機械振興協会 「第60回機械振興賞」表彰式を開催 ~過去の貴重な受賞製品も展示~

 

歴史は物語る! 技術の力で難題に挑んだ「郵便区分機」と「CVCCエンジン」

郵便自動化機器

 

  先述のとおり、今回は60年の節目もあり、過去に受賞された貴重な機械製品がズラリと展示してあったが、ほとんどが写真撮影NGだったため、特別に2点、許可を頂いた〝有名なもの〟を紹介する。

 1969(昭和44)年の「第4回機械振興協会賞」を受賞した『郵便自動化機器(選別機、押印機、自由手書郵便番号自動読取り区分機)の開発と実用化』。当時の社名は東京芝浦電気(株)〈現:(株)東芝〉が開発したものだ。

 郵便番号制度が実施されたのは1968(昭和43)年。当時は郵便物の取扱量が急増する一方で、労働力不足も懸念されていた。しかも、日本の郵便物はサイズや形状が多様で、宛名や郵便番号も手書きが主流。機械化による合理化は容易ではなかった。そうした難題に挑み、郵便局内で行われていた選別・押印・区分といった一連の作業を自動化・合理化することを目指して開発されたのが、この機械である。

 この機械の核心は、郵便物の厚さや固さを瞬時に判別し、高速で選別する機構にある。郵便物を同一方向に整序しながら、高速かつ正確に押印を行う。さらに、自動連結器によって選別機と押印機を自動的に接続し、一連の処理工程を無人で連続的に進めていく仕組みだ。

 加えて、郵便番号自動読取区分機が自由手書きの郵便番号を光電変換によって読み取り、宛先ごとに自動で区分する。こうして実現した処理能力は1時間あたり3万通(毎分500通)。人手に頼っていた作業を大きく効率化し、郵便業務の生産性を飛躍的に高めた。

 多様な郵便物、手書き番号という日本特有の条件を乗り越えたこの機械は、まさに日本の郵便事情を技術の力で突破した象徴的な存在といえる。ちなみに1992(平成4)年の「第27回機械振興協会賞」では、従来の郵便記入枠に頼らず人によって記載された手書き・印刷の「あて名」を直接読み取る新たな制限なしに画期的な自動区分システム『郵便物あて名自動読取区分機の開発と実用化』〈受賞当時:郵政省 郵務局 現:日本郵政(株)〉を受賞している。こうしてどんどん自動化が進んでいったのだと思うと、感慨もひとしおである。

 続いては、筆者の著書「機械ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)の一節にも触れた、ホンダCVCCエンジン! 

 

世界で初めて厳格なマスキー法の規制基準をクリアしたホンダ「CVCCエンジン」

 

 日本でも1960年代後半からモータリゼーションが一気に加速した。国民のおよそ1割が自動車を保有するようになり、まさにクルマ社会の幕開けである。だが、その発展の裏側では、自動車交通による大気汚染が社会問題として浮かび上がっていた。日本では自動車の有害ガス排出規制や大気汚染防止法が制定され、高度経済成長の陰に潜んでいた〝公害〟への対策が急務となったのである。

 一方、アメリカでは光化学スモッグなどの大気汚染がすでに深刻化していた。こうした状況を受けて1970年、同国は自動車排出ガスの9割削減を求める、極めて厳しい規制として知られる「マスキー法」を成立させる。あまりに高いハードルに、地元アメリカのビッグスリーをはじめ世界の自動車業界から「実現は不可能だ」と反対の声が上がった。

 そんな最中に、「車が空気を汚しているのなら、それをきれいにするのが技術者の役割」と立ち上がったのがホンダだった。同社は以前から進めていた研究を一気に加速させ、試行錯誤を重ねた末、1972(昭和47)年にCVCC(複合渦流調速燃焼方式)エンジンの開発に成功する。世界で初めて、この厳格な「マスキー法」の規制基準をクリアした瞬間だった。

 今回展示されていたのは、1973(昭和48)年に「第8回機械振興協会賞」を受賞した、(株)本田技術研究所のCVCCエンジンである。このエンジンは、自動車排気ガスに含まれる有害物質を、従来のように後処理装置に頼るのではなく、エンジンの燃焼プロセスそのもので抑制するという画期的な発想から生まれた。しかも燃費や運転性能を犠牲にすることなく、クリーンエンジンを実現してみせたのである。

 この成功を機に、日本の自動車業界は低公害車の開発へと一斉に舵を切る。技術開発競争は一気に加速し、日本車の国際競争力を押し上げていったことは言うまでもない。

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