ナガセインテグレックス 製品で示すトップのビジョン ~成長戦略と技術力に迫る~
昨年、会社設立70周年(創業75年)を迎えたナガセインテグレックス(本社・岐阜県関市、社長COO=新藤良太氏)が、新たな体制へと舵を切った。昨年、前社長の長瀬幸泰氏が会長CEOに、技術畑を歩んできた常務の新藤氏が社長COOに就任した。
なお、長瀬会長は永年にわたる業界への貢献と、ものづくりを通じた社会的価値の創出が改めて公の場で認められ、令和7年秋の叙勲で旭日単光章を受章した。長瀬会長と新藤社長に、今後の成長戦略や経営思想、注目製品の強みについて話を聞いた。
創業の精神を未来へつなぐための選択
創業以来、「顧客志向」「創意工夫」「独創技術」の三つを理念に掲げ、「世の中にないものは自分たちでつくる」という開発姿勢のもと、独自の要素技術を長年にわたり蓄積している同社。今回の組織変更の背景について、長瀬会長は静かに一貫した思いを語った。
「弊社では月に一度、全体朝礼を行っていますが、実は15年ほど前から、私の次の社長は、創業者の血筋ではない人に就任していただく、と話してきました」と話す。その言葉は、決して突然のものではなく、長い時間をかけて社員に伝え続けてきた覚悟だったという。
長瀬会長は、創業者が築いてきたものづくりへの理念や企業観は、大切に継承されるべきだとした上で、「会社を社会の公器として考えたとき、経営を担うのが必ずしも創業者一族である必要はありません」と語る。世代の巡り合わせや時代の要請を見極めながら、「その時々で最もふさわしい人材にバトンを託すことこそが、企業を次の成長へ導く」との信念を滲ませた。
血縁にこだわらず、理念を重んじる経営を貫く姿勢を見せた長瀬会長。なぜ、このタイミングで社長交代に踏み切ったのかを尋ねると、「もう一度、原点に立ち返り、会社経営のあるべき姿を見つめ直したい。その思いを社員一人ひとりと共有し、新たな改革を実行していくためには、組織の変更も必要だと判断しました」と話したあと、創業者の言葉を引き合いに出し、「創業者は常々、『経営者はどんな立場や役職になろうとも、死ぬまで会社に対する責任は持つべきだ』と話していました。その考えは、私自身も肝に命じて受け継いでいます。会社に関わる全ての責任は、私が生きている限り最終的に負う覚悟です。そうした思いから、最高経営責任者であるCEOの役割は引き続き担います」と述べ、揺るぎない決意を示した。
今回の決断は、単なる人事や制度の見直しではなく、創業の精神を未来へつなぐための選択だった。企業が永く社会に必要とされ続けるために――――。
なお、長瀬会長は令和7年秋の叙勲で旭日単光章を受章している。受章の感想を問うと、「今日があるのはひとえに皆様方のお力添えのお陰です。私自身にとっては身の余る名誉であり、個人として栄誉を頂いたという思いはありません。ただただ感謝の気持ちでいっぱいです」と謙虚に語り、関係者へ深い感謝の意を示した。
理念を継ぐ ~規模は追わないが感動は追い続ける~
長瀬会長からバトンを受け取った新藤社長は、長年にわたり研削盤の制御設計に携わってきた生粋の技術畑だ。現場で機械と向き合い続けてきたその歩みが、いま経営の中枢へとつながっている。
新藤社長は自身の体験として、かつて採用活動の最前線に立っていた頃を振り返る。「一時期、リクルートの矢面に立っていたことがありました。ものづくりの会社ですから、技術の面白さを正面から伝え、学生に理解してもらおうと説明してきました。そのなかで、私の話を聞いて入社を決めてくれた人もいたのです」と語る表情には、責任の重みがにじむ。
「その人の人生を、自分の言葉で左右したのだと強く心に残っています。だからこそ、NAGASEに入社して良かったと、心から思ってもらえる会社にしたい」(新藤社長)
もちろん、思いだけで経営は成り立たない。「業績の向上は当然、追い続けなければならない課題です」と語る一方で、同社が貫いてきた哲学にも言及する。「弊社は超精密工作機械メーカーであり、先代から一貫して『規模は追わない』というポリシーがあります」と話した。
リーマンショックという未曽有の経済危機においても、多くの企業が赤字に転落するなか、同社は黒字を維持し、乗り切った。「限られた人材の中で効率を高め、真に価値のある製品とサービスを提供してきた結果だと思っています」と、理念を継承していく構えを示す。
新藤社長が見据えるのは、数字だけでは測れない価値だ。「お客様に感動していただける製品、サービス、そしてソリューションを提供すること。その先にあるのは、顧客満足に留まらず、従業員一人ひとりが誇りとやりがい、そして感動が持てる会社です」という。
「現在、若手の技術者も育ちNAGASEの将来は明るい。実は、今から十年ほど前に会長が全体朝礼のとき、社員を前に『10年後に給料を2倍近くにする』と宣言しました(笑)。10年という期限では達成に至らなかったものの、現在は商品力、技術力で確かな差別化ができていますので、もはや遠い夢ではありません」と自信をみせる。
技術者として現場を知り、人の人生の重みを知る新藤社長。その言葉の端々からは、NAGASEを“働く人にとっても誇れる精密機械メーカー”へと進化させようとする確かな熱意が伝わってくる。



