佐野社長率いるCAMSUPS(キャムサップス)がいよいよ始動! ~ENCY Software(エンシーソフトウエア)社製の CAD/CAMが日本上陸~

工作機械業界がNC化へ大きく舵を切った1970年――――。
その転換期に、コンピュータ端末機のメンテナンス会社としてJBMを立ち上げたのが、佐野泰治氏である。やがて1980年代に入りNC機が普及しはじめると、製造現場ではCAD/CAMの活用が本格化した。その変革の波をいち早く読み取った佐野氏は、1990年代前半、緒に就いたばかりで日本における販売の伸び悩んでいた「Mastercam(マスターキャム)」に目をつけ、日本市場へ導入を進めた。コンピュータにも製造現場にも強く、さらに海外CAD/CAMの先端技術にも精通していた佐野氏だからこそ成し得た“先手”だった。その佐野氏がこのほど新たにCAMSUPS(キャムサップス)(本社:横浜市都筑区荏田)を立ち上げた。ENCY Software(エンシーソフトウエア)社製 のCAD/CAMを日本に上陸させ、再び市場に新風を吹き込む――――――。
佐野社長と鳥羽副社長に、CAMSUPS設立の背景、そして市場への挑戦に懸ける意気込みを伺い、2026年1月に販売開始のENCY製品が持つ強みを紹介する。
苦渋の決断と巡り合わせ
― CAMSUPS設立おめでとうございます。2025年7月をもってMastercamの販売を打ち切った理由を教えてください。
佐野 Mastercam は当初、日本市場の“永久ライセンス文化”に配慮し、買い切り方式の取り扱いを認めましたが、その後、CNC社が当社に対してサブスクリプション(サブスク)に注力する方針へ大きく舵を切り、永久ライセンスのものは販売できないことになりました。日本では「買って自分のものにしたい」という所有志向が強く、機械やソフトを10年以上使い続けるケースも珍しくありません。そのため、サブスクは〝支払いがずっと続く〟という印象があり、長期運用が前提の製造業では割高に見えがちです。サブスク一本化は、ユーザーの選択肢を狭めてしまう可能性があるので、こうした状況を踏まえ、本年7月末をもって Mastercam 製品の販売を終了する決断を下しました。
― 苦渋の決断だったのですね。
佐野 最初は“しょうがないなあ”という気持ちでした。私も今年で84歳。そろそろ身を引いてもいいのでは、と考えていたのです。ところが社員から「せっかくここまで来たのですから、新しいことを始めましょう!」と力強い声が上がりました。鳥羽たちも情報を集めるために奔走し、ENCY Software社に目を付けたのです。
鳥羽 すぐに佐野に報告したところ、その翌日にはWeb会議をするほどトントン拍子に話が進みました。
佐野 実はこのWeb会議の最中に、思いも寄らないことが起きました。なんとENCYに私のことを知っている方がいたのです。画面越しに映った私の姿を見た瞬間、驚きと喜びが入り交じったような反応を見せてくれました。ここで距離が一気に縮まり、画面上とはいえ、互いの熱量が高まったのです。そうして弊社の技術部隊も1カ月ほどENCY製品をいじり倒して毎日のように先方とやりとりをしているうち、9月はドイツでEMOショーがあったので、鳥羽と技術部隊に現地へ飛ぶよう指示をしました。
鳥羽 ちょうどEMOショーで ENCY の新バージョンが発表されるという話を聞いていました。私たちもドイツに飛び、企画書を携えてプレゼンに臨んだところ、結果は見事に成功しました。これは何より長年にわたり業界に貢献してきた佐野のネームバリューが後押ししてくれたのだと思っています。帰国後、大阪事務所に社員全員が集結しました。Web越しでENCY社の社長をはじめ主要メンバーも参加して、契約の最終確認を行い、双方でサインを交わしました。


