ナガセインテグレックス 製品で示すトップのビジョン ~成長戦略と技術力に迫る~
自動化・AIで超精密加工の未来を先取りする
かつて、砥石のバランス修正や砥石軸を下げてワークに当てる作業は、熟練者でなければ成し得ない高度な技能とされていた。ところが同社では、こうした難作業を自動化する技術の芽を、実に40年以上も前から地道に育ててきた。その結晶の一例が、高精度な砥石の動バランス測定・修正システム「バランスベクター」である。
「バランスベクター」は、砥石のアンバランス位置を高精度に計測・表示する検出器で、これと連動する自動修正装置「バランスドクター」は、使用回転域において砥石フランジのポケットに水を噴射し、バランスを補正する仕組みを備える。当時としては前例のない発想で、「そんなことができるはずがない」と非常識扱いされることも少なくなかったという。
このバランスベクターは時代とともに変化を遂げている。現在、バランスだけでなく、温度や振動といった各種データを計測できるようになり、機械に取り付けるセンシング機能を共通のハードウェアで実装し、さらにBluetoothなどの無線通信を活用することで、測定データをリモートで取得することも可能になった。ネットワークに接続すれば外出先からでも機械の状態を確認でき、離れた場所にいてもマルチメーターで確認できるまでに進化しているのだ。
長瀬会長は当時を振り返り、「NAGASEの常識は業界の非常識と言われ、正直ウケは良くなかった」と笑う。しかし現在では、機上での使用回転数における動バランス修正も、砥石をワークへ自動にて当て込む技術も、業界でも当たり前の存在となっており、同社の先見性が時代を大きく先取りしていたことが証明されている。
こうしたことからも分かるとおり、技術の先取りは同社の最も得意とするところだが、昨年10月に名古屋で開催された開催された「メカトロテックジャパン2025(以下MECT)」では、なんと、〝加工中の砥粒の状態がリアルタイムで分かる〟技術を披露し、来場者や業界関係者を仰天させた。
半導体静電チャックや絶縁基板などに使われるアルミナセラミックスを、ロータリー研削盤『RG-700』で実加工したのだが、加工前後の仕上がりだけを見るのであれば、一般的なデモ加工と大きな違いはない。しかし、今回の実演で注目を集めたのは、クーラントのかかった〝加工中〟の砥石表面を、業界で初めて可視化した点にある。
「RG-700」の砥石カバー上部には専用ボックスが設置され、その内部にカメラユニットを搭載。AI砥面観察システム「GRIDE EYE(グライドアイ)」は、砥石表面を捉えるカメラユニットをはじめ、照明用電源、光電センサ、ターミナルボックス、撮影・画像処理・比較用PCなどで構成されている。MECTでは、クーラントが噴射される加工中の状態で砥面を観察するという、これまでにない試みが披露された。
通常、クーラントがかかった状態では砥面の視認は困難とされてきた。しかし同システムでは、撮影した画像を生成AIで処理することで、あたかもクーラントがかかっていないかのように砥石表面の状態を鮮明に再現することを可能にした。

新藤社長は、「生成AIを活用した画像処理技術として、手応えは十分に感じている」と語る。加工中の砥面が“見える”ことの意義については、「これまで砥粒の脱落や目詰まりが、いつ、どのように起きたのかは経験則でしか分からなかった。しかし可視化できれば、砥粒変化のタイミングが明確になる」と説明する。
従来はドレスのタイミングを経験で判断していたため、タイミングが遅くなり過剰にドレスを行えば砥石やドレッサーの無駄な摩耗を招き、ワークの焼けを招いていた。加工中の砥面状態をリアルタイムで把握できれば、切れ味の低下をその場で判断でき、最適なドレスを無駄なく行うことが可能になるという。
同社が見据える最終目標は「機械の完全自律制御」だ。加工中の砥面状態をAIが判断し、その結果をもとに機械が自律的に制御を行う――その実現に向け、現在も開発を進めている。

また、砥面観察システム「GRIDE EYE」で使用するAI処理ソフトウエア「PICMOBOX(ピクモボックス)」も自動化には欠かせない存在だ。撮影した膨大な画像データをAIに学習させる際、煩雑になりがちなデータ振り分け作業を効率化する汎用ソフトとして機能する。より高精度な判定を行うためには継続的な学習が不可欠であり、その負担を軽減する仕組みづくりにも力を注いでいる。
加工現場で「見えなかったもの」を可視化し、次の自動化・自律化へとつなげるナガセインテグレックス。その技術開発の底力は、研削加工の未来を切り開く存在として、今後ますます注目を集めそうだ。



