ミネベアミツミ製の新設計ボールベアリングが大塚ローテック製機械式腕時計「5号改」採用
時計製作の苦労
大塚ローテックの片山氏は、今回の時計制作について、「サテライトアワーとは時間表示の3つの小さなディスクを衛星のように回転させて、右側にある分表示の目盛りと合わせて時刻を示す機構。そのメカを構成するギアや、ばね、ディスク、アーム、ローラーベアリングや秒表示のディスクなど、サテライトアワーの機構部品をむき出しにして、時刻表示装置としてケース内に収められた時計のデザインを目指した。ケースの縁を限界まで下に下げて、深いドーム状のサファイアガラスを採用し、横からもその構造が見てとれるようにデザインをしている。サテライトユニットを少しオフセットさせて、右側の分表示の文字盤をレイアウトすることで、ちらりと袖口から見える部分だけで時刻が分かるように右側に表示を集中させた。」と説明したあと、「ミネベアミツミ製のボールベアリングは、それぞれ外径が1.5ミリのものと2.5ミリのもの、2種類の極小サイズのものを使用している。この時計設計の段階で、外径が小さく、かつ軸受けの太いベアリングが必要だと分かり、また両ディスクの中心にも小径のベアリングが使いたいと考えていた。」と話した。
また、ミネベアミツミ製のボールベアリングを採用した経緯については、「現在、私の大塚ローテック製の時計の生産をサポートしている東京時計精密の創業者である浅岡肇氏が、プロジェクトTという名の腕時計をつくった際に、ミネベアミツミが開発した世界最小のボールベアリングを使用していた経緯があり、そのつながりを頼って改めて相談をしたところ、ミネベアミツミの皆様に力を貸していただけることになり、5号改に必要な規格のベアリングを新規で開発していただいた。」と述べた。
『5号改』のサテライトアワーの機構は30点ほどの部品で構成されているが、片山氏は、「それをモジュールとして既存のベースムーブメントと組み合わせて設計をしている。試作を進めていた際にサテライトアワーの機構上、どうしてもそのユニットを回転させるギアのバックラッシュが時刻表示のずれとして現れてしまうことが分かった。通常、歯車と歯車のかみ合わせには必ず遊びがあるので、その時によってサテライトユニットの角度位置が微妙に変わってしまい、それを可能な限り排除する必要がある。歯車同士のかみ合わせはスムーズなままバックラッシュを排除するために、1枚の歯車を薄くスライスして2枚重ねにして一体にしたものがサテライトユニットの下に入っている。その2枚の薄くスライスした歯車の1層をずらした状態で重ねていって、その間にばねが入ったものだ。モジュールの中に2重ギアを2セット組み込む必要があったが、どうしてもスペースが少ないので、なるべく薄く、この太さ0.15ミリ、長さ5ミリのばね棒を使いながら組み込んで、一対のギアの一方に回転のテンションをかけることで、全体の厚みを抑えつつ、バックラッシュによる特有の問題を解決することができた。」と製作の苦労を滲ませた。
「昨年から『5号改』の試作と量産化の準備を進めてきた。」という片山氏。量産品は、東京時計精密の時計師チーム体制で製作を行う。なお、本年2月6日から都内の原宿駅向かいにある商業施設『WITH HARAJUKU』(東京都渋谷区神宮前1-14-30)のエントランスで『5号改』の実機の展示を行う。