牧野フライス精機 清水社長に聞く 「継続して存続することが発展の鍵」
世界で〝牧野精機〟だけの革新的技術
―金属加工には切削工具が必要ですが、その工具をつくるためのマシンはものづくりにとって非常に重要なものです。
清水 現代の産業においては必要不可欠な機械だと思っています。マーケットとしては小さくてニッチなところではありますが、全ての大本と言っても過言ではありません。研削盤メーカーは企業数も少ないので、重要なポジションにいるんだ、と認識しています。
―切削工具の種類も多岐にわたり、工具メーカーはしのぎを削っています。
清水 切削工具を差別化するための技術は複雑で大変なものがあります。形状を変えて効率や耐久性を向上させる、コーティング技術もかなり研究されており、各メーカー様の強いこだわりを感じております。
―近年は削りにくい材料も増え、さらに切削工具開発も進んでいるようです。
清水 10年以上前に必要とされていた工具の性能と、現在求められている性能は違います。工具のスペックは時代とともに上がっているのですから、われわれもクオリティの高い切削工具がつくれる工具研削盤の開発に日々注力しています。
―工具を安定加工する自体が難しそうです。
清水 加工精度は機械の熱変位や砥石の摩耗など様々な要因によってブレます。商品の信頼性を左右するほど機械による影響は大きいので、機械の加工安定性は非常に良いものでなくてはなりません。
―貴社は極小径工具対応のマシンもありますが、対応している最小径はどのくらいでしょうか。
清水 φ0.05mmです。このレベルの極小径工具に対応している工具研削盤は世界でもわずかです。お陰様でお客様から高い評価を頂いております。
―貴社は、昨年のメカトロテックジャパンで内蔵型マイクロビジョンシステム『monocam2』を展示していましたが、一般的なレーザシステムを用いたものではなく、カメラで細かいところを計測する革新的な技術でした。
清水 機内内蔵の測定システムの主流といえばほとんどレーザだと思います。工具研削盤の機内は大量の油を砥石でまき散らしてしまうという最悪の測定環境下ですからレーザ活用の方向性も分かりますが、基本的にレーザは外径しか見ることができません。それがカメラだと細かいところまで見えます。弊社はずっとカメラの可能性を信じて開発に注力してきました。
―大量の油にまみれた機内において、測定可能なポイントを10項目公表しているのは世界でも貴社だけであり、非常に画期的です。
清水 近年、切削工具はとても進化しています。オイルホール付きの微細工具も今では細すぎて穴がどこにあるのか分からないくらい。なのでオイルホール付きの微細工具になると、作業者がものすごい手間をかけてつくっていたのですが、あまりの細かさに不良率も高かったという課題があったのです。この現場の悩みを解決するために開発したのがカメラを活用した『monocam2』でした。
―貴社は50幾数年、ずっと工具研削で技術を蓄積し、今では、ブランク研削、工具研削、測定と、工具研削を軸とした前後の工程を1社で持っている企業は珍しいと思います。
清水 世界でも弊社のみです。この3工程に関してはお客様のご相談にしっかりと対応することができるのも優位性であり、お客様の利便性にも貢献できるものと確信しております。弊社の機械を使って良かったと、20年後も言って頂けるように頑張ります。
―ありがとうございました。
(工場内のレポートに続きます)