独立時計師 浅岡 肇 氏 一流の製造技術を有する日進工具仙台工場を見学

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写真左:独立時計師 東京精密社長 浅岡氏 右:日進工具社長 後藤氏

 

 一流でラグジュアリーな製品は、他を圧倒し、最上クラスの地位を誇るもの――――製品の外観はもちろん、細かいディテールにも徹底的にこだわりを持ち、優れた素材や製造技術を駆使してモノを作り上げている。

 浅岡 肇氏(東京時計精密社長)は時計の設計、加工、組立までの全行程を手掛けている希少性の高い時計を製作している独立時計師だ。ハイブランドで名高いルイ・ヴィトンが昨年11月に独立時計師や独立時計メーカーの独創的な才能を支援し、次世代へつなげるための「ルイ・ヴィトン ウォッチ プライズ フォー インディペンデント クリエイティヴ」を設置したのに伴い、応募作の審査を行う専門家委員会を立ち上げたが、そのメンバーに浅岡氏が日本人で唯一選任されている。その彼が、髪の毛にも文字が彫れるほど細い刃先を持つ切削工具を生産している日進工具の仙台工場を見学した。日進工具(社長:後藤弘治氏)のユーザーでもある浅岡氏が一流の製造技術を有する日進工具の仙台工場を見学した感想とは――――!?

明るく楽しく創造しよう

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日進工具仙台工場

 

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浅岡氏が手掛けるトゥールビヨン

 浅岡氏が製作するエレガントで洗練されたデザインが特長の腕時計は精度の高さと美しさを兼ね備え、世界中から高い評価を博している。顧客として名を連ねているのは、王族や世間に名を知られた時計コレクターであり、「本物のラグジュアリーとはこういうものだ!」と、思わず唸ってしまうほど、魅力的な時計を製作している。

 一方の日進工具は、直径6ミリ以下の小径エンドミルに特化し、成長を続けている。完全国内生産が特長の同社は切削工具を製造する機械も自社開発のオリジナルである。自動化された生産ラインで製造されるエンドミルは10,000アイテム以上もありながら安定生産を誇る。

 昨年、日進工具の後藤社長が浅岡氏のアトリエを見学した様子は、製造現場ドットコムにも掲載済みだが、(https://seizougenba.com/node/13192)、このとき、「面品位を保つためにはどうしても工具に依存しなければならない。」と浅岡氏は述べている。価値あるものを知っている時計マニアや多くの美術品に囲まれた生活を送っているハイパー裕福層を満足させる時計を製作するにあたり、切削工具の選定も厳しくなるのは当然のこと。今度は浅岡氏に日進工具の生産拠点である仙台工場を見学してもらうことにした。

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真剣に説明を受ける

 仙台工場に到着すると、まず開発センターに通された。日進工具がどんな会社なのか説明を受ける。真剣な様子でプロジェクターを見つめる浅岡氏。

 日進工具の本社は東京都品川区にあり、各拠点に営業所を構えている。仙台工場は主にエンドミルの刃先が6ミリ以下の主力生産工場だが、敷地内には免震構造を有した開発センターがあり、コーティングや射出成形、再研磨の事業を行う子会社の日進エンジニアリングがある。日進エンジニアリングは新潟にも工場を持っているが、こちらは刃先6ミリ以上の太径の生産拠点だ。また、福島県白河市には切削工具を入れるプラスチックケースを製造している子会社の牧野工業がある。海外はNS香港、NS USAで事業を行っており、グループ合計352名で事業活動を行っている。

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日進工具の創業当時のプロダクトは、ハンドル付きの鉛筆削だった!

 1954年に創業した同社だが、当時の製品はハンドル式の鉛筆削りだったという意外な一面を知る。大手の協力企業として活躍し、特殊工具を生産しながら事業を始めた経緯があった。社是は「明るく・楽しく・創造をしよう」であり、これを掲げて現在、エンドミルの開発、製造、販売に注力している。

 仙台工場はA、B、C、D、Eの各棟に分かれており、工程別や製品種類別に生産が進んでエンドミルが完成するという流れだ。

 

 

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