展し、本年3月に開催された「Grainding Technology Japan2023(以下GTJ2023)」でも未来を見据えたAI研削盤の一部を披露し来場者を大いに沸かせた。同社のモットーは、〝マシン開発を通してお客様の製造・工程革新を支援〟することだ。現在、開発スピードが加速している同社の長瀬社長にお話しを伺った。

加速する開発スピード

230410top1 ―昨年のJIMTOFでは7機種を出展しました。貴社の開発スピードも加速しているように感じます。
 長瀬
 少子高齢化や労働人口の減少に加え、製造現場ではSDGsの観点から省エネを含めた効率化を促進しています。また、働き方改革で労働時間が減少しているなか、与えられた時間内で効率良く精密かつ高品質のものをつくるとなると、それなりのノウハウが必要です。昔は現場で活躍していた熟練者も今では高齢化による退職などで技能の継承がうまくいかないといった問題も多くあります。そのため、非熟練者でも熟練者と同様の仕事をこなしていかなければ効率が悪化してしまいます。この問題は待ったナシで解決しなければならない問題ですから、非熟練者でも高品質なものをスピーディにつくり、いかに生産性を上げるかが重要になります。ちゃんとしたマシンによる、非熟練化、省人化、自動化はこうした問題を解決するための鍵を握ります。
 ―時流として製造現場における自動化は避けられないと思いますが、ただ単にワークの共有を自動化してしまえば良いというものでもないので、お客様と真の自動化の概念を共有させて頂く難しさを感じます。
 長瀬
 仰る通りです。おそらく多くの方々が自動化といえばワークの自動供給などのイメージが先立つと思いますが、そのまえに重要なことは〝高精度加工の安定した生産〟です。弊社は、有益な加工の生産性向上のために様々な切り口で様々なソリューションをご用意しています。研削加工の非熟練化にも注力しており、加工支援アプリ『GRINDROID®』や、砥石をAI観察して不具合を予測するAI砥面観察システム『GRIDE EYE®』をいずれも業界初として開発に成功しましたが、こうした技術もしっかりした機械という土台がないと生かされません。熟練技能者は減少の一途を辿るのに、研削加工の難易度は年々上昇しているのが現実です。熟練者の知見と腕に依存する研削加工の課題解決を目指すことがわれわれの役目だと考えています。作業者の技能によって結果が大きく変わるとすれば、マシンではなく道具を使っているのと同じです。

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研削加工の非熟練化に注力しているNAGASE。​本年3月に開催された「GTJ2023」でも大きな注目を集めた

 ―貴社はGTJ2023では〝AI研削盤〟を提案していました。非常に興味深いものでしたが、長瀬社長が考える未来の研削盤とは。
 長瀬
 熟練者の技能に依存しなくても、AIが推奨加工システムを導きだし、なおかつなぜそのシステムを推奨するのかを作業者に分かりやすく示す機能を有する研削盤があれば、時間の短縮にもつながり、経験の浅い作業者でも問題なく品質の良いものをつくることができます。更に素性の良いマシンの導入(道具ではない)は時代が流れても機械の拡張性が高ければ安心してものをつくり続けることもできます。つまり、もともとポテンシャルの高いマシンは、導入後に開発された新しい技術をビルトアップすることができるので設備後も進化し続けることができます。お客様が、有益な付加価値の創造を、加工を通じて実現して頂けるように、技術開発に注力し、お客様の新たな市場創出に向けて長く貢献できるよう注力していく所存です。
 ―AI研削盤が〝なんのためにあるのか〟を突き詰めると、製造業における現状の課題や生き残るための解決法が見えてくると感じます。国際競争力は熾烈を極める一方にもかかわらず、技術継承も人材獲得も難しいとなれば、大きな力となるのは設備力なのかもしれません。
 長瀬
 生産設備の自動化とAI技術の融合は生産工程に変革をもたらします。作業効率の改善はもちろん、開発や製造のリードタイムの削減で生産性が向上できれば、経済効果が生まれます。最近は従業員の労働時間の見直しを図りつつ、賃上げを発表する企業が相次ぎましたが、製造業が高い経済効果を生み出す力のある生産設備を保有することは、こうした時流にも合致しています。我が国のように天然の資源に乏しい国は、人材こそが最大の資源です。何故なら新たな技術の創出も人によってなされるからです。その人材が今後自然減少しするだけでなく、他国に流出してしまうことが無いようにするためにも、ものづくり現場に、感動と誇りある仕事の創造が大切になります。人が人として生きがいを感じられるように加工現場も変化をせざるを得ないと思います。非熟練化は熟練者を必要としないことではなく、熟練者が活き活きと活躍できる環境を実現することだと思います。

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