ミネベアミツミ製の新設計ボールベアリングが大塚ローテック製機械式腕時計「5号改」採用

 

超精密加工技術と圧倒的な大量生産技術を持つプレシジョンテクノロジーズ事業本部

ミネベアミツミ 村山常務

 ミネベアミツミ 村山 寛 常務・ボールベアリング事業部長(以下村山常務)がプレシジョンテクノロジーズ事業本部について説明をした。この部署は同社のパワー技術である超精密加工技術と圧倒的な大量生産技術で、高精密かつ高品質な精密機械部品を製造している事業部門だ。

 大きなラインナップは、ボールベアリング、航空機用の球面滑り軸受けやエジン関連部品、ハードディスクドライブなどの記録装置の部品なども製作している。機械式腕時計、自動車、家電、産業精密機器、工作機器、医療、航空機向けの部品等、多種多様な用途向けで機械加工品、製品を、アジア、北米、欧州、合計27の工場で手がけている。

 特長は同社独自の〝垂直統合生産〟だ。それぞれの部品を内省して組み立てる一貫生産体制はもちろんのこと、生産設備、治具等、金型に至るまで自社で内省し、世界各地に展開をしており、どこでつくっても均一な品質と、それから月産3億個という大量生産を実現しているのが特長である。

 また、それぞれの用途でベアリングに求める顧客の要求に細かく応えるために、部品設計、材料、潤滑油に至るまで自社で開発している。外径22ミリ以下の小径・ミニチュアベアリングでは、全世界の60%以上のシェアを誇っている。

新設計! 世界最小ボールベアリングができるまで

田口 軽井沢テクノロジーセンター長

 同社の軽井沢本社テクノロジーセンターは、ボールベアリング事業などの機械加工品事業の研究開発拠点として2022年の3月に竣工している。機械加工製品事業が持つ製品開発技術、超精密加工技術、要素開発技術を1カ所に集約することで総合力を発揮し、新製品開発力強化により事業拡大に貢献することがミッションであり、将来的に技術者を目指す人材育成につなげていきたいという思いから、長野県内の学校を中心に社会見学の受け入れを行っている。

 今回発表された『5号改』には2つのボールベアリングが採用されているが、新たなベアリングの設計・開発をした技術責任者であるミネベアミツミ 軽井沢テクノロジーセンターの田口昌幸センター長は、「片山様からの要求に応じた仕様諸元の検討、製品製造、組み立てまで日本国内で完結するというメード・イン・ジャパンにこだわり、当社の本社工場である軽井沢工場で生産している。また、この極小ベアリングは、部品製造だけでなく、組み立てにも高度な技術が必要とされ、組み立てには社内にも数人しかない最上級の高度技能者が5号改の中で動くベアリングの機能性をイメージしながら、絶妙な感触による手組みにて製造されている。」と話した。

 秒ディスクの部分には、既に開発していた外径1.5ミリの世界最小ベアリング、もう一つの時間ディスクを回転させるローラー部分には外径2.5ミリのベアリングが使用されている。時間を正確に刻むために求められる高い精度とともに、時計内でボールベアリングの存在感が感じられるように視覚的にもバランスよく見える設計的な工夫や剛性を持たせる工夫を施した。

 この外径2.5ミリのベアリングの開発に苦労した点について田口センター長は、「世界最小サイズに続く小さなベアリングなので、内部空間が非常に小さい中で、時計の性能を満足させ、かつ生産性も考慮した内輪、外輪のボール軌道溝、ボールを保持する保持器の設計諸元を検討し、最終的にベアリング形状に落とし込んでいった。また、内輪、外輪を精密研磨する砥石や測定器、組み立て治具等も専用のものを用意し、部品加工の組み立て、製品保証検査は非常にチャレンジなものだったが、過去の世界最小のベアリングで得た経験とノウハウにより、この外径2.5ミリのベアリングの設計・開発、そして製造もスピーディーに対応することができた。」と自信を見せた。

会見の様子

 ベアリングはサイズが小さくなるほど、寸法公差や隙間の影響が相対的に大きくなる。精度や寸法管理が非常にシビアになり、製造難易度は高くなるが、「ベアリングを開発・試作する過程で、片山先生に軽井沢工場に来て頂き、5号改に対する時計師としての思いや、その特殊な構造、ボールベアリングを取り入れた理由などを、技術者、加工職人、開発職人に伝えていただいた。難しいことにチャレンジするという心意気が高まったことで実現できたと感じている。」と喜びを滲ませた。
 

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