「限りない技術革新への挑戦!」 イスラエルのイスカル本社でファーストクラスディーラーと関係ユーザーを対象にセミナーを開催(前編)
「時は金なり!」年間売上の4%~5%を継続的に還元投資
イスカル社が世界第2位の規模を誇る総合切削工具メーカーであることはご存知の方も多いだろう。年間売り上げの4%から5%を継続的に研究開発へ還元投資をしているのはご存知だろうか。最新の工具を加工現場に届けるという強い使命のもとで実現していることの証明となっているといっても過言ではない。
しかも同社によると、「特許申請に関しては切削工具メーカーとしてトップクラス。われわれが開発に投資をすることで、製品全体の約40%が過去5年間以内に発売された最新製品となっている。」という。さらに、「すべての製品はお客様に付加価値を届けるものでなければならない」と強調した。
同社では、〝時は金なり〟のモットーで、顧客が大きなコストをかけて導入した工作機械において、加工に関係のない時間を最大限削減し、顧客の生産性向上につながる工具開発を行っている。「人件費、機械チャージをはじめ、加工に関係する〝トータルコスト〟の削減を目指しており、決して工具の単価によるコスト削減ではない。加工コスト全体において工具費用はわずか3%程度だが、賢い機械加工が叶えば、例え工具費が上がったとしてもトータルコストは大きく削減できる。」と自信を見せる。
同社の製造現場に足を踏み入れると、世界各国の製造工場の情報をネットワークを通してリアルタイムに収集・分析を行い、IMT(一つの端末で世界中のどこででも使用することが可能な高速・高品質な移動通信システム)を介して作業者と工場をつないでいる。製造ラインに接続することで、製造と供給バランスの環境が整い安定した製品供給を実現している。
また、品質、環境、安全管理の基準を満たし、品質規格の認証を受けている。これは問題を未然に防ぐ体制、また万が一問題が生じた場合も迅速に対応可能な体制が整えられているなど、厳しい検査基準をクリアした高い信頼性の証明となる。顧客満足、品質保証を最優先したイスカル社のビジョンがここに反映されているといえよう。
その他、インターネットを介したサイバーフィジカルシステムサービス(CPS)についても説明があった。CPSとは、現実を仮想空間に取り込み分析を行い、最適な結果を提示する連携システムを指すものだが、これらのシステムが同社のスローガンでもある〝賢い機械加工〟を実現している。具体的には、情報をオンラインで提供、『イスカル・ツール・アドバイザー(略称ITA)』を活用すれば、加工内容、機械、ワーク等の情報を入力することで最も適切な工具の選定を誰でも簡単に行える。
こうしたデジタルな分野においても、イスカル社は様々なシステムやアプリの開発に力を入れており、「製造現場の生産性向上」をあらゆる角度から追求している。現在では、IT関連を専門とする人材も数百名規模で抱えているというから驚きだ。
同社が開発した、加工現場において活躍する様々なITツール(アプリ)を一纏めにしたのが〝ISCAR WORLD(イスカルワールド)〟である。このアプリが入口となって、それぞれのアプリから製品情報や切削データ、適切な工具選定、CNCプログラミングなどの情報も即座に入手可能となっている。情報検索の手間と時間を削減でき、より迅速で信頼性の高い意思決定の手助けをしている。
イスカル社はこうした考えを惜しげもなく披露し、セミナーの初日は終わった。
後編は次回の製造現場ドットコムに続く