「世界切削工具会議(WCTC)2024」が大阪で開催 ~切削工具業界からみた各国製造業の現状と展望~

 

「世界切削工具会議2024」(主催=日本機械工具工業会 会長:松本克洋〈不二越 執行役員工具事業部長〉)が521日(火)~24日(金)の4日間、大阪で開催され、海外65名、国内70名が参加した。アジア圏では2013年に日本が初めて開催しており、今回は11年ぶり2度目の日本開催となった。世界の切削工具業界を取り巻く環境をみると、地球規模で活動している製造業の現状と展望が見えてくる。各国の代表が説明した内容をまとめた。

この国際会議はECTAEuropean Cutting Tool Association)の元理事長であるAnders Ilstam氏が発起人となり、米国USCTIUnited States Cutting Tool Institute)への働きかけにより、世界切削工具会議(WCTC)として開催企画されたもので、第1回目の米国フロリダに始まり、第7回のドイツ・ミュンヘンに続き、今回が8回目となる。

 

2024年は34億ドルを目指す」
●日本機械工具工業会(JTA) 松本会長

 日本機械工具工業会は2015年に超硬工具協会と日本工具工業会が統合して設立された団体で、日本機械工具工業会としての歴史は10年を迎えるが、この2団体が設立されたのは両団体とも1948年。実質は70年という歴史がある。現在、同工業会は正会員が82社、賛助会員が57社で構成され、生産金額は2022年には約32.79USドル。アジア初の日本開催となった2013年当時は、統合前の2団体の生産額の合計が24.4億ドルとなっており、9年で34%の伸びを示している。

 現在日本のGDP2013年比で19%ダウンしたが2023年に若干盛り返し、2024年に入っては半導体のハイテク株価の記録的な値上がりを示し、ようやくマイナス金利政策は解除され、デフレの出口が見えたと期待できる内容になった。多くの企業が賃上げを表明し、今後は失われた30年を取り戻すべく景気が上がることを期待している。

 市場動向は、主要産業である自動車の生産台数は800万台ほど。2020年にはコロナ禍で落ち込んでいたが、急激な生産回復に対して半導体の供給不足、コロナ禍で海外からの部品の供給不足が起きた。現在では半導体の供給不足は解消されているが、まだ2018年のレベルまでには回復していない。

 切削工具と結びつきの強い工作機械の受注推移から、2016年から2017年にかけて日本国内でIoTブームが起きたが、2019年になると一転、米国と中国の貿易摩擦を背景に主要産業である自動車業界で設備投資を控える動きが見られ、さらに2020年にはコロナ禍による落ち込みがあり、2021年にはコロナ禍から立ち上がった中国の需要が回復し、その後受注は徐々に回復しているが、2017年のレベルには戻っていない。

 切削工具の状況だが、工業会の生産額は2018年度までは順調な伸びを示し33.3億ドルを超えたがその後のコロナウィルスの発生で2022年には25億ドルまで落ち込んだ。国内と輸出の比率は全売上では2016年には33%の輸出が2022年には38%まで伸びた。海外で生産している会員もいるので海外比率が高まっている。

 2024年の見込みは、34億ドルであり、34億ドルは決して簡単な数字ではない。EV化による切削工具需要の減少、2年を超えたロシアとウクライナの戦争、またイスラエルによるパレスチナへの侵攻による景気後退など様々なことが起こっている。さらに中国の不動産不況により景気が後退しているが、自動車がEV化へシフトする中でメインとなる被削材が変わってくるかもしれないことに加え、加工方法も変わってくるかもしれない。こうしたことから新しい工具の需要、新しい工具の誕生という可能性もあるので期待をしたい。

 

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