三菱マテリアルの取り組み 超硬スクラップが〝鉱物資源〟に ~タングステン供給リスク時代に挑む製造業の資源循環~ 

 

有価スクラップから鉱物資源へ! 超硬リサイクルの必要性

超硬リサイクルの進化について説明をする長谷川室長

 超硬スクラップは、1930年代から〝有価スクラップ〟、つまり価値ある資源として取引されてきた。しかし近年、その位置付けは大きく変化し、現在では、製造業の競争力や安定供給を支える〝鉱物資源〟として、その重要性が高まっている。

 かつては経済合理性の観点から回収されていた超硬スクラップだが、現在では資源安全保障の観点からも重要な意味を持つ。使用済み超硬工具やその研削くずなどを回収し、含有するタングステンを再生して、再び切削工具の原料へ戻す――。こうした資源循環の仕組みが機械工具業界を挙げて強力に推進されている。

 市況価格の変動や供給不安の影響を抑えながら、安定した原料調達を可能にする超硬リサイクル。超硬スクラップはもはや廃材ではなく、将来の生産活動を支える重要な資源へと変貌しているのだ。

 その象徴ともいえる取り組みが、2024年に実施された三菱マテリアルによるH.C. Starckの買収である。同社は、世界最大級のタングステンリサイクル能力を持つH.C. Starckの技術・設備を取り込み、資源循環を軸とした安定供給体制の強化を進めている。これは単なるリサイクル事業の拡大ではなく、将来的なタングステン確保に向けた戦略的投資と位置付けられる。

 同社による近年の超硬リサイクルの進化について、三菱マテリアル 超硬製品事業部 製造戦略部 原料・リサイクル室の長谷川室長は、「1930年代から有価スクラップとして回収されていた超硬リサイクルですが、原料である〝粉〟の状態まで戻すリサイクルは2000年代以降に本格化しました。2001年には当社グループの日本新金属の秋田工場でリサイクル事業を開始、2024年にH.C. Starckを買収しました」と説明する。

超硬リサイクルの歴史について話す中村氏

 また、同部署の中村氏は、超硬リサイクルの歴史について次のように補足する。

 

「タングステンは昔から有価物として認識されており、超硬工具に使われるようになってからも、超硬合金のスクラップをそのまま産業廃棄物として処分することはありませんでした。当時から溶解工程などを通じて再利用されていましたが、それは必ずしも〝超硬工具の原料〟へ戻すものではありませんでした。2000年代以降、技術の進展や資源循環への意識の高まりによって、『タングステンを再び超硬工具として利用できる状態まで戻すべきだ』という流れが生まれ、現在の超硬リサイクルにつながっています」。

 

MOLDINO