三菱マテリアルの取り組み 超硬スクラップが〝鉱物資源〟に ~タングステン供給リスク時代に挑む製造業の資源循環~ 

 

世界トップを走るリサイクル技術とは!?


 

日本新金属


 

H.C. Starck

 先述の通り、同社では、タングステンの精錬を担う企業として、日本新金属とH.C. Starckの2社を有している。H.C. Starckはドイツ、カナダ、中国に拠点を展開しており、このうちタングステンリサイクル能力を持つのがドイツ工場、国内では、日本新金属の秋田工場でリサイクル事業を展開している。この2工場を合わせることで、同社グループは世界最大級のタングステンリサイクル能力を有し、資源循環による安定供給体制の強化を進めている。

 さて、使用済み超硬リサイクルには、高度な分離・精製技術が不可欠だ。

 

リサイクルシステムの強みを説明する吉岡事業部長補佐

 同社が有するリサイクル能力について、同社タングステン事業部の吉岡事業部長補佐は、「日本新金属は、鉱石から処理できる能力を持っており、原料ソースの多角化ができています」と説明する。

 では、超硬リサイクルはどのような工程で行われるのか。

 日本新金属の場合、使用済み超硬工具やタングステンスクラップは、まず焙焼炉で酸化処理される。その後、湿式プロセスでタングステンを含む金属成分が溶かし出され、イオン交換法でタングステンのみ抽出することで、中間生成物であるAPTが製造される。

 APTは焼成されることで三酸化タングステンに変化するが、これをさらに還元・炭化することで、超硬工具の主原料であるタングステンカーバイトがつくられる。
このタングステンカーバイトにコバルトや添加成分を加えて焼結すれば、再び超硬工具が生まれ変わるのだ。

 つまり、同社の超硬リサイクルとは、使用済み工具を単に回収するだけではなく、そこに含まれる貴重で〝ピュア〟なタングステンを精製し、再び製造現場で使用可能な原料へ戻す高度な資源循環システムなのだ。

 

 

 ところで、超硬リサイクルと一口に言っても、その方法はさまざまである。例えば、使用済み工具を再利用するための再研磨も、広義では資源循環の一つに含まれる。

 三菱マテリアルは、もともと鉱山事業を起点として発展してきた企業であり、鉱石から金属を取り出す製錬技術を長年培ってきた。その技術を活かしたタングステンリサイクルが、同社の大きな特徴であり強みだ。

 超硬リサイクルには、精錬工程を経ずに再利用する方法もある。例として亜鉛処理法(亜鉛蒸留法)を挙げるが、この方法は超硬合金を構成するタングステンカーバイドとコバルト等を分離させずにそのまま粉末化させたものを再び焼結して利用する方法である。精錬工程を省けるため、比較的低コストで処理できるというメリットがある一方、精錬を行わないので異物や不純物が残る可能性がある。こうしたコンタミネーションは、超硬工具としての性能低下につながるため、用途によっては注意が必要となる。

MOLDINO