「世界切削工具会議(WCTC)2024」が大阪で開催 ~切削工具業界からみた各国製造業の現状と展望~

 

「ハイブリッドカーに逆戻りしている」
●韓国代表 Hokeun Song (YG-1 Co.,Led会長)

 韓国のGDP成長率は下がり調子になっている。成長の牽引役が勢いを失いつつあるのが理由だ。OECD加盟国の中でも潜在的な成長率は鈍化している。2010年は3.8%だったが2024年は1.7%と予測されている。韓国の経済は現在非常に悪いターニングポイントを迎えていると言える。世界中も似通った状況ではあるが、多くは人口によるもの。休暇は増えている。週52時間の労働時間制約で上限が設定されているが、これが非常に酷い影響を及ぼしている。

 続いて韓国経済状況について。韓国経済の2大エンジンは輸出産業と製造業だ。韓国の人口は最大で5,000万人なので、国内売上だけでは不足している輸出産業と製造業が重要な役割を果たしているが、これらの成長の牽引役がスローダウンしている。コロナ禍のベース効果によって、回復後に劇的に下降している。輸出の成長率が2023年はかなり急降下している。製造業の成長率も下降している。製造業は多くの雇用を生み出しており、非常に重要であると位置付けられている。日本も強い製造業界を持っているが、ハイテク業界も下がっている。アメリカはかなり以前から下がっている一方、中国は上がっている。ドイツは横ばいだが、ドイツでも下がるサインが見えているので、切削工具の消費が減っていくことを懸念している。大きなターニングポイントを迎えている背景の多くは政治的な問題である。

 韓国の工具市場は工具全体の78%を占めている。工具市場の中にはダイヤモンドツール、ハンドツール、パワーツールを含んでいる。これは大きな産業で工具市場の48%を占めている。

 生産は27USドル。消費は15億ドルなので、半分以上は輸出している。特に切削工具の78%を占めている。切削工具は国内の売上よりも輸出の売上のほうが高い。韓国では2019年以降、切削工具の生産量は下がっている。その背景には輸出が鈍化していることと、国内市場の鈍化がある。生産も下がっている。2023年の国内は大きく下がり、輸出と輸入は横ばいが続いている。

 切削工具の国別における輸出について2013年と2023年の切削工具の輸出を比較すると、2023年は20%増加した。2013年、アメリカ13%、中国20%、日本は10%。2023年ではアメリカの需要が増加し21%、中国が20%から10%減少し、アメリカが輸出先としてナンバーワンになった。

 国別の切削工具の輸入状況については、2013年、2023年を比較すると輸入は1%減。2013年には中国から18.8%輸入していたが、今は34.3%の輸入になっている。中国の切削工具は政府から意図的にサポートを受けており、非常に強くなっている。中国の安価な切削工具が韓国に輸入されている。

 業界別の韓国切削工具市場は、2013年、自動車業界が38.2%を占めていたものの2023年は減少し32.4%となった。韓国における2023年の自動車業界は、自動車の生産台数は420万台だった。2022年対比で回復をしているが、2013年対比では7.3%減少している。エコカーの消費は年々アップしている。2013年は、エコカー、エコフレンドリーカーはハイブリッドと電気自動車を指しており、これらは全体の1.8%しかなかったが2022年にはエコカーが20.8%と増えた。昨年はブームが若干止まり、電気自動車よりもハイブリッドカーに逆戻りしている。その理由は充電費用が高いからであり、ハイブリッドカーのほうがより急速に成長するのではないかという見通しもある。

 韓国における工具市場は2021年、47億ドルに届いた。パンデミックから回復した兆しが見えるが、この10年は生産も消費も足踏み状態で国内での消費が大きく減っている。

 製造業は2021年のGDP27.5%を占めている。この製造業の競争力のお陰でコロナ禍の早期回復が実現した。2020年代以降、韓国経済の成長は徐々に鈍化するとみられている。その理由は、人口減少や急速な高齢化など人口動態の変化である。2050年の経済成長率は0.5%に低下すると予測され、非常に大きな問題と考えられ、多くの問題を抱えているので、韓国経済が変わることを期待している。

 アメリカやドイツなどの先進国は製造業のデジタル化を進めており、これにより製造力を強化している。韓国の製造業はこれまで新興国の低賃金に苦しんできたが、今では先進国の製造業との競争にされされている。これまでは低賃金の新興国が競争力を持って製造業を推し進めていたが、デジタル化が進んだ先進国の製造業も現在、高い競争力を持っている。韓国の製造業は市場環境の変化を認識し、組織の再編や技術の再編を通じ、資源能力と効率を高めるべき局面に直面している。

 

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