「世界切削工具会議(WCTC)2024」が大阪で開催 ~切削工具業界からみた各国製造業の現状と展望~
「今後の改善に期待」
●Thomas Haag 米国切削工具協会(USCTI)会長
産業全体の生産は0.2%増に留まり、製造業については2023年に0.5%低下している。受注は2023年に0.5%低下している。切削工具にも影響を与えており、金額においては20%、販売価格は平均で4%減となっている。さらにインフレ問題があり、多くの切削工具企業は価格を上げている。大体10%、20%、この4年間で値上げを行った。このことは消費者物価指数が19.6%上がっているのと合致している。しかしながら平均の売上価格はアメリカでは6.2%しか上がっていない。よって切削工具市場はまだコロナのパンデミックから十分に回復していないという状況である。
業界やマーケットにとって重要な点は現在、金利高があるということ、原材料、部品、輸送に関しての課題と労働不足ということで、設備投資は2024年で0.3%しか上がらないだろうという予測になっている。
私たちの会員調査による見通しでは、売上は1年前よりも弱気になった企業が多くなっている。会員企業の今後12カ月の見通しでは、80%が低下するという見方である。この調査から、人材獲得と人材維持、材料費やインフレの課題が明確になっている。
今年は大統領の選挙年となっているが、このことは様々な決定に対しても意味合いを持っている。
USCTIの統計では、2024年3月の数字では5.8%昨年と比較して低下した。第1半期を見てみると2%、2023年比で2.3%としかアップになっていない。2024年の見通しでは2.5%上がるという見込みだが、2020年の23.8%マイナスから回復できていないということが分かる。
会員企業の輸出動向では9.1%、コロナ前から比べると上昇した。金額、量は、ドル高ということもあり、さらにロシアには輸出できないことや、さらにロシアとウクライナ、イスラエルでの紛争を考えたらこの見通しは悪くはないと見ている。
切削工具市場の今後の見通しは、北米市場全体としては38億ドル、USCTIの統計は市場全体の6割から7割となっている。最近の見通しでは航空宇宙が6.8%増。これは、ボーイングの1月に起きた問題前だが、大きく状況が変わった。私たちにとって航空産業は最大の市場だ。注文も入っており252%増だが、デリバリーが対前年で4%しか増えていないので受注残が非常に高く詰まっていることを示している。航空市場は6,000機以上の受注残があり、この予測は1月では市場の見通しが10.2%と強かったものの、現在6.1%に落ちてしまった。今後はもう少し改善し、生産も戻ってくるだろうと予測している。
自動車産業については、これも下方修正された。1月では8.5%増と思っていたのだが、様々な自動車生産現場の課題があり、多くの自動車メーカーが内燃機関、あるいはEVにしたら良いのか、サプライチェーンの問題をどうしたらよいのかということで、十分に方針が固まっておらず、見通しは現在、3.8%に落ちている。消費者動向としてはEVをあまり受け入れておらず、これまでの従来車に戻ったという人もいる。
切削工具の消費予測をみると、長期的な予測ではプラスの予測になっているが、1桁台の下のほうである。