強固なBCPと世界供給網で挑む! 切削工具の安定供給がイスカルの強み イスカルジャパン 代表 岡田一成氏に聞く

AI・半導体、航空宇宙、造船、防衛など高付加価値分野での投資が相次ぎ、さらに近年はICE(内燃機関)関連への投資も活発化するなど、製造業では高度な加工技術への要求が一段と高まっている。一方で、中国によるタングステンをはじめとする戦略鉱物の輸出管理強化を背景に、切削工具業界では「いかに優れた工具を開発するか」だけでなく、「必要なときに、必要な工具を安定して届けられるか」が、企業の競争力を左右している。
こうしたなか、イスラエルに本社を構え、世界各地に事業基盤を展開するイスカルは、強固なグローバル供給体制とBCP(事業継続計画)を武器に、〝安定供給〟という重要な使命に挑んでいる。加えて、独自の技術と積極的な製品開発を通じ、加工の高能率化や自動化にも対応。変化の激しい市場環境のなかで、「顧客の生産を止めないこと」、「現場の生産性を高めること」の両面から世界中の製造業を支えている。サプライチェーンの分断が現実のリスクとなる今、切削工具メーカーには何が求められるのか。イスカルの日本法人であるイスカルジャパン代表の岡田一成氏に、安定供給を支える強固な事業基盤と、これからの製造現場にどのような価値を提供し、世界の生産を支えていくのかを聞いた。
安定供給を実現するイスカルのBCP戦略
― 現在、タングステンをはじめとする戦略鉱物の供給リスクが高まっています。貴社ではグローバルな生産・供給体制やBCPを含め、安定供給に向けてどのような取り組みを行っていますか。
岡田 安定供給は、イスカルが長年にわたって取り組んできたテーマです。タングステンのように資源が偏在している問題はもちろんですが、われわれが考えなければならないのは、それだけではありません。地政学リスクをはじめ、世界では常にさまざまなリスクが起こり得ます。だからこそ、どのような状況に直面しても、お客様に製品を安定してお届けすることを重要な経営課題と位置付け、BCPの強化に取り組んできました。われわれにとって、BCPを強化し、供給を安定させることは特別な取り組みではなく、当たり前のことなのです。供給源が限られていたり、生産や調達が一部に集中していたりすれば、ひとたび何かが起きたときにサプライチェーン全体が揺らいでしまいますから、リスクを一カ所に集中させず、分散させる。これはイスカルが事業を展開するうえでの基本的な考え方です。〝何かが起きてから対応する〟のでは遅い。何も起きていない平時から、起こり得るリスクを想定し、供給を止めない仕組みをつくっておく。安定供給に対するわれわれの考え方は、そこにあります。
― それを実際の生産体制にどのように落とし込んでいますか。具体的な仕組みについて教えてください。
岡田 イスカルでは、調達・生産拠点の分散化、製造データを共有できるシステムの構築、設備の標準化などを、BCPのための特別な対策ではなく、日常の事業運営におけるスタンダードとして進めています。重要業務を継続するために必要な経営資源を把握し、重要なファクターはすべて社内で共有するとともに、製品や製造に関するデータはデジタルで一元的に管理しています。さらに、製造技術やノウハウ、設備に関する情報も世界各地の製造拠点で共有しています。つまり、特定の地域や国の拠点に生産を依存するのではなく、万一、どこかの地域で生産が難しくなった場合でも、イスカルが持つ他の地域・他国の製造拠点で、同じ製品を速やかに生産できる体制を構築しているのです。特定の拠点に依存せず、どこかで問題が発生しても、他の拠点で生産を継続できる。そうした体制を構築していることが、イスカルのBCPにおける大きな強みであり、顧客へのコミットメントとして貫いています。


