早期に定員オーバーとなってしまった貴重なコラボセミナーに特別潜入! ~三菱マテリアル×シチズンマシナリーがコラボセミナーを開催 ~切りくず絡みを抑制するLFV(低周波振動切削)技術で安定した連続加工を実現する加工のポイント~

三菱マテリアルとシチズンマシナリーが、3月12日(水)、三菱マテリアル中部テクニカルセンター(岐阜県安八郡神戸町横井)でコラボセミナーを開いた。中部テクニカルセンターは、切削加工ユーザーの技術サポートを目的に、CAM/CAE解析・シミュレーション、切削試験、切削工具の選定とその利用技術の支援や教育研修といった切削工具の総合的なソリューションを提供するとともに、オープンラボとしての機能を併せ持つ施設だ。高精度マシニングセンター、複合加工機、自動盤など、それぞれ仕様の異なる加工設備を導入している。今回は、現在、世界中の市場で生産性向上に寄与する機能として注目を集めている〝低周波振動切削技術〟(以下LFV)を有するシチズンマシナリーの『Cincom L20ⅫB5』とLFVに適した三菱マテリアルの最新工具で実加工を交えながら講義を行った。切削工具がLFVへ与える影響や、切りくず分断性やワークの違いから考える最適な切削工具について取材した。
品質と能率を動じに向上させる! LFVを搭載した機械は7,000台以上を全世界に販売

シチズンマシナリーのLFV技術は2013年から市場に投入し、2016年から『Cincom L20』に本格搭載されたことにより、一気に市場が拓け、2024年11月末現在での販売実績は世界累計7,000台を達成している。注目すべき点は「LFV起因による故障がまだ1台もでていない。」という点だ。その理由のひとつに、顧客にモニター依頼をし、1年ほど顧客に機械を貸し出して活用してもらい、それを工場に戻して実際に機械を部品レベルでバラして不具合がないかを徹底チェックしていることが挙げられる。一方、三菱マテリアル・加工事業カンパニーは、従来の加工方法はもとより、いち早くLFV技術を用いたマシンに対応する最適な切削工具の開発を進めてきたことで、工作機械のポテンシャルを最大限に引き出す『LFV 対応工具シリーズ』を市場に提供している。
セミナーは、三菱マテリアル 加工事業カンパニーの技術営業部小物高精度コマンド室江波室長の司会進行で開催され、開講のあいさつをシチズンマシナリー営業本部国内営業部の椿部長が行った。この中で椿部長は、国内市場に触れ、「ここ数年、製造業界は厳しい環境に置かれているが、私自身、全国のお客様を訪問していると厳しい中でも好調のお客様もいらっしゃる。仕事に恵まれていることはもちろんだが、部品加工において他社にはない工夫を凝らしているようだ。例えば同業他社にはない工程やプログラム等の工夫でサイクルタイムを短縮するなど、儲かる仕事に繋げるよう差別化をしている。今回はこの差別化に繋がるヒントを得て頂きたい。」とセミナー開催の狙いを述べた。

続いてシチズンマシナリーの加工技術開発室の御園室長が「LFVの優位性及び機能紹介など」をテーマに講演した。この中で、御園室長は、「現在は13機種27モデルにこのLFV機能を搭載して市場に供給しているが、世界中の市場で生産性向上に寄与する機能として弊社のLFVが認知されている。」と認知度の高まりを示した。
LFVの動作は、シチズンマシナリー独自の制御技術によりサーボ軸(X軸・Z軸)を切削方向に振動させ、その振動と主軸回転回と同期させながら切削を行う方法である。切削中に空振り時間を設けることにより、切りくずを細かく分断しながら加工する技術だ。
LFV技術を用いた加工の最大のメリットは、なんといっても切りくず絡みが解消することだ。稼働中の機械の停止時間の削減や切りくず絡みによる加工不良の削減、加工監視の負担の軽減、切りくずに起因する工具の突発的な破損等の低減が挙げられるので、経済的効果も大きい。さらに、空振り時間の発生による加工ごとの抑制にもつながり、工具摩耗の要因のひとつでもある切削温度、加工温度の上昇抑制にも繋がるという。

また、振動切削と刃物の性能を合致させ生産性を上げるLFVの加工モードは3つある。
(1)切りくずを細かく分断するLFVモード1:主軸1回転多振動
(2)周速を下げずに加工、切りくずの長さを一定長さで分断してコントロールしながら分断するLFVモード2:1振動主軸多回転
(3)ねじ切りで使用するLFVモード3:ねじ切り
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