三菱マテリアルの取り組み 超硬スクラップが〝鉱物資源〟に ~タングステン供給リスク時代に挑む製造業の資源循環~ 

 
タングステンカーバイト粉


 タングステンは切削工具や金型材などに用いられ、製造基盤を支える重要な鉱物資源だが、近年、中国による輸出管理強化を背景に、中間原料であるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)の価格が急騰し供給リスクが高まっている。APT価格の上昇は、原材料コストの増加や収益の圧迫だけでなく、製品の安定供給にも影響を及ぼす懸念もあることから、製造業にとっては悩ましい問題だ。しかも、タングステンは代替材料の実用化が難しいことから、現在、使用済み工具の回収・再資源化の重要性が急速に高まっている。

 こうした時流を背景に、三菱マテリアル(社長=田中徹也氏)は使用済み超硬工具やその研削くずなどから出る超硬スクラップを回収して再び超硬工具へと戻す資源循環サイクルを構築。2024年には世界有数のタングステンメーカーであるH.C.Starck(エイチ・シー・スタルク)を買収し、欧州・米国・中国の生産拠点と世界最大級のリサイクル能力を取り込み、資源循環を軸に競争力を高める企業へと進化している。

タングステン確保は製造業の課題 

 レアメタルであるタングステンは、生産国が限られていることから、各国の輸出政策や資源戦略の影響を受けやすく、安定確保が難しい資源の一つである一方、高度な加工技術を強みとする日本は、世界でも有数のレアメタル消費国だ。自動車、航空機、半導体関連など、さまざまな産業分野で高精度な部品を製造するためには、切削加工が不可欠であり、その現場を支えているのが超硬工具である。

 超硬工具の性能を支えるのが、タングステンを主成分とする〝超硬合金〟だ。超硬合金は、ざっくり言うと、レアメタルであるタングステンからなる炭化タングステンに、結合材としてコバルトを加え、焼結によって形成された合金である。この優れた材料特性により、超硬工具は高い硬度、耐摩耗性、耐熱性を発揮する。ドリルやチップなどの超硬工具はタングステンのお陰で過酷な加工環境下でも安定した性能を維持し、製造現場の品質と生産性を支えているのだ。

 つまり、タングステンは単なる素材ではなく、現代の製造業を支える加工技術の根幹を担う重要資源なのである。

 しかし、その安定確保を取り巻く環境は大きく変化している。背景にあるのは、中国によるタングステンの輸出管理強化やAPT価格の急騰だ。超硬工具の主原料であるタングステンは、中国に大きく依存しており、地政学リスクや資源ナショナリズムへの対応が企業経営における重要課題となっている。

 こうした環境変化は、「原料を購入する」という従来の調達概念にも変革を迫っている。

 そこで注目されているのが、超硬スクラップのリサイクルである。

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