「TIMTOS2025」リポート ~台湾TIMTOSが30回目の節目 最大輸出先・中国から来場なく異例の開催~

 
工作機械や周辺機器を展示した南港第1と第2展示場でも来場者はまばら。

 

 台北国際工作機械見本市(TIMTOS)2025が3月3日から8日までの6日間、台湾・台北市内2ヵ所の会場で開催された。30回目の節目を迎えた今回展には、地元の台湾だけでなく米国や日本のほか、インドやベトナムなどの新興国からもバイヤーたちが来場した。台湾の工作機械業界にとり最大の輸出先、中国の不動産不況の影響が長期化し、消費低迷の影響が続く。米中と台中間の外交問題から、中国人来場者が大幅に減少するなど、過去にない異例の状況下での開催となった。TIMTOS会場で、台湾の工作機械業界が置かれた現状を取材した。【台北=是州煩太(文・写真)】

開会式で米国との親密性をアピール
 

開会式で頼清徳総統は「寒い冬を経験したからこそ、美しい花を咲かせられる。これは称賛に値する」とあいさつした。

 今回のTIMTOSは、世界18ヵ国・地域から工作機械や関連部品メーカーなど1,038の出展者が6,109小間で台北市内の2会場を埋めた。開催初日の開会式には、昨年就任した頼清徳総統が出席。「TIMTOSは台湾の機械業界にとり重要なイベントで、世界屈指のスマート・マニュファクチャリングと工作機械の展示会で、開会式に参加できて光栄だ。直近の1、2年間、工作機械や機器業界は多くの困難に直面してきた。寒い冬を経験したからこそ、美しい花を咲かせられる。これは称賛に値する」とあいさつした。
開会式で驚かされたのは、主催者の中華民国対外貿易発展協会(TAITRA、台湾貿易センター)と台湾機械工業同業協会(TAMI)のあいさつの後、米国の在台湾窓口機関・米国在台湾協会(AIT)台北事務所のレイモンド・グリーン所長が登壇して祝辞を述べたこと。事実上の米国大使の登壇だ。壇上でのテープカットや記念撮影に、各国工業会の代表者らが並ぶことはあっても、現職大使のあいさつは異例で、米国との親密な関係をアピールし、従来の中国との関係重視からの転換を内外に強調した。日本からは日本工作機械工業会の稲葉善治会長、日本工作機器工業会の寺町彰博会長らが出席した。

来場者数は異例の非公表
 

工具やツーリング、鍛圧機械などを展示した都心部にある台北世界貿易センター第1展示ホールは、展示会としては目も当て垂れないほど閑散としていた。

 メイン会場の南港区・南港第1と第2展示場では工作機械や周辺機器を中心に、展示面積が狭い都心部の信義区にある台北世界貿易センター第1展示ホールでは工具やツーリング、鍛圧機械やソフトウエアをそれぞれ展示した。

 主催者は、TIMTOS会期中に90ヵ国から前回より5.1%多い4,163人の海外バイヤーを迎えたと発表。バイヤーの上位5カ国はインド、日本、中国、韓国、マレーシアで、この他にベトナム、フィリピン、ブラジル、メキシコの代表団が調達のために参加したとしているが、肝心の一般来場者数は公表していない。過去の開催では、翌日に会場で無料配布される繁体語と英語の両言語で印刷された日刊新聞ショーデイリーで来場者数を公表してきた。理由は公表していないが、会場を見渡せば一目瞭然で、これまでに比べ来場者数が異様に少なく閑散としているからだ。これまでは会場内の通路ですれ違うのも大変なほど来場者が多かった。台北世界貿易センターの状況はさらにひどく、SOCOブランドでレーザ加工機やベンディングマシンを製造する和和機械のブースでは、あまりの来場者の少なさに、加工実演をやめた。同社は日本に営業拠点を開設しており、日本の代理店を通じてサービスやメンテナンスもしている。

 今回はなぜ閑散としているのか? 台湾と中国の両政府は新型コロナウイルス禍以来、一部を除き往来に制限をかけているからだ。コロナ禍前は、外国人来場者の2割が中国からで最多だった。今回は圧倒的にインドとベトナム、マレーシアからとおぼしき来場者が多かった。欧州勢は、台湾製工作機械のユーザーを抱えるポーランドなど旧東欧諸国からの来場者が目立った。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシアからの来場者や報道陣の姿はなかった。 

 

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