【トップインタビュー】三井精機工業 川上博之社長に聞く ~無駄のない仕組みをつくる~

231113三井精機 川上社長

 産業の基幹となる工作機械と動力源の空気圧縮機をあらゆる産業界に供給している三井精機工業(社長=川上博之氏)。高精度な部品加工へのニーズに合致した工作機械は、業界の評価も高い。昨年、90年を超える歴史ある同社の社長に就任した川上社長に未来への展望などお聞きした。

安定した収益を確保する ~物流改善にも着手~

231113top1 ―昨年、専務から社長に就任されましたが、新たな目標などはありますか。
 川上
 徹底した無駄の排除により、基礎体力のある会社に成長させることです。従業員のためにも安定した収益を確保しつつ利益を向上させ、財務体質の改善を図っていくことを目標にしています。
 ―特に注力していることを教えてください。
 川上
 やはり無駄の排除です。仕事の無駄というのは、仕入れの無駄、同じことを繰り返す時間の無駄もあります。ありとあらゆる無駄があちこちにあるので、それを見つけて無駄が出ない仕組みを構築していくことに注力しています。将来私が退任しても、社員それぞれが自分たちで無駄を見つけて無駄が出ない仕組みをつくれるよう人材を育てていくことも私に与えられた任務であると考えています。
 ―今の時代は昔と違って、副業が認められたりするなど働き方がフレキシブルになりましたが、その反面、入社してもすぐに転職してしまうなど、会社の人材育成もなかなか難しいとよく聞くようになりました。
 川上
 人には個性があります。仕事の内容が同じものであっても、それが苦手な方と得意な方がいます。感性も違う。センスの良い若い方たちがモチベーションを上げて活躍できる場をつくっていくことが重要です。若者は可能性も大きい分、将来どうなるか予想のつかないものですが、人を育てるための環境の整備にも注力しています。弊社は今年で95周年を迎えましたが、歴史があります。長い歴史の中で培われたものの中には良い部分もあるし、膿のような悪い部分もある。構造改革と口でいうのは簡単ですが、非常に苦労するものです(笑)
 ―貴社の強みのひとつに〝現場の力〟がありますが、貴社ならではの優位性について教えてください。
 川上
 弊社の機械は流れ作業で同じものを生産しているわけではありません。お客様のご要望に沿った特殊な機械をつくらなければならないのです。そのため、例えばアクシデントがあっても現場の人間が自分たちで考えてその場で良い方向に変えていく。設計の力もずいぶん強くなってきたと感じています。

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実行することが大切と川上社長

 ―設計の力がついてきたと思う要因は。
川上
 弊社は1台の機械を1人がつくります。1人の人間がスピンドルもクーラントタンクも駆動系も全てつくることができるのです。私の3代前の社長であった岩倉が昔、1人でこれらを実行していたのですが、当時の岩倉の指導もあって〝ミニ岩倉〟がたくさん育ってきました。量産メーカーの場合は通常、クーラント、スピンドル、カバーなどパーツごとに人が分かれて担当しているものですが、弊社は特殊品も多く、お客様のご要望に沿ってカスタマイズをすることが前提ですから、1人で何でもできるほど豊富な知識を有する人材が必要であり、一生懸命育てています。
 ―他社との差別化も徹底している印象を受けます。
 川上
 工作機械は高精度・高剛性の標準機をベースにカスタマイズ化を徹底することで、マーケットイン戦略を推進しています。現場力と設計力に加え、お客様ときちんと話ができる営業力の3つが弊社の強みです。
 ―工場内で新しい取り組みなど着手したことはありますか。
 川上
 ジェイテクトの応援を得て、物流・サブ組の改善を実施しました。サブ組をしてユニットにし、組む時間を短くすることで生産性が上がりました。モノを待ったり、探し回る時間の無駄を省くことができたことで、一部の機種を除いて納期遅れがなくなりました。

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