一足早くフランクフルトで開催された『EMO ハノーバー2025』プレビューイベントを徹底レポート!

 

ダルムシュタット大学のETAファクトリー(エネルギー技術と生産応用のコンピテンスセンター)にて研究プロジェクトとは!?

 

エネルギー効率に関する産業と研究プロジェクトに注力している

 プレビューイベント2日目は、ホテルからバスでダルムシュタット大学ETAファクトリー(エネルギー技術と生産用のコンピテンスセンター)に向い、最新の研究プロジェクトを取材した。

 ダルムシュタット大学は、学生数26,000人、教授陣312名が在籍している。そのうち機械工学を学ぶ学生は3,000人。

 

 ETA研究グループは、エネルギー効率に関する産業との研究プロジェクトに注力し、資源効率の高い明日の生産への道を示す位置付けにある。製造業を取り巻く複雑な課題を解決するために、①テクノロジー、②マネジメント、③持続可能性の3つを併せた〝データ型駆動生産〟で資源効率を高め、迅速かつ的確に対応することを目的としており、産業界との交流を通して科学的手法を用いて研究上の疑問に答えるだけでなく最新の問題解決策を示し、専門家や経営幹部を育成する役目も持つ。

 エネルギー技術と生産における応用として、①戦略的エネルギー・資源管理、②生産インフラ、③エネルギーシステムの分析と最適化(生産機械)、④エネルギーが最適化された工場運営、⑤カーボンニュートラルにおけるサイバーフィジカルシステム生産について説明があった。これはらは工場全体のエネルギーシステムを建物・機械・製造インフラで連携し、デジタルと物理技術を融合して最適化する革新的なものだ。

 日本はなにかとドイツと比較されがちだが、ドイツは省エネや再生可能エネルギー利用について国が産業戦略のコアとして位置付けている。筆者が今回特に注目したのは次の通り。

■循環型経済を考慮したデジタルCO2製品パスポートの開発
 これは、製品にまつわる環境負荷や製造工程など、様々な情報をデジタル化して、製品の一生を追跡できる仕組み。モノに環境情報という付加価値をつけ、資産に変えることが狙い。ドイツでは産官学の連携で先行している。

■冷暖房システムの柔軟な運用のためのシステム
 省エネシステムがAI制御で高率的。冷暖房システムの特長は、建物の壁や天井などに極細の樹脂パイプを人間の身体を巡る毛細血管のように埋め込み、そこに温水や冷水を循環させ冷暖房を行う技術。断熱性も併せており、温度ムラが少ないので、工場にはもってこいであり、低エネルギーで安定した温度管理ができる仕組み。

■持続可能で迅速な価値創造を実現するデジタルネットワーク化された生産エコシステムの実証
 工場内の機械や空調、証明などが全てIoTで繋がり、リアルタイムでデータを見ることができ、生産状況や気温に応じてエネルギーを自動調整してくれるもので、動いていない機械の待機電力を削減したりできる。特長的なのは、異なる機械メーカーや管理システムでも〝共通のプラットフォーム〟で統合し、効率化を最大化することだ。設備で発生した熱を回収し、冷暖房に再利用し運用できる。

 今年50周年を迎える「EMOハノーバー」。世界中の製造業は現在、〝持続可能な生産〟を重要な課題として位置付けており、環境と技術革新を融合した提案が多数見られるようだ。
 

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