強固なBCPと世界供給網で挑む! 切削工具の安定供給がイスカルの強み イスカルジャパン 代表 岡田一成氏に聞く

 

加工コストを下げて利益向上へ! イスカルが提案するコスト削減アプローチ

 

「切削工具のコスト削減はトータルコストで考えることが重要」と倉橋部長

 切削工具のコスト削減というと、手っ取り早く「工具単価を下げる」ことを思い浮かべる人も多いだろう。イスカルジャパン プロダクトマネジメント部の倉橋部長は、「実際の製造現場で見るべきなのは、工具そのものの購入価格だけではありません。加工時間や工具寿命、材料歩留まり、工具交換や段取りにかかる時間まで含めた〝トータルコスト〟で考えることが重要です」と話す。

 特に現在は、APT(=パラタングステン酸アンモニウム)価格の高騰を背景に超硬工具の値上げが相次ぎ、製造現場では消耗品である切削工具の「価格」に目が向きやすい。しかし、本当に重要なのは、その工具を使うことで、加工時間をどれだけ短縮できるのか、工具寿命をどこまで延ばせるのか、材料ロスや段取り時間をどれだけ削減できるのか。こうした視点から、加工にかかる総コストを捉える必要がある。

 そこで同社が提案するのが、工具単価だけを見るのではなく、革新的な工具をもって加工プロセス全体を見直すことで、資源使用量の削減と生産性向上を同時に実現するアプローチだ。

 いわゆる「MAXOUT/MAXVALUE」である。

 MAXOUTとは、限られた資源から最大限の成果を引き出すこと。そしてMAXVALUEとは、工具価格だけでは測れない真の価値を追求し、お客様の利益を最大化することである。同社は単なる切削工具メーカーではなく、加工現場の課題を総合的に改善するパートナーとして、このコンセプトを推進している。

 その具体策の一つが、超硬資源の使用量を最適化する提案だ。例えば、ソリッド工具から刃先交換式工具やヘッド交換式工具への切り替えである。必要な部分だけを交換することで、工具全体を廃棄する無駄を抑え、超硬素材の使用量を削減する。

 特に同社では業界最多レパートリを有するヘッド交換式エンドミル「MULTI-MASTER」やヘッド交換式ドリル「SUMOCHAM」が一役を担っており、最少資源で高い生産性を実現している。

 材料歩留まりの改善もMAXOUT/MAXVALUEを実現する重要な要素である。

 突っ切り加工では、刃幅を薄くすることで切りくずとして失われる材料を削減できる。特に材料価格が高騰している現在、わずかな刃幅の違いが年間では大きなコスト差となって現れるため、製造現場の収益性改善に直結する。

 また、製品単体ではなく加工方法そのものに着目する。例えば、複数の工程を1本の工具に集約することも、タングステン総量を物理的に減少させることにつながり、コスト削減の有効な手段となる。加えて、工程集約化によって、加工時間、工具交換時間の短縮にも繋がり、高い生産性が得られる。

 さらに同社が重視しているのが、工具性能を最大限に引き出すための加工条件、加工プロセスの最適化である。高性能工具を導入するだけでは真の価値は得られない。切削速度や送り速度、加工プロセスを最適化し、生産性を向上させることで、加工時間を短縮し、製品1個あたりの総加工コストを大幅に引き下げることができる。

 「工具単価だけを見れば高く見える製品でも、工具寿命の向上や段取り時間の削減、生産性向上まで含めて評価すれば、結果としてお客様の利益は大きく改善されます。私たちが提供しているのは工具そのものではなく、お客様の生産効率と収益性を向上させる“価値”です」(倉橋部長)

 同社では、これらのアプローチを組み合わせ、ユーザーごとの加工工程に応じたコスト削減を提案している。

今年6月実施のTDP研修の様子

 注目は、提案を「感覚」で終わらせないための取り組みとして、『ツールドクタープログラム(TDP)』を展開していること。工具の使用状況や加工条件などを分析し、コスト削減の効果を〝見える化〟することで、ユーザーの加工現場に合わせたトータルソリューションを提案している。

 どれほど優れた工具であっても、必要なときに入手できなければ、生産ラインを安定して動かすことはできない。同社では、原材料の安定確保とグローバルな供給体制を背景に、ユーザーが継続して工具を使用できる環境づくりにも取り組んでいる。

 少ない資源で、より多くの加工価値を生み出す――――――。

 工具の価格だけでなく、加工時間、工具寿命、材料ロス、段取り、そして生産ラインの安定稼働まで含めて考える。同社が提案するのは、切削工具を単なる消耗品として捉えるのではなく、製造現場のトータルコストを左右する重要な生産要素として評価するという視点なのだ。
 

(取材・文=那須直美)
 

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