ナガセインテグレックス 長瀬社長に聞く 「開発スピードが加速」
NAGASEの先見性
―どんなに熟練者でも砥石軸を下げてワークに当てるのはドキドキする作業のひとつですが、貴社はすでに40年も前から砥石のワークへの自動当て込み技術の開発の必要性を認識しており先見性を感じます。
長瀬 今から40年ほど前は、「NAGASEの常識は業界の非常識」と言われていました(笑)。仰るように、熟練者のような砥石のワークへの自動当て込み技術の開発は、当時は完全には実現をできず、その課題としてクローズアップされたサブミクロンの運動特性を持った案内面開発と、砥石の機上バランス計測技術開発へと発展し、弊社独自の多面高速静圧案内面と機上動バランス測定機「バランスベクター」が完成したのです。「バランスベクター」は、砥石のアンバランス位置を計測して表示するもので、「バランスドクター」は使用回転領域において砥石フランジのポケットに水を噴射しバランスを修正する仕組みです。同時期に開発された3軸油静圧研削盤「PROTO-52」で、非熟練者でも砥石の同バランスが常に0.1μm以下で切り込みも0.1μm±0.1μmで切り込むことが実現していたのです。この技術は今から40年前はウケが悪く、非常識扱いをされましたが、現在この技術は業界の常識となっています。
―貴社の画期的かつ個性的な構造体を持つ〝IGTARP(イグタープ)デザイン〟が注目を浴びていますが、昨年開催されたJIMTOFあたりから、貴社では〝異次元、異空間、異形態を生み出す〟という言葉を使うようになりました。その狙いは。
長瀬 弊社が十数年も前に提唱していた〝超精密〟は言葉として世の中にすっかり馴染みました。現在、弊社では新しい概念として、『T cube』(T³)を推奨しています。これは、①Prosessing Transformation(PX:加工による有益な価値の創造と変容)、②Transcendence Precision(TP:超精密から超越精密への進化)、③Translation Concept(TC:原理・原則・基本に忠実に実業の世界に有益な技術に転換する開発)を指しています。昔と違い非熟練者でも超精密加工を行うことができ、しかも自動化・省人化でありながら、高付加価値加工と高生産性が求められている現在、超精密に対する機械のフェーズが変わった、あるいは次元が変わったとも言えます。このため時代のニーズに合致したマシンやソフトが必要になりました。、革新的な発想、重心最適化、トポロジー最適化、高度な解析技術、ロバスト最適化、生産性最適化、を行うことにより、重力や振動、温度、生産性などあらゆる要素に対応した最も理にかなったマシンの構造体を追求していったところ、従来とは異なった形状をしていたものが見えてきたのです。われわれが見ているのはまさに異空間かもしれません。フェーズが変わったのですから、従来にないものをつくるために、自らの身を異次元に置いて考え抜いた結果、最も理にかなったマシン構造である〝IGTARPデザイン〟が生まれたのです。
―IGTARPデザインのマシンが発表された時はアンモナイトを彷彿させる形状に驚きました。たしか古代の建築物や動物の骨格からヒントを得たのですよね。
長瀬 先に古代の建築物や動物の骨格からヒントを得たのではなく、最先端のコンピューターとソフトを駆使して、導き出した形や構造が、昔からある建築物や動物の骨格、に極めて似たものになり驚きました。自然には最も理にかなった姿があり合理的なのです。永年地球の重力下で、適切に運動できるように進化した生き物は様々な環境の変化や、日常的に振動の変化や温度変化や臭いなど様々な情報を感知しながら生き延びてきました。重力、振動、温度、生産性などあらゆる要素に対応して、最も理にかなったマシン構造を追求した結果、自然と古代の建築物や動物の骨格に近づいていきました。
―なるほど! ところで画期的な貴社のマシンを見てみたい! という方々が多くいらっしゃいます。見学は可能なのですか。、
長瀬 もちろん可能です。ホームページの問い合わせフォームがありますから、工場見学希望と記入していただければありがたいです。
―貴社の工場や豊富な加工サンプルは見どころが抜群です。ありがとうございました。