「現場変革の担い手へと進化」 北川鉄工所 キタガワ グローバルハンド カンパニー 松葉社長に聞く

旋盤用チャックでは国内シェア約7割―――――――。北川鉄工所(本社:広島県府中市)のグローバルハンドカンパニー(上席執行役員・社長=松葉範仁氏)が持つ最大の強みは、「掴む」というコア技術を極め抜いてきたことにある。
圧倒的なブランド力と実績の裏にあるのは、自社工場内にて鋳造から高精度加工まで一貫生産体制を確立している確かな技術基盤。さらに世界に広がる拠点網を活かした迅速な供給体制がその価値を一層高め、現在、その枠を超えてロボットハンドやNC円テーブルを組み合わせ、自動化・省人化までを見据えたソリューションを顧客に提案している。単に製品を提供するだけにとどまらず、顧客の生産性を引き上げる“現場変革の担い手”へと、その進化は止まらない。松葉社長にお話を聞くとともに、最新の工場内を取材した。
需要が読めた時代から、需要を創りにいく時代へ
ご承知のとおり、戦後の日本経済を力強く牽引してきた自動車産業は、高品質・低コストという圧倒的な競争力を武器に世界市場を席巻してきた。裾野は広く、その存在感の大きさに産業構造そのものが強く依存してきたが、今や、その前提が大きく揺らいでいる。
技術の視点で見れば、その変化はより鮮明だ。かつて主役だった内燃機関は、電動化の進展によって構造自体がシンプルになり、部品点数は大幅に減少した。これはサプライチェーンの再編だけでなく、加工技術や生産現場のあり方そのものに変革を突きつけている。
こうした変容は、製造現場の最前線にも確実に波及している。松葉社長は、「自動車にとどまらず、半導体や医療といった成長産業にも目を向け、積極的にアプローチしています。おかげさまで引き合いは着実に増え、これまで見えなかった需要や可能性が、少しずつ輪郭を持って見えてきました。」と話す。
かつての自動車産業は、年々着実に成長し、需要の見通しも立てやすかったため、多くの製造業は、自動車向けを前提に加工技術や生産体制を磨き込み、最適化を突き詰めることで進化してきたが、現在、クルマはEV、ハイブリッド、水素といった複数が並走し、技術の主軸が定まらない。内燃機関を前提とした精密加工や部品供給の構造は揺らぎ、求められる技術要件も大きく変わり始めている。加えて、市場そのものも不透明だ。どの方式が主流になるのか、何がどれだけ売れるのか、その予測はこれまでになく難しい。さらに若年層のクルマ離れも重なり、需要構造そのものが変化している。
こうした環境下で、製造業で活躍している営業もまた転換を迫られている。自動車産業を基盤としながらも、半導体や医療、航空、宇宙といった成長分野にも目をつけ、活路を見出そうとする動きが加速しているのだ。
この現状について松葉社長は、「今は従来の経験則に頼った営業に限界があります。とはいえ、簡単に“成長産業に参入しよう!”とハッパをかけても、現場の担当者がすぐに動けるわけではありません。そこで当社では、お客様とのやりとりを社内で徹底的に共有し、営業一人ひとりの悩みや課題を解決できる仕組みをつくりました。」と話す。
この仕組みを担うのが、SFA(Sales Force Automation)だ。同社では単なる営業管理ツールにとどまらず、活動データを蓄積・可視化し、組織全体の“知”へと昇華させる基盤として機能する仕組みを社内で構築したのだ。
「誰が、どの顧客に、どんな技術提案をしているのかと、そのプロセスをリアルタイムで共有することで、属人化していたノウハウを展開できます。経験の浅い担当者でもベテランの知見に触れられる。誰でも同じレベルで考え、動ける状態をつくることが営業部門全体の底上げにつながるのです。」(松葉社長)
需要が読めた時代から、需要を創りにいく時代へ。営業もまた、過去の経験だけにとどまらず“データの共有知”へと進化し始めている。松葉社長は、自社内で共有している情報が〝価値を生む状態〟として常に進化していることを示してくれた。



