台湾TMTS展が6年ぶり単独開催 7万人が来場、オンライン展には11万人
周辺機器メーカーは利益ねん出に苦慮
台湾の経済は今、決して良いとは言えない。さらに、今年4月からは、電気料金が大幅に値上げされた。家庭用は3~5%、産業部門では使用量に応じて15~25%の値上げとなった。さらに、対米ドルでの台湾ドルの下落も続く。物価高や少子化による人手不足など、日本経済が直面する課題とも重なる。台湾の工作機械業界は、品質と価格競争力のバランスで、韓国や中国、そして日本メーカーとの競争で強みを発揮してきた。しかし今は、日本円の安さが日本メーカーとの競争に水を差し、台湾メーカーが強みを発揮できない状況にある。台湾と中国、そして米国と中国の両国関係の悪化の影響が台湾経済にも影響を及ぼしている。
台湾の工作機械業界は、多くの周辺機器メーカーにより支えられている。ほぼ全てを自社で賄う日本の工作機械メーカーと違い、主軸を含む各種機器を専業メーカーから調達し、ひとつにまとめるのが台湾メーカーの特徴だからだ。一部の周辺機器の調達では日本メーカーも同じで、多くの台湾製の工作機器に支えられている。TMBAがまとめた2023年の台湾工作機器の輸出額は14億9,300万米国ドル(2,239億5,000万円、1ドル=150円換算)で、この内の半分53.2%が中国(香港含む)への輸出で、2位が日本(7.5%)、以下は米国(7.2%)、インド(4.7%)、韓国(3.5%)と続く。約170億円近くが日本に輸入されている。電力を含む各種コストの増加や労働力不足、そして通貨安が続く今、台湾の周辺機器メーカーは価格転嫁、値上げに苦慮している。
日本でも知名度が高いハイウィンを筆頭に、「ハーバー」ブランドで油圧ユニット用冷却器を製造する哈伯精密工業や「キーアロー」ブランドの機械カバーメーカーの台湾引興、「データ」ブランドでATC(自動工具交換装置)やツールチェンジャーを製造する徳大機械など、日本メーカー向けの受注は好調ながらも、利益のねん出には頭を抱える。
徳大機械は、日本の工作機械メーカー各社に段階的な値上げを要請してきたが、顧客の日本メーカーもコスト削減に取り組んでおり、交渉の歩みは遅い。新たな別の顧客からの新規受注を喜びたいが、コストと利益を考えると悩ましい。欧州や中国市場が低迷しており、今年秋にJIMTOF開催を控える日本市場の動向に期待が集まるが、利益を考えると担当者の悩みは尽きない。