扶桑精工 松山社長×牧野フライス製作所 宮崎社長 ~時流に合致したビジネスとは~

 

デジタルとアナログのハイブリッド営業

 ― 扶桑精工グループでは金型だけでなく、〝リバースエンジニアリング〟にも注力しています。縁の下の力持ち的な金型メーカーでありつつ、攻めたビジネス展開をされている印象がありますが、注力したきっかけを教えてください。
 松山 今から30年ほど前から金型を納品したお客様から「機械の修理はできませんか?」と成り行き的に相談を受けたことがきっかけです。受け身の形で機械の修理、オーバーホール、部品を製作するに至りました。近年、大阪工場が主体となり図面代行サービス『アナデジ図面化.com』を立ち上げ、大手企業からの引き合いも増加しています。弊社は毎年1度、会社方針を策定していますが、その数ヶ月前に役員とテーマを決めるためのディスカッションをします。その時に役員からリバースエンジニアリングというキーワードが出てきました。リバースエンジニアリングに本格的に着手したのはこの時からです。
 宮崎 すでに製造中止になった製品を分解して仕組みを調べることで、製品の部品の図面も製作できるのですか。
 松山 機械の一部が壊れた場合、壊れた部品だけを修理する、もしくはモノを作らなくても図面だけを起こすなどのニーズがあったのです。「海外から何十年も前に輸入しました。」や、「国内で80年ぐらい前に買った機械です。」となると、すでにメーカーが存在していないことがあります。現物はあるけれど図面がないという状態になるので、図面だけ作ってほしいというニーズに応えるうち、少しずつお客さまからの引き合いや問い合わせが多くなったので、これが第4の柱になるという思いから始めました。
 宮崎 営業もITを活用して展開しているのですか。
 松山 現在、ネット営業、対面営業とも注力しています。ネットではピークで月間6,000件ほどアクセスがあります。もちろん、検索上位に引っかかるようにSEO対策も推進しています。一方で対面営業も注力しており、こちらは基本的に〝どぶ板営業〟です。弊社は78年前に妻の祖父が創業した会社ですが、実は私、もともとは銀行出身です。新規の飛び込み営業担当で、1日10社訪問することを目標に走り回っていました。この経験から得られたことは、電話やメールだけでは得られない情報が会話や現場の視察から拾えることです。先日も川口に行って、炎天下の中、熱中症にならぬようアイスを口に入れながら外回り営業に走っていたら激しく日焼けをしてしまいました(笑)
 宮崎 素晴らしいです! かつては大量生産が中心で、仕事が自然に入る時代もありましたが、今は能動的な営業活動が受注につながると実感しています。
 松山 弊社は、従来、取引のあるルート営業が基本でしたから、本当の意味での営業を実行してこなかった。資産である人や技術があっても、それをどう売るか、という力が不足していた。中小企業は、規模の経済を動かせてコストダウンをする生産体制は、大手企業と比べて資本力と規模が違い、合いません。弊社は中小企業ですので、大企業が引き受けたがらない一品一様の面倒臭い仕事を引き受けていくというスタイルです。金型業界で飛び込み営業を実行する企業は非常に少ないのですが、デジタルと超泥臭いアナログのハイブリッド営業で頑張っています。

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