サンドビック・コロマント・ジャパン 髙宮社長に聞く 「競争力の源泉はオープンカルチャー」

スウェーデンに本社を置くサンドビック・コロマント・ジャパン(カンパニープレジデント=髙宮真一氏)は、世界規模で教育・トレーニングネットワークを持ち、安定的な技術サポートを提供している。顧客と加工ノウハウ等の知識を共有する〝オープンカルチャー〟を重要視しており、顧客やパートナー企業とともに成長する姿勢で世界中から信頼を集めている。現在、髙宮氏の強力なリーダーシップのもと、より迅速な意思決定でさらなる体制強化を図り、日本市場における販路拡大に取り組んでいる。
ビジネス最前線に立つ髙宮カンパニープレジデントにお話しを伺った。
― 現在の景況感はいかがですか。
髙宮 EV需要も根強く、現在、半導体、航空機、エネルギー向けの需要の回復が見られており、国内外でも自動化や省人化に向けて活発な動きを感じます。今年の春にオンラインで開催した「コロマント会ストラテジックカンファレンス」でも述べましたが、国内製造業の復活と再生に期待しつつ、常に業界の最先端を行く活動と提案を強化することでお客様やパートナー企業とともに持続可能な組織を目指して頑張っています。
― カンパニープレジデントに就任されてからちょうど2年が経過しました。特に会社の成長において注力していることはありますか。
髙宮 これは弊社の昔からの文化になりますが、〝オープンカルチャー〟です。お客様とわれわれの加工ノウハウや情報を開かれた形で共有し、活用する考え方ですが、デジタル化・省人化・自動化はもちろん、製造業を取り巻く技術の進化は極めて速いため、社内外で知識やノウハウを共有することで新たな価値を作っていくことに重点を置いています。加工現場の改善事例、加工条件などをクローズにせず、可視化できれば成長スピードを加速することができます。情報を共有する文化によって現場の創意工夫が生まれてくると感じています。
― 昔の製造業といえばノウハウは出さず、人も情報共有に慎重でリスクを避ける傾向が感じられました。
髙宮 オープンな職場だと意見交換も活発化しますし、学んだことを共有できます。また、現在、SDGsの観点から、Co2排出量やエネルギーの使用量の削減が求められ、サプライチェーン全体でデータをオープンにして共有しなければ、サステナビリティ目標を達成することができません。弊社は世界中で切削工具を販売するだけでなく、CO2排出削減を目指すとともに循環型生産をリードしています。そのため加工現場のデジタル化・自動化・見える化を推進しており、お客様とともに成長する姿勢を持っています。
最も効率的な成果を出すために
― 貴社は世界最大の切削工具メーカーであり、デジタル化も進んでいます。企業運営においても特長的なことはありますか。
髙宮 私は「最大限のオペレーション」という言い方をしていますが、現在、労働人口の減少もある中で、人や設備、時間などを最大限に活かして最も効率的に成果を出せるようにデジタル化はもちろん、最近では生成AIを活用しています。データ作成、データ分析、設計などの効率を上げることによってユーザー様や販売店様へのサービスレベルを上げることが目的です。スウェーデン本社ではすでにAI技術を活用してお客様との対話を自動化するAIコンシェルジュ的な対話システムでお問い合わせなど一部の業務を効率化しています。
― 日本ではいかがですか?
髙宮 日本ではAIが応えると、なんだか冷たいな、という印象を与えてしまうこともあるでその点は注意をしなければならないと思っています。
― どの業種でもそうですが、人材が効率良く働くということは、案外難しいことだと思います。
髙宮 営業担当者であれば業務時間の約3分の1は移動を含め車の中にいると思います。そのうえ、お客様に説明するための資料も作らなければならないのですが、最も重要なのはお客様への加工改善提案なので、このための時間を増やせるよう努力しています。
― 貴社は切削工具を提供するのみならず、加工プロセス全体の改善提案まで行っていますから営業担当者の力強さを感じます。
髙宮 製造現場にとって切削加工におけるスピードや精度は直接製造コストに影響しますから、加工改善を提案する営業担当者は重要な役目を担っています。日本の場合、高く評価してくださる方もいれば、製品価格が高価だというイメージしか持たない方もいます。われわれは、スピンドル、ベーシックホルダーから刃先、ハイスから超硬まで全てを一貫して揃えられる唯一のメーカーです。加えて、サンドビックがグループとして手掛けるMastercamやGibbsCAMなどを含め、システムと加工による一体的なサービスも提供できます。このため技術的にも高度なスキルを持つ人材が在籍していることは我々の大きな強みです。


