【トップインタビュー】三井精機工業 川上博之社長に聞く ~無駄のない仕組みをつくる~
米国でリスキリング ニッチな仕事に貢献
―川上社長は長い間、営業を担当されており、米国でもご活躍をされていました。
川上 入社してからほとんど営業を担当しており、米国には18年ほど駐在していました。米国会社の経営も任され、帰国したときに経営管理部長の仕事を与えられました。実は米国で会計士の資格を取得しています。
―そうだったんですね! 営業畑一筋に歩まれていたと思っていました。
川上 営業マンの川上のイメージが強いかもしれませんが、数字もきちんと見ることができます(笑)。会計士の資格取得に至った背景は、当時、私の周囲にいた米国人の多くが会計士の資格を持っており、刺激されたこともあります。新しいスキルを身につける目的の今でいう〝リスキリング〟ですね。これを40代で実行しました。
―最近になってリスキリングの必要性も議論されるようになりましたが、すでに実行されていたのですね。米国で仕事をしていて思い出に残ったことはありますか。
川上 米国人は皆様が想像するよりも義理人情に厚いと感じました。紙の上の契約だけの話ではなく、お互いに信頼関係での結びつきも強い。どこの会社もそうでしょうけれど、日本人が海外に赴任して仕事をすると、文化も風土も違いますから相手との〝温度差〟のようなものを感じた点は苦労しましたが、楽しかった思い出が多い。GEやボーイングの皆様と仕事ができたことも良い思い出です。
―最近は航空機分野も若干戻ってきたようですが、注目している分野について教えてください。
川上 航空機が若干戻ってきたのはありがたいことですが、半導体関係、特殊な精密分野にも商機を見ています。われわれは特殊な機械をつくる技術を有していますし、得意とするカスタマイズがあります。特殊な機械をつくることでニッチな分野に貢献していくことを考えています。
―2年前にジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した宇宙の画像は世界中の人々を魅了しました。この重要パーツの主鏡も貴社のマシンで加工されました。これもニッチのひとつですね。
川上 これもお客様のご要望に添った特殊な機械のひとつです。主鏡の材質はベリリウムに金メッキが施されているもので、1つの鏡の大きさは1.3m。毒性もあり大きなものです。宇宙望遠鏡の性能を左右する重要パーツを加工するのに相応しい機械ですが、非常にニッチな分野です。米国にいたときには、「川上さん、どこで機械売ってるの? もしかしたらみんなが難しくて避けて通っているお客さんを拾ってるんじゃないの?」ってよくいわれていましたが、汎用機と違い、困難で複雑なややこしい仕事に貢献している機械メーカーがあってもいい。私たちの存在価値はここにあると思っています。そしてなによりフットワークが軽い。
―小回りが効くということですね。
川上 「ここを直して欲しい」というご要望でも、翌日もしくは短時間でピシッと直す。量産メーカーでは困難なことでも、お客様の状況に応じて素早い動きができる点もわれわれの強みのひとつです。
―素早く対応する現場のフットワークの軽さがいいですね。
川上 社員のモチベーションを維持するには、給料も大切ですが、仕事の充足感も重要だと思っています。営業がお客様と契約し、画期的な機械をつくってお客様に感謝されることで得る達成感はひとしおです。