三菱マテリアル 明石製作所を徹底取材! ~新製品『VQ4MVM』の加工デモも拝見~

 

これが新製品高機能エンドミル『VQ4MVM』だ!

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高機能エンドミル「VQ4MVM」を手にする山口係員。「将来的な普及を見据えて商品化した」という

 

 本年1月に発売をした新製品の高機能エンドミル『VQ4MVM』について、エンドミル開発部工具開発課の山口係員は、「この製品は汎用的な用途の切削性能を維持しながらP種、M種で優れたランピング加工性能を発揮する工具として開発しました。」とコンセプトを述べた。アイテム形番は、「VQ」がP種、M種含む多用途なスマートミラクルブランドを示し「4」は4枚刃の多機能用途が可能であることを強調している。「M」がミドル刃長、「V」が不等リード、最後の「M」が新しい製品記号で、山口係員は、「高機能エンドミル『VQ4MVM』は多機能用という意味の〝Multi function〟の頭文字を取って、『VQ4MVM』という製品名称にしました。」とのこと。

 この開発の背景は、欧米の工具メーカーが4枚刃で強ランピング加工が可能なエンドミルを発売したことによる。山口係員は、「強ランピングを含めた加工方法は市場にはまだ浸透していないものの、CAM利用で活用が可能になることから、将来的な普及を見据えて商品化しました。」と説明してくれた。

 『VQ4MVM』の特長は、工具設計に顕著に表れている。充分な底刃のポケットを確保した〝2段ギャッシュ〟によるスムーズな切りくず処理を行う設計である。ランピング加工での切りくず排出状況をシミュレートしたところ、従来品は切りくず流れが悪く、切りくずに大きな〝ひずみ〟がみられたが、『VQ4MVM』は切りくずの流れが良好なので、切りくずの〝ひずみ〟が小さい。また、高い制振性を確保するために“マイクロレリーフ”を適応している。

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加工デモ。従来品はヘリカル加工を7回行うところ、「VQ4MVM」でヘリカル・ランピングで1回で終了。従来27秒かかっていたところがなんと14秒に短縮できた!

 なんといっても高機能工具の強みは工具集約にある。『VQ4MVM』は制振性に優れるので加工面性状、バリ抑制ともに良好で荒加工から仕上げ加工まで1つの工具で対応可能なのだ。

 ――――ということで、いざ、加工デモを拝見!

 まずはドーナツ形の溝加工を行った。被削材はC55(S55C)、今回は激しめに〝5°〟と〝30°〟のランピング角でデモを実行。従来工具と新製品を削り比べた。強いランピング角度で加工を実行すると工具の軸方向に切りくずがあがってくるので、工具は折れやすくなる。

 従来品でも30°で削れるのだが、耳に神経を集中させると、しんどそうに〝頑張っている音〟が分かった。続いて新製品の『VQ4MVM』で加工をすると従来品工具とは違い、静かだ。ビビリ音が聞こえないうえ、あっという間に削ってしまった。狭いポケット加工を高能率で行うことが示され笑顔を見せるエンドミル開発部の皆様。

 山口係員は『VQ4MVM』について「今回の開発は折れた工具と折れなかった工具で解析を行い、応力が高くなるところの目星を付けて形状を改善してきました。改善方法が合っているのが分かると、今度は底刃のポケットを工夫し、適切に広げて欠けない、折れない工具にたどり着きました。」と説明をしてくれた。

 明石製作所の挑戦はまだまだ続く――――。今年はJIMTOF開催年だ。三菱マテリアル 加工事業カンパニーのこれからに目が離せない!
 

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