微細加工の限界に挑むMOLDINO野洲工場 金子社長に聞く
削るだけで仕上がる! 金型の寿命を延長させるために
古野開発技術部長に最近の金型加工のトレンドについて訪ねると、現場では大きく二つの潮流があるという。一つは金型寿命の延長、もう一つは鏡面レベルの高品位仕上げだ。
「金型の寿命を延長させるという観点では、材料開発が進んでいます。鋼材メーカーは各種添加元素を活用し、硬さに加えて靱性を高めた、いわゆる〝粘硬い〟鋼材の開発を推進しています。従来から用いられているSKD11やSTAVAXなど、52HRCを超えるものの採用も多い。」(古野開発技術部長)
しかし、これらのトレンドは工具側にも新たな課題を突きつける。靱性を併せ持つ材料では刃先への溶着や変形が発生しやすい。こうした難削化に対応するため、工具メーカーには一層高いレベルの性能が求められており、開発競争は激しさを増している。
一方、鏡面仕上げのニーズは、「特にプラスチック金型分野で顕著。」と古野開発部長。「製品の意匠性を左右する面品位への要求は年々高まり、加えて成長が見込まれる光学レンズなどの分野でも小型化・微細化と相俟って極めて高精度な加工が不可欠。」と話す。ここでも加工難易度は一層上昇しているのだ。
本来、鏡面加工は加工後の手磨きによって仕上げる工程が一般的だが、この手間と時間は顧客にとって大きな負担となる。だからこそ今、切削加工の段階でいかに高い面品位を実現できるかが問われている。
削るだけで仕上がる―――――。その理想にどこまで迫れるか。金型加工の最前線では、工具性能が新たな価値創出の鍵を握る。
同社ではこうした顧客の要望に応えるべく、〝超硬を超える超硬〟を掲げた高硬度鋼加工用超硬ボールエンドミル IXエポックディープボール『IX-EPDB-TH3』を昨年市場投入し、多くの反響を呼んだ。技術のキモは、超硬合金を構成する炭化タングステンの微細化にある。粒子を従来よりも細かくすることで硬さを一段と高めたのだ。また、調合では粒成長を抑制するための添加元素を加える手法が一般的だが、この添加元素が工具表面に付着しやすく、クラックが発生する原因になるなど、性能面での課題を引き起こしていた。そこで、同社ではこの課題をクリアするため、添加元素を最適化し、タングステン粒子周囲への偏析を抑制することで靱性向上を実現している。これにより従来は刃先の変形や欠損、溶着が課題となっていた〝粘硬い〟被削材に対しても安定した加工と工具の長寿命化が可能になったのだ。超微細な組織制御技術によって、工具にも硬さと靱性という相反する特性を高次元で両立した点に価値がある。



