「全従業員を幸せに」　日新ダイヤモンド　神谷社長に聞く

優秀な人材を育むための企業努力

　―貴社は福利厚生も充実され、ユニークな取り組みがあるとお聞きしております。
　神谷　優秀な方には、会社が資金を提供し、無料で大学に進学できるようにしています。卒業をしたら大卒の給料になりますし、優秀な人材を育成していく良い制度だと思っています。また、〝コミュニケーション支援補助金〟といって、毎月、回数は限られてはいますが、昼食をみんなで食べに行くときは会社が援助します。服装も自由にしていますが、なぜか皆さん、作業着を着てきます。どうしてか、と聞いたところ、「面倒臭いから」という返答が返ってきました（笑）。わたしの目標のひとつに福利厚生で日本一の会社を目指したい、という思いがあります。

　―貴社は帝国データバンク調べでは、滋賀県内の製造業約1万4,000社の中で、総合順位をみると16位でした。従業員46名の中小企業でも大企業に引けを取らない優良企業だと感じす。従業員のモチベーションを常に維持するための仕掛けがあるのですか。
　神谷　給料とボーナスの見える化をしています。〝これだけの利益が出たらボーナスが何カ月分出るとか、どのように昇格・昇級をしていくのか、が見えてくるので、皆様にモチベーションを上げてもらっています。

自ら市場をつくる

　―昨年は牧野フライス製作と提携されました。ダイヤモンド切削工具について教えてください。
　神谷　ダイヤモンド切削工具には大きく３種類あります。CBN、PCD、単結晶です。特に単結晶は弊社の得意とする商品でセラミック、樹脂、カーボンの切削市場において大変好評です。牧野フライス製作所様との業務提携は特にPCDと単結晶の研磨技術による超精密加工によるところが大きく、この部分を牧野フライス製作所様に認めていただいたと感じています。牧野フライス製作所様の提唱するスマートツールのひとつとして、昨年よりスーパーヘール加工用工具の製造販売をさせていただいています。

　―今後の方針と未来像についてのお考えは。
　神谷　ダイヤモンド工具はその価格の扱いの難しさに加え、ほとんどが特殊品であることから、使用したことのないお客様が多くいらっしゃいます。ダイヤモンド工具の素晴らしさを知っていただくために、標準化し、手軽に使用できるようハードルを下げる必要があります。年内は２種類を予定していますが、今後も新商品を提供していくことで、商売を競合他社から奪っていくのではなく、自ら市場をつくって参ります。

　―日本のものづくりに思うことを教えてください。
　神谷　特に中小企業には〝匠〟と呼ばれる熟練工の方々が多くいらっしゃいます。一方で、自動化が進まず、付加価値が出せずにコスト高に苦しみ、従業員の給与が上がらないといった現実から、優秀な人材の確保が難しい状況が長年続いています。弊社の競合他社の中にも廃業に追い込まれた会社もあります。このような状況下ではものづくり人材の高齢化により、匠の継承も疎かになり、日本の製造業は世界における競争力を失うのではないかと危惧しています。今後の製造業は匠の技を自動化し、付加価値のある商品を低コストで製造できる新しい日本流のものづくりを実現することが将来にわたって必要なことだと感じています。

　―読者へのメッセージをお願いします。
　神谷　単結晶工具は一度知ると常習的に使用したくなるという底知れぬ魅力があります。この理由は、単結晶工具から得られる鏡面を一度経験すると離れられなくなくなるからです。切削工具はハイスから超硬へ変わり、現在は超硬＋コーティングが当然の時代です。その向こうにはCBN、PCD、単結晶が日々進化をして待っています。ぜひ、ダイヤモンド工具を試してください。
　―ありがとうございました。

（次のページは工場内のレポート）