日本最大の金型メーカー キヤノンモールド 斎藤社長に聞く ~多品種大量化への道~

 

 

 キヤノンモールド(社長=斎藤憲久氏)は茨城県内に本社・友部事業所(笠間市柏井)と阿見事業所(稲敷郡阿見町)がある。また海外には協力会社としてキヤノングループ3社(Canon Virginia,Inc.、Canon Hi-Tech(Thailand)Ltd.、佳能大連事務機有限公司)があり、海外展開にも目を向けるプラスチック金型専業では日本最大の金型メーカーだ。

 以前はJR友部駅の直径5Km圏内に、小規模工場が6ヶ所に分散していた。各工場で生産が完結せず非効率であったため、2021年4月に分散していた工場を移転・集結し、新しく本社・友部事業所としてスタートさせている。「強みは高い技術力を持っていること。」と話す斎藤社長にお話しを聞くとともに、本社・友部事業所(以下友部事業所)を取材した。


新技術に果敢に挑戦! 自動化ラインは技術のすり合わせ

外観

 キヤノンモールドは、キヤノングループ生産拠点25ヶ所、外販150ヶ所以上に出荷し、海外へは12カ国・地域に輸出している。友部事業所は主に医療機器、自動車部品、日用品、食品容器など多岐にわたる外販金型を製造しており、長年培った技術の裏付けによる提案力を基に拡大している。

 斎藤社長に自社の強みを尋ねると、「一つ目に技術力。高精度、高品質、高耐久の金型を生み出す力、品質をきちんとつくり込む技術力はどこにも負けない自負がある。二つ目に、経験と対応能力(キャパシティ)。長年にわたり、キヤノン製品のキーパーツの金型の他、幅広いジャンルの製品群の金型を手掛けてきたこと。三つ目は、新しい技術に対し果敢に挑戦するという精神。」と三つの強みを力強く述べた。

「自動化が鍵を握る」と斎藤社長

 冒頭のとおり、2021年に分散していた6ヶ所の工場を集約した狙いについて、斎藤社長は、「金型事業の拡大のために、生産性を高め、製造能力を上げることを考えた。それには〝自動化〟が鍵を握る。」と話す。

 しかしながら、金型は一品一品が違うため、それを自動化するということは非常に難しい。

 斎藤社長は、「多品種の金型部品を大量に流していくことが最大のポイントだった。」と話し、徹底的な自動化ラインを10年以上前から構築してきたという。具体的には、工作機械を並べ、後ろに搬送ラインをつくり多種類のものが流れても管理されたスケジュールの下にロボットがストッカーに向かいワークを取って指定された加工機に搭載していくラインをつくった。なお、この生産性を上げるために活用された工作機械は、牧野フライス製作所(略称:マキノ)のもの。工場内の自動化ラインはさしずめマキノストリートといったところ。

 「マキノと一緒に自動化を考えたことも大きかった。機械を入れるだけでは自動化は成り立たない。24時間、機械が働き続けるということは精度も向上させなければならず、一般的に売られている機械では厳しい面もある。」と斎藤社長。

 自動化・省人化を実現するため、マキノの機械にこだわりを見せた理由を尋ねると、「機械の操作性がバラつくのは良いことではなく、人によっては〝こっちの機械は操作できるけど、あっちの機械は分からない〟ということもある。少ない人間で仕事をこなすとなると、操作性の統一も重要な要素。」との考えを示した。

 また、「阿見事業所では、キヤノンの仕事を主体に行っていたので、対象アイテムが絞られ、工具や加工条件などの標準化を進めやすく、自動化に取り組みやすかった。単なる機械化ではなく、CAMも加工プログラムのつくり方を標準化し、手間をかけずにつくれるソフトをキヤノンと一緒に開発し、ソフトとハードの両面で刷新することで、自動化を実現した。多品種大量化を実現できた要因は、われわれの培った技術にマキノの機械・装置を融合させたことが大きい。」と加えた。

 この自動化ラインは24時間フル活動で、徹底的なリードタイム短縮と生産性向上、省人化を実現している。

 阿見事業所の経験を踏まえ、友部事業所でも自動化を推進し、自動化に見合った加工プログラムソフトを選定した。現在、人間は段取りするだけで、あとは機械が24時間稼働する自動化を実現させている。また、機械とソフトを繋ぐという点では、「工具を標準化して工具の種類を登録し、自動的に機械が工具を選定できるような制御技術を投入することも行っている。」と話してくれた。

 省人化により実現するのは原価低減だ。斎藤社長も「原価低減を実現するために自動化・省人化を狙った。人から機械へ転換していくことは私たちの大きな強みになった。」と自信を見せている。

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