独立時計師 浅岡 肇 氏 一流の製造技術を有する日進工具仙台工場を見学
製造技術がハンパない! オリジナル研削盤「TGM」

まずはエンドミル素材の全長を揃える加工を行う工程や段付け加工などのプロセスを見学。同社ユーザーならご承知のとおり、日進工具のエンドミルには、シャンク精度に拘って生産されている。
続いてスクエア・テーパ製品を加工している場所へ移動した。ここでは、5工程(①ギャッシュ ②底刃3番 ③底刃2番 ④フルート ⑤外周刃)を同時加工している。1本あたりの加工時間が最も早い量産加工機「SEF」の登場だ。後藤社長いわく、「この機械はプリント基板のドリルをつくるためにつくられた機械をエンドミル用に改造した機械。」とのこと。他にもロボットを付け、加工を測定に回し、測定結果をフィードバックすることにより無人で約2日間稼働できるという。これによりコストを下げながら同じものを作り続けるのだ。
「この機械はいつから使っているのですか」と浅岡氏の質問に、「30年ほどです。5年に1回オーバーホールをしながら活用しています。」と後藤社長。

さて、長い歴史を持つ同社の中で、現在メインとなる同社オリジナルの研削盤「TGM」が並ぶエリアに足を運ぶ。このマシンこそ日進工具の秘密兵器であり、同社の心臓といっても過言ではない。「TGM」を活用した自動搬送ラインは、マシン5台を連結し、製品パレットへ整列、刃径・振れ測定、洗浄、をひとつのラインとして自動ラインを構築している。また、インラインで自動測定を行う測定器を設備1台事に設置して「TGM」と測定器をひとつのユニットとして生産を行っている。その測定器も自社開発というから驚く。この件について後藤社長は、「世の中に売っている測定器ではわれわれが求めている製品精度や監視管理が難しいので社内で高精度の測定器を開発し、測定したデータを設備にフィードバックして、いかに〝バラつきの少ない製品〟を加工できるかを追求し、安定した生産を厳守しています。」と浅岡氏に説明をしていた。
すかさず、「この設備は売らないのですか?」と浅岡氏。「売っちゃったら技術が流出しちゃうでしょう!」と笑う後藤社長。
人がいない状態で動き続ける工場内。人為的だと、測定誤差も生まれやすいので自動化は優位性のひとつだ。なお、小径工具は精度のコントロールが重要なので、加工精度に悪影響を与える〝熱〟によるダメージを排除するため、温度管理を徹底し、恒温室を設けている。様々な工程には独自の製造技術があり、浅岡氏も食い入るように見つめていた。
ここで「日進さんは毎回同じ精度だからありがたい。」と浅岡氏。後藤社長もこの言葉に「そう言って頂けると嬉しいです。」と、思わずにっこり。