第56回(令和3年度)機械振興賞受賞者を決定 機械振興協会
■機械振興協会会長賞(企業名50音別)
「グローブ式パワーアシスト荷役物運搬機の開発」
アイコクアルファ(株)
【選定理由】
製造業などの出荷作業で、手で持てる範囲(30kg まで)の荷物を手作業並みに迅速に扱えるクレーン装置はなかった。パワーアシストスーツを用いれば、上下動作の作業負担軽減には有効なものの、装着に時間がかかる。稼働時間が短い。腕を伸ばす必要があるときに、バランスが取りづらいなどの問題があった。本業績では、圧力センサー式のスイッチを内蔵した作業手袋に吊りベルトを装着し、荷物を持つ動作に連動して上げ下げを簡単に制御できる小型のクレーンシステムを開発した。これにより、簡単に装着でき、作業者の身体的負荷を大幅に軽減し、運搬物に対する汎用性が高く、多くの販売実績があることなどを評価した。
「多種素材に対応する串刺食品製造装置(団子製造機)の開発」
(株)飯田製作所 推薦:東京糧食機工業協同組合
【選定理由】
串団子製造機は、団子生地が上新粉しか使えず、材料を事前に練って棒状にして投入する必要があった。また、団子の大きさを変更する場合、部品の交換と微調整が必要で、メーカーサービスが必要であった。本業績では、材料投入装置のローラーにカバーを取り付けるなどの対策を施し、材料を事前に練る必要をなくし、五平餅や鳥つくね串の材料にも対応できるようにした。また、機械式の間欠動作をステッピングモーター動作に切り替えて、団子の大きさ変更も液晶画面で簡単に設定できるようにした点を評価した。
「高能率超狭開先溶接システムの開発」
JFEスチール(株)、(株)永井製作所、ヤマネ鉄工建設(株) 推薦:日本鉄鋼協会
【選定理由】
鉄骨の溶接に使われる炭酸ガスアーク溶接は、アークの方向が安定しにくいことや、溶接部に付着したスパッタと溶接具がショートするのを防ぐため、溶接代(開先)となるⅤ字型の窪みを広く取る必要があった。そのため、大量の溶接ワイヤを消費しながら広い開先を埋めるように溶接していた。本業績では、溶接の電気極性を逆にし、レアアース入りワイヤを用いることでスパッタの少ない安定したアークを発生させ、さらに、ワイヤ先端を曲げてアークの方向を制御することで、狭い開先空間でも深い溶け込み深さを確保する方法を開発した。これにより大幅な時間短縮と、ワイヤ消費削減を実現した点を評価した。
「高性能糸冷却装置の開発」
TMTマシナリー(株) 推薦:日本繊維機械協会
【選定理由】
従来のポリエステル延伸糸製造装置では、溶融ポリマーを金型の無数の穴から下方に吐出した後、横方向からの冷却風で冷却していた。そのため、冷却時間がかかる風下の糸に合わせて冷却距離を長く取らなくてはならずコストも高くなっていた。また、風上と風下で単糸の均一性が異なるため、非常に細い単糸からなる品質の良い糸が作れなかった。本業績では、流体解析を用いて流路の改良を行い、円筒状の金型の周囲から均等に冷却風を送風して、冷却工程の短縮化・省エネ化と、品質の向上を同時に実現した点を評価した。
「第2世代燃料電池駆動システムの開発」
トヨタ自動車(株) 推薦:日本自動車工業会
【選定理由】
燃料電池車は、走行時にCO2 を排出しないクリーンな自動車であるが、価格が高く、燃料となる水素の1 充填あたりの航続距離が短いなどの欠点があった。本業績では、水素タンクのレイアウトを改良して水素搭載量を21%向上し、乗員も従来の4 名から5 名に増やしている。また、燃料スタックに用いる触媒の担体を中実カーボンから多孔質カーボンへと変更したり、スタックの接合方法や燃料および空気の流れを改良したりすることによって、燃費を向上させると伴に、燃料電池システムコストを1/3 にした点を評価した。
「非破壊(小径)金属パイプ内面粗さ測定機」
二九精密機械工業(株) 推薦:京都信用保証協会
【選定理由】
医療用測定機に使用される内径1mm 以下の金属パイプは、内側の表面粗さが測定精度に影響するため、研磨仕上げが求められる。しかし、粗さ測定用の触針が入らず、パイプを分割して測定する必要があり、45 分程の時間がかかっていた。また、分割したパイプは製品にはならず、余分に製作する必要があり、全数検査も行えなかった。本業績では、光ファイバーでパイプ内面に光を照射すると、表面粗さによって反射光の強度が変わることに着目し、その相関から表面粗さを算出する方法を開発した。また、画像処理技術やAI 技術を活用することによって、パイプ内の異物を避けて自動的に内面粗さを推定している点も評価した。